芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • アントニオ・ロペス展 Bunkamura ザ・ミュージアム


    現代スペイン絵画の巨匠である、アントニオ・ロペスの回顧展です。
    日本では(というかアジアでは?)初めての本格的回顧展であり、画家自身の協力もあり、絵画、彫刻ともに秀作、大作が来ており、非常に質の高い展覧会であったと思いました。

    アントニオ・ロペスについては、ほとんど予備知識がなく、表層的にいわれているような、リアルな絵を描く画家、くらいにしかイメージはなかったです。
    しかし、今回いろいろな作品を通じて見て、アントニオ・ロペスをリアリズム画家という風に片づけてしまうのには抵抗を覚えました。
    というのも、批判ではないのですが、アントニオ・ロペスの絵は、デッサンが超絶技巧的に上手いとか、スーパーリアルなマチエール表現をしているとかではなく、とどのつまり一般的に現代のリアリズムと呼ばれているものからは一線を画していると感じたからです。
    正直、デッサンについては生得的なレヴェルでもっと上手くやる画家はたくさんいるし、対象の質量感表現に目いっぱいとりくんでいる様子もありません。デッサンについていえば、(フリーハンドではなく)細かい補助線に依存している感もあったり、パースが正確なのか疑問に思う箇所もあったりと、粗も見えてくるような出来だと感じます。
    こうして見ると、アントニオ・ロペスをリアリズムという言葉で持ち上げるのは本質を外しているような気がしてなりません。もっと、画題や表現に隠れている精神性などに目を向ける必要がある画家であると思います。たとえば、画家本人が語っているのを見ましたが、風景画なら写真を使ったりしてアトリエで仕上げてしまうこともできますが、アントニオ・ロペスは夏に描いた作品はまた来年の夏まで寝かして、イーゼルを現地まで持ち出して描く、ということを行っているようです。こういった対象との向き合い方からも、ただ単に形象をそのままに写し取ることを主眼にして描いているのではないということが推測されます。また、あえて、「絵になる」ようなピクチャレスクな画題、画家の技術を誇示しやすい画題ではないものに精力的に取り組んでいることも大きな要素としてあります(展覧会を通じて、シリーズ化されたものや、作品群から統一的に感じるテーマが見えてきます)。おおざっぱにいえば、近代性というものに親和的なものに目を向けており、それらの持つ独特な精神性を、その表現に見合った無機的なタッチをもって描こうとしている、ということが見えてきます。

    希有な画家の貴重な回顧展であるので、少しでも気になっている人はまず行ってみるのをおすすめします。
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