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芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • ロマンティック・ロシア
    サンクトペテルブルクのトレチャコフ美術館のコレクション展(-2019.1.27)です。クラムスコイの「忘れえぬ女」が再来日し、ロマンティック・ロシアの核に据えられています。

    シーシキン、クラムスコイ、レーピンら大家の作品をメインに、幅広く19世紀ロシア画壇を紹介する内容になっていました。
    各画家1~3点ほどで、画家の説明キャプションもあったので、分かりやすく、多くの画家が紹介されていました。

    トレチャコフ美術館や、日本開催のトレチャコフ美術館展にも訪問してますが、やはり初見(と記憶する)作品も多く、見ておく価値のある企画展です。

    構成は画題で分けるものですが、上記のとおり各画家1-2点ほどしか出品されていないので、(そこそこ混んでいるのもあり)どこから見ても良い感じです。
    見所は、
    ・シーシキンを中心とした、自然主義、リアリスム作品
    ・クラムスコイの代表作品(「忘れえぬ女」、「月」)
    ・レーピンの肖像画
    と思います。
    あとは、多くの画家が紹介されているので、お気に入りの画家、作品を見つけることもあるでしょう。

    レーピンの肖像画二点(ルビンシュテイン、クラムスコイ)の比較などはすぐ目につくところで、レーピンの表現技量を見られるところと思います。
    よくあげられるリムスキーコルサコフの肖像しかり、内面的な表現を姿勢、タッチなどで表現しており、特にルビンシュテインの方は大振りかつ重厚なタッチで力強い人物性を表しています。大胆に筆を置いているように見えますが、光/陰影の表現も完成されています。
    対してクラムスコイの肖像はしっかり描いている印象ですが、対照的に背景はタッチをランダムで重ねてテクスチャ的に構成しています。

    ワシーリー・コマロフ「ワーリャ・ホダセーヴィチの肖像」は、部屋の中で座る少女と人形などを描いた作品です。アースカラーのなかに赤を散りばめるように配置しアクセントにしている印象です。
    面積の広いブロック的なタッチのなかでも、筆の毛並みを残すストロークでつくられた毛皮の敷物の表現など、一見おおざっぱにはみえるところ丁寧に練られて作られています(少女の横顔も背景に陰部分が当たるようにし、きちんとコントラストを作り焦点化しています)。
    また、少女の低い目線を強調する縦長の構図など工夫が随所にみられ、周囲の丁寧に仕上げられた自然主義的作品と比べ際立っています。

    シーシキンの大作「雨の樫林」は、かなりスケッチ的に仕上げられていることがわかります。淡い色で奥行、重なりなどを巧みに生み出しています。

    クルイジツキー「月明かりの僧房」は、クラムスコイ「月」と同じ、夜の月あかりを表現した作品ですが、幻想的であるクラムスコイ作品よりもはっきりとした光を描いています。前景の芝生に映る陰がコントラストを強調していてモチーフを強く印象付ける感じを受けます。
    対してクラムスコイは、光の質がもはや違うことは一目瞭然で、光の当て方も含め、抒情的、詩的なレベルまでドラマチックな画面構成・表現をしています。
    このような絶妙、微妙過ぎる諧調・色彩表現は図版では再現できないのでぜひ生で鑑賞すべきです。このレベルだと、植物学的正確さを示した圧倒的な画力は、いうまでもない前提、二の次、になってしまいますね。

    ヴィノグラードフ「秋の荘園にて」は、前景は紅葉し枯れも進んだ草木、後景にその隙間から屋敷がのぞいている風景が描かれています。
    下半分はそこだけを見ると何を描いてるのかわからないほど乱れたタッチですが、上半分の屋敷を描いた部分で対象を具象化して、下半分の乱れたタッチの集合を秋の草木として、(部分でなく)全体として、言い換えれば鑑賞者の頭の中で具象化する、という試みに感じました。いうまでもなくバランスが大切であり、この作品はギリギリを攻め、うまくいっている感じがして印象に残りました。印象主義に近い表現ではありますが、単に細かいタッチを整然と、かつ 全体的に並べていないところは決定的に違うところです。
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