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  • プーシキン美術館展 東京都美術館



    ロシアのモスクワにある、プーシキン美術館からのシチューキン・モロゾフ・コレクションによる展覧会。

    プーシキン美術館は、1912年にアレクサンドル3世美術館として開館、その後、革命を機にモスクワ美術館に改称、1937年にロシアの文豪プーシキンの没後100年を記念して、プーシキン美術館となったということです。コレクションは、古代から近代まで幅広く収集され、やはり世界的な美術館にふさわしいもののようです。
    冒頭の通り、この展覧会は、このプーシキン美術館の、世界有数のフランス絵画コレクションとして名高い、二人の美術収集家、セルゲイ・イワノビッチ・シチューキンとイワン・アブラーモビッチ・モロゾフが集めたコレクションを抜き出してのものです。このコレクションは、特に印象派以後の近代絵画の流れを網羅するもので、フォーヴやナビ、キュビズムに着眼して、コンセプトを明確に収集されている点は、とても先鋭的であり、同時にパリの美術への憧憬が伝わってきます。
    また、二人の膨大且つ良質なコレクションは、ロシア革命と共に、革命政府に没収され、美術館に納められたという経緯、両者共に外国へ亡命しなくてはならなかったという経緯もあわせて知っておく必要もあるでしょう。

    展示は、印象派からキュビズムまで、オードソックスに絵画潮流ごとにセクションを分けるもの。
    最初の印象派のセクションでは、ルノアールの「ムーラン・ド・ラ・ギャレットの庭で」(上図)が見所だと思います。初期作品の特徴をよく示した完成度のある絵で、大作「ムーラン・ド・ラ・ギャレット」に行き着く作品です。構図的にも面白い作品で、前に立っている女性が明るくしっかりと、しかも後ろ向きに描かれていることで、奥のテーブルで談笑する男女へと奥行きを感じさせながら視点を持っていくようになっています。
    また、二点目の「黒い服の娘たち」は画風転換期の「硬い絵」の作品。やはりこの時期の作品は試行錯誤的な、模索的な作品という感じが個人的には強いです。人物描写も左右の二人で微妙に違ったり、硬く描くことで服自体の質感などがやや損なわれているような感もするし、背景のタッチは硬い線・タッチにあっているのかという問題もありますし。
    その他も、ピサロ、モネ、ドガなどの主要画家の作品があります。パリの街並みを描いた絵が多く、一回パリの街を歩いた経験を持つと、描かれている風景が分かってまた違う感じを受けました。
    そして、象徴主義のセクションで印象に強く残ったのはカリエール。「母の接吻」というタイトルで、カリエールにしては大きめの作品で、色彩に頼らず、温かみを醸し出すような不思議な作品です。
    さらに、この展覧会の目玉となっている、マティスの「金魚」(下図)も、異彩を放つ絵です。一応のところ、金魚蜂を描いた静物画として見れますが、このように金魚をコミカルにディフォルメし、周りに草花で装飾的に彩りを加えると、静物画というより、一種のデザインのように感じられて、とても現代的な視点を持ちうる作品だと思いました。

    さらにこの展覧会のセクションで重要になってくるのは、「フランス近代版画 マネからピカソまで」のセクション。これらは、直接シチューキンとモロゾフがコレクションしたものでないそうですが、諸画家・作品の理解を深めるために見る価値が大きいと思います。
    主な作者は、マネ、ルノアール、ゴーギャン、ロートレックなどで、数ある作品の中で、同じ版画という表現形態の下、単色石板画、多色石板画、エッチング、木版画といったように手法の違う版画があって、それぞれの効果の差異などが良く分かります。

    全体的に、印象派がメイン、目玉となる展覧会が多い中、それよりも、以降の近代絵画潮流がメインとなっていて、しかもクオリティは確証されている、コンセプトが明確な展覧会として、意義の大きい展覧会だと思いました。普通に混んでいるのも納得できます。
    また、印象主義以降の絵画を見ると、セザンヌの影響はかなり大きいな、と実感した展覧会でもありました。色彩の分割・不連続な組み合わせ、パースペクティヴの複数性などはやはり彼の功績が大きいでしょうし。
    これからも、世界の有数なコレクションの展覧会は是非期待したいと思います。



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