芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • ギュスターヴ・モロー美術館 Musee Gustave Moreau


     19世紀の象徴主義を代表する画家、ギュスターヴ・モローの自宅、アトリエを使った美術館。
     モローは、作品を遺す親族がおらず、死後に作品が散逸してしまうのをおそれ、自らのアトリエを美術館にするという構想をもちます。そのため、彼は、アトリエを改築したり、作品の注釈を残したり、展示の指示を決めるなど、その努力を惜しみませんでした。こういう、モローの自分の作品、世界観に対する思い入れ、愛情というものは、純粋に素晴らしいです。
     このような経緯があるため、1903年に美術館が開館してから、100年を過ぎた、いままで、展示方針は変わっていないそうです。

     ―、二階は生活のスペースですが、ここには、大画家の作品の模写や、親交のあった画家の作品が、壁にかかっています。これを見ると、モローの他の画家に対するオマージュというものがはっきりと見て取れます。

     三、四階はアトリエで、大きな空間をなしています。壁には大きな作品が、ところ狭しと並んであります。これらの結構多くは、未完や下絵、素描のもので、きちんと完成された作品は意外に少ないです。勿論、完成された作品類は、発注を受けたり、売却したものですから、外にでていて、そうではない作品群がアトリエに残されたことは理解しなければなりません。
     作品を見る態度としては、仕上がっていないじゃないか、完成できなかったのか、ということではなく、モローの構想したものはどのようなものだったのか、モローはどのように制作を進めていたのか、というようなことを重視して見るべきものと思います。
     そのために、4000枚を超すデッサンが閲覧可能になっているのであって、これによって、完成された作品へと発展する考えや準備が伺える大きな一助になっているのだと思います。
     このように、モローの途上作品、デッサン、水彩を通じて、彼の世界を受容できれば、完成作の少ない、B級作品が多い美術館、モロー研究者のための資料館、というような考えではなく、モローの美的信念や、世界を一番近くに感じられる、これこそ本当の美術館だと思えるはずです。
     この美術館は、彼の残した多様且つ、膨大な作品(自分のものであれ、他の画家のものであれ)、そして彼の生活した環境を通じて、見学者はモローの世界と自分とを媒介させることのできる、独特な美的空間になっていると強く感じました。

     注意されたいのが、美術館の中休み。ここでは、カウンターが閉じるだけというようなものではなく、見学者を外に出して閉めてしまいます。そのため、ゆっくり見たい人は午後でなければ見られないでしょう。僕は午前一番に行きましたが、完全に最後まで見れませんでした。というのも、デッサン4000枚は、収蔵庫の、裏表のあるパネルを一枚一枚めくっていかなければ見られませんし、水彩、小作品は一面は見れますが、その他の面は鍵がかかっており、係員にいわなければ見られません(下図参考程度に)。それに日本語の解説プレートもありますし、他の見学者のことも考えなければなりませんし。
     まあ、それよりもここまでして、展示して欲しい、というモローの意思に敬意を感じます。

     僕の行った時期は、ちょうど日本で、「モロー美術館展」が開催しており、運が悪い時期に重なったのかな、と思っていましたが、-確かに、日本に行っていて空いたスペースもありましたが-、大分差し替え展示していて助かりました。いつもは展示してないものをみられたというプラスもあったわけです。
     といっても、まだまだ収蔵庫に眠ったままの作品も多く、デッサンなどはそれだけで、7800枚にも上るそうです。いや、本当にすごいと驚嘆するしかありません。

     このようなところは他にはなく、人を吸い込むような、モローの神秘的、幻想的な魅惑を、芯から感じさせてきます。パリでも、充実度の最も高い美術館の一つです。

     すごいオフィシャルサイトがありますね。
    http://www.musee-moreau.fr/index_u1l2.htm



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