芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    ルノアールに関する覚え書き


    ルノアールの絵が好きだ。
    多くの日本人にルノアールの絵は受け入れられている。そういう意味で、最も魅力のある画家の一人といって間違いないだろう。

    僕がルノアールを意識しだしたのは、中学の最後の年から高校に入った頃だったろうか。
    小さい頃から親に展覧会によく連れてかれたけど、その頃は別に昔の画家には興味がなく、さっと見て出るような感じだった。
    次第に、展覧会の作品を良く見つめるようになって、自分の油彩に対する意識が上がってきた頃、インスピレーションを与えられたのはルノアールだった。
    古典の、写実的で、絵肌がつるっとしていて、どうやって描いているのかも分からない絵とは違って、ルノアールの絵は、筆の動きも分かるし、古典絵画にないような鮮やかさをもっていて、それでいてきちんと対象を捉えているものだった。

    2001年にブリヂストン美術館でルノアール展が開かれるというとき、行く前から興奮していたのを思い出す。
    あれから、さまざまな展覧会に行ったけれど、やはりこの展覧会は自分にとって今でも特別な位置を占めている。
    多分、もう一度には集まることはないだろう、というような作品のクオリティーの高さに感嘆し、素晴らしさを生で実感した。
    展覧会に行く前は、自分で木枠を削ってキャンバスを作り、ルノアールの絵をひたすら正確に模写している作業の途中だったのだが、印刷で見るのと、本物はかなり違っていた。
    本物は、ひたすら明るく、肌などは、より古典的といえるような質感をしていた。
    そのときメモをとって、なるべく本物の色合いを頭に刻もうとしたのだが、帰ってから、模写をそのように仕上げることはできなかった。
    だが、この初めての模写で、ルノアールを扱って、また本物を見て手直しできたということは、自分の中でも大きな収穫になったと思う。
    実際、僕は電卓まで動員して、0.1mm単位で作業していたのだが、今思い出すと、充実して絵に取り組んでいた時期だった。

    ルノアールは印象主義の画家として認識されるが、僕は、この考え方とは少し違ったところにルノアールの魅力を感じている。
    確かに、ルノアールは、印象派に特徴的なタッチで描いており、彼らから多大な影響を受け、モネなどに似た絵を残してはいる。だが、ルノアールの作品は、彼の独自の作風が強調されている。
    モネやシスレー、ピサロらの絵が同じように見えても、ルノアールは彼らからは確かに一線を画している。
    ルノアールはイタリア旅行で、ルネサンスの画家の作品から多分にインスピレーションを受け、そこから新たに自らの絵を構成していくことをしているが、このことなどはルノアールが印象主義を追求することにより生じる問題、限界を知っていたからである。
    1870年代の印象主義を取り入れながらも写実的な作品から、イタリア旅行以後の1880年代には印象主義とルネサンスや新古典主義的な画法との融合を目指し、より上手く印象主義技法を消化、表現している。
    晩年になると、身体的な問題から、十分に輪郭を捉えきれないような、これこそ印象主義的な作品になるが(これはモネなども同様で、彼の作品などは、もはや殴り塗りのような荒々しいものである。)、それまでの1890年代からは落ち着いた画風を確立している。
     個人的には、やはり1870年代半ばから81年辺りまでの、印象主義を風景などに積極的に取り入れながらも、顔などは古典らしさを保って、きちんと表情豊かにつくられている作品が好きだ。イタリア旅行以後は画風が落ち着かない時期になるが、それでも彼が印象主義的技法の中に溺れて対象を捉えきれなくなることに陥らずに、円熟期を迎えられたのは、ルネサンス画家やアングルのような新古典主義を認めて、そこから多く学んでいたということであり、彼がサロンを重視していたことからも、印象主義と距離を保ち、それまでの絵画技法と、新しい印象主義技法との間を上手く仲介していたということであろう。
    この意味からも、彼は印象主義の画家とは少し違ったところの魅力を体現した画家といえると思う。
    さらにいえば、彼が人物を第一の主題としたことも、古典絵画と印象主義絵画を取り結ぶ画風を獲得するに至った大きな要因だろう。

    以上、簡単にルノアールについて僕なりの見方を書いてみたが、やはり思うのは、ルノアールは、それ自体で独自の位置づけなり、主義、画法なりを与えられるべき特異な画家ではないか、ということである。
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