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  • ベオグラード国立美術館所蔵フランス近代絵画展 日本橋三越


    ベオグラード国立美術館から、印象派以後のフランス近代絵画をセレクトしての展覧会。東京会場は、美術館ではなく、デパートのギャラリーになっています。ほとんどといってもいいくらい他所では宣伝していないのに混んでいました。
    僕個人としては、デパートの一角でやるよりかは、きちんと宣伝して、美術館でやってもらった方が良いと思います。これだけのクオリティがあるのに、会期も相当短くなってしまってますし。つまり、宣伝と期間によって、見たい人が見れない(見れなくなっているだろう)のは問題もあるかなと。

    そういうことで、さほど期待はしていなかったこの展覧会ですが、いってみると、かなりコンセプトが明瞭で、作品数もある良い展覧会でした。「近代フランス絵画展」というだけに、近代フランス画壇の大物は網羅しています。ドーミエ、モネ、ドガ、ルノワール、ピサロ、シスレー、セザンヌ、ゴーギャン、ゴッホ、カサット、ヴァラドン、モロー、ロダン、カリエール、ルドン、シニャック、ボナール、ロートレック、ユトリロ、…と最後まで挙げることのできないくらいです。



    最初は、コローの固い画風の風景画から始まり、「踊り子」をメインとするドガの素描群が現れます。
    第一のセクションでは、やはり、モネのルーアン大聖堂シリーズの一つ「ルーアン大聖堂/ピンクの大聖堂」が見所でしょう。個人的にも、この作品はシリーズの中でも、上位の方にランクされます。パステル調のピンクと青の融合と絵肌のつくりはとても見事で、空の映える色調も良い感じを出してます。ちょっと、神々しい印象を受けました。
    それと、メアリー・カサットの二枚のパステル画。カサットは作品数をあまり見ていなく、パステル画は初めてだと思います。素描に近い感じですが、顔は綿密に完成されていて、肌の表現は、肌色に加え、水色を使っているんですよね。ルノワールも顔の下塗りに青を用いたりしてますが、同様の良い効果を引き出しています。見習いたい技術ですね。

    第二セクションは、ルノワールオンリー。
    完成作とされるものは少ないですが、それを支える習作、デッサンや油彩の小片という資料的価値のあるものが沢山あります。いつも油絵で筆のタッチを見せられているので、線描が多く見られる機会として良いものでした。「傘を持つ女性」(一部、最上図)や「ギター奏者」の主題は、数点まとまって見られます。中でも特に魅かれたのが、木炭デッサンの「字を書くココ」。息子のクロードが字を書いているところをさらっと描いた作品ですが、木炭の線描と、かすらせる効果を最小限の描き込みで表現していているだけなのに、ぬくもりとか優しさといような雰囲気を醸し出せるのはすごい。
    油彩の完成作は二点ほど来ています。一点の、「水浴する女性」は一度盗難された作品。犯人が素人だったようで、絵は切り取られ、丸められ、相当な損傷を受けたようです。いくら凄腕の専門家が修復しても、激しい損傷の跡は消えるわけなく、やはり一級の美術品は守られて欲しいな、と痛感。美術館にとって、窃盗というのが一番怖いようで、模倣犯を避けるため、盗まれても簡単には公表できない事情とかもあるようです。それなので、知っている以上に、美術品は危険な状態にあります。

    三番目のセクションは、ポスト印象派と象徴派の絵画。
    ここはなんといっても、オディロン・ルドンの木炭による象徴主義的作品です。僕は、結構ルドンの作品を見ているといえる身だと思うのですが、正直ほとんどパステルと油彩で占められていて、木炭画は見ていない状況でした。この展覧会はこちらの方がメインであって、ルドンを象徴主義に結び付けている作品を見ることがやっとできたという感じです。本当に繊細かつ不思議な作品で、ルドンの想像力は群を抜いていますね。
    それともう一つ気になったのが、ロートレックの油彩による肖像画。初期の古典主義的技法を用いた作品で、後の彼の画風とは正反対で興味深かったです。

    最後のセクションは、フォーヴィズム、キュビズム、エコールドパリの絵画。
    中でも、ヴラマンクの「ブージヴァルの雪景色」が有名作ですね。もう一つ、ヴラマンクの同じ1920年代の作品がありますが、この時期の作品は、黒の使い方が印象的でした。他の色は大胆な筆触を使うのに、黒は筆触を感じさせない、沈んだ塗り方をしていて、黒とその他の色の対比は面白い効果を出しています。
    あとは、ユトリロの作品が5点あります。家の壁の表現、空の色調は、全体的な陰鬱さを醸し出していて、微妙な雰囲気があります。


    今回の展覧会は、特に印象派のセクションで、木炭やパステルの素描を多く見ることができ、また違う側面を見れたかな、と思います。また、前述の通り、近代フランス画壇を良くまとめていて、それぞれの対比や類似などの関連を見てとれる良い構成をしていると思います。
    これを書いている時点で、東京展はあと二日というのが残念ですが、三越という場に負けず、若者に是非行ってもらいたいですね。
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    この記事へのコメント
    こんにちは
    http://jump.sagasu.in/goto/blog-ranking/を見ていたら、リンクしてあったので、見にきました。又見にきまーす!
    2006/03/10(金) 17:34:17 | URL | 青山 #-[ 編集]
    どうもです。
    青山さん、こんにちは。
    新着記事ということですね。やっていることがマイナーなんで、ほとんど検索にかからないこのブログですが、よろしくお願いします。それではまた、ご意見等ありましたら、お願いします。
    2006/03/10(金) 18:13:03 | URL | webcat #-[ 編集]
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