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  • 奇跡のクラーク・コレクション 三菱一号館美術館


    アメリカ、マサチューセッツ州にあるクラーク美術館の近代フランス絵画コレクションを紹介する企画展です。
    19世紀フランス美術という個人的な好みに直球な内容であったこともありますが、流し見で済ませるような作品が少なく、見どころの多い大変内容の濃い展覧会になっていたと思います。
    クラーク・コレクションのセレクションの良さを十二分に実感できました。

    副題が「ルノワールとフランス絵画の傑作」となっているように、20作品超のルノワール作品が集まっています。これだけ集まると、ルノワール展という趣きも感じてしまうほどです。
    これについては、コレクションを収集したスターリング・クラークがルノワールを非常に高く評価し、コレクションの核としてルノワール作品の収集に注力したことによります。しかも、スターリングが、初中期のルノワールを特に評価し、後期、晩年の作品についてはあまりポジティヴな評価をしていないこともあり、ほとんどの作品が70、80年代の作品で占められています。
    個人的にも、初中期は画面構成、人物表現が練られていて、印象派的表現の中にも絶妙なデッサン(線描)のクオリティを残しているのが良いと思います。後期になると、初中期の構成や色彩は後退し、線も極端に固くなったり、デッサンが崩れ気味になったりと洗練さがなくなっているように感じてしまいます。このような個人的なテイストからもスターリング・クラークの審美眼には共感しますし、集められた作品は有名作品は少ないとはいえ、完成度の高い秀作そろいだと思いました。
    特に青のトーンの統一が美しく、筆が丁寧に入れられたテレーズ・ベラールの肖像は良いと思いました。補色としての黄色が服や背景、肌にとり入れられています。
    また、今回久しぶりに鑑賞できた、「うちわを持つ少女」「眠る少女」も非常にクオリティが高い。静物画でも、玉ねぎを描いたものは、玉ねぎのサーモンピンクと背景などの淡い青緑が対照をなしていて、玉ねぎを非常にフレッシュに美しく描き出しています。

    フランスのアカデミズムのセクションでは、なんといってもジャン・レオン・ジェローム作品がハイライトになっています。ジェロームの油彩作品を複数点見られる機会というのも海外にいってもあまりない中、「奴隷市場」、「蛇使い」と傑作を日本で一度に鑑賞できたことに興奮しました。
    また、ウィリアム・ブグローやカロリュス=デュランの作品も良いものが展示されていました。
    さらに注目したのは、ファンタン=ラトゥールの薔薇を描いた静物です。落ち着き払っていて、とても気品のある作品であると思います。くすんだ灰色の背景に大輪の薔薇の花々が控えめに映えていますね。この色遣いはファンタン=ラトゥールならではだと思います。
    その他は、アルフレッド・ステヴァンスの女性像がとても上手く、見応えがあると感じました。構成も物語性を感じさせ、質感表現も文句なしの仕上がりです。ベルギー生まれの画家でパリで活躍したようです。

    19世紀フランス絵画を知るには絶好の企画展だと思います。ルノワール以外の印象派も充実しています。奇跡の~という風呂敷を広げ気味のタイトルが許容できる企画展でした。
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