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  • パステルのすすめ


     最近、長い間やってきた油彩から少し離れて、パステルを使った絵を描き始めている。勿論、油絵の表現方法は優れて多様であり、多く人が油絵を選ぶことからも、その可能性は分かる。しかし、パステルも、同様に、多くの良い点を持っている。ここで、簡単に整理しておこうと思う。

     パステルは画材としても、結構古く、有名な画家たちが使用してきた歴史がある。昔のヨーロッパの宮殿画家が描いたようなパステル画は、ほとんど油彩と見分けがつかないような精緻さを持っている。また、近代では、ドガやルノアール等の印象主義画家や、ルドンが秀逸なパステル画を残している。特に、神話や花の題材で描かれる、ルドンのパステル画は素晴らしい(上図)。

     使ってみて感じるパステルの特徴は、色の鮮やかさと柔らかさ、色(絵肌)の均質さ、混色の難しさと必然的にそのことからくる重ね塗りの効果である。注をつけると、色の均質さというのは、色がムラなく広がりやすく、それがまた均質的な絵肌をつくるということ。また、混色が画材の特性として難しい反面、上から新しく塗ることで良い効果が得られるとうことがあげられる。個人的には、こうした特長は、絵の制作スピードを非常に早くし、明るい色調の絵に良い効果を多分に与えるということである。特に、パステルを塗ったところを指でこすって広げることにより、簡単に手早く色が鮮やかに固定し、それが絵肌を整えるということは、油絵、また水彩やアクリル、色鉛筆でもいいが、これらの画材と比較できないほどの効果である。

     パステルは、ハードパステル、ソフトパステル、オイルパステルに大別できる。まず、ハード・ソフトパステルと、オイルパステルでは、同じパステルというもののかなり勝手が違う。

     僕はまだソフトパステルというものは使っておらず、ハードパステル(ヌーベルカレーパステル)を使っているが、ソフトは(部分的、細部的に対する)包括的な描写に適しており、ハードは細かい線描などに適している、ということのようだ。ヌーベルパステルに関していえば、粉っぽさがない、と書かれているが、多分長く流動性のある画材で描いてきた人にとっては、色の固定が難しい上に、より粉末の処理に困るのでは。色が鮮やかであるが、画面が汚れやすいことにも注意しなくてはならない。だから、生じた粉をきちんと処理しないと駄目である。また、色を重ねることは可能であるが、間違って描いたものを上から消そうとするのはまず、無理。明らかに周りとの違和感が生じるし、重ねていくほど、次に重ねる色は画面に固定されにくくなっていくことにも注意が必要である。
     とにかく、透明感や彩度に秀でている。よって、深みのある絵というよりも、印象で押すような、雰囲気のある絵に使うと良いと思う。また、実際僕の見たパステルを上手く使っている絵はこのような類の絵であった。

     オイルパステルは、クレヨンに似ているが、感じとしてはもっとベタベタしている。油彩用のオイルを混ぜて使うことができ、このため、油彩に使うこともできる。
     まず、利点は、絵肌がかなり強く仕上がる。これは、オイルパステルが紙に良く着色、固定されるからである。よって、塗り重ねがハードパステルと比べてかなり楽で、オイルも混ぜて使うと良い効果を持った絵肌ができる。つまり複雑な質感が試せるのである。塗りこんでさらっとした絵肌をつくること、そうしないで描き跡を残した線描で表現することが、ハードパステルよりもきちっとできる。
     難点は、相対的な色数の少なさと、扱いにくさ。色数は、混色のし易さによって多少補うことができるが、やはりソフトパステルと比べれば劣ってしまう。そして一番の難点は扱いにくさ。柔らかいので折れやすい。油質でベトベトしているので、手が汚れる。また、パステル同士がお互いの色を付着しあい汚れる。このため、画面の汚れについてはより注意しなくてはならない。さらに、先が尖らないため、細かい線描には不向き。なので、細かい線描は、細い筆にパステルを溶かして塗るという、繊細な作業が必要である。

     パステルは、紙があれば簡単にすぐにできる。また、特別な技法も油絵などと比べても少なく、簡単に表現できる。そして一番の特徴は、何度もいうが、その均質的な、さらりとした色の鮮やかさである。絵をちょっとやってみたいという人には是非おすすめしたい画材。

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    2005/09/24(土) 19:29:54 | | #[ 編集]
    ソフトorハード
    こんにちは。はじめまして。

    ソフトパステルで野外制作ですか。羨ましいです。
    僕は昨日学生でやる展覧会にパステル画を出したばっかりのところです。金のない学生には、ハードでパステルそろえちゃうと、なかなか、ソフトまでそろえることができなくてそれが悩みの種です。レンブラントなんかは結構高いでしょう。
    それとフィキサチーフもメーカーによって差が明確なんですか? 気にしたことなかったです。今度買うときに調べたいですね。
    2005/09/24(土) 23:56:34 | URL | webcat #-[ 編集]
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    2005/10/05(水) 20:29:13 | | #[ 編集]
    いや、ためになります!
    そうでしたか!
    パステルはじめたばっかりの初心者にとっては、とても参考になる意見、ありがとうございます!
    僕の所属する部には、熟練して指導できる人もいないので、本当に手探り状態です。
    本などを読み込めば知識も増えるでしょうが、そもそもそういうことに頭が回ってなければ駄目だし、まだ慣れてなく知識うんぬんは先だろうな、という感じですので。

    確かに、ハードパステルは、前に定着した層を多少削ってしまいますね。混色・定着、塗り重ねなどのここら辺の問題は、実際にソフトを試して実感してみたいと思います。
    ソフト→ハードで仕上げたりする例も見ているので、上手く使いこなしたいですね。
    最近では、美術館、展覧会でもパステル作品に注目していて、技術を生で確認できる機会を持てているので、これからも上手い作品から刺戟を受けていきたいと思います。

    ではどうも、良いコメントをありがとうございました。また、何か、パステルに限らず、広く絵に関わることなどありましたらコメントください。
    2005/10/07(金) 04:04:43 | URL | webcat #-[ 編集]
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    2005/10/19(水) 20:09:46 | | #[ 編集]
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    2005/10/19(水) 20:19:05 | | #[ 編集]
    度々有難うございます
    いろいろと知識が増えて助かります。
    重ね塗りの問題を以前にして、パステルと他の画材との併用は頭に入れていたので、ためになります。
    僕も、さっと水彩で薄く描いてからパステルを、色鉛筆で細部をデッサンしてパステルを、とか考えていたので。でも色鉛筆も塗りすぎると定着悪くしそうですね。
    やはり下地の色を気にするなら、はじめから淡色色紙を使ったりするのはやってみたいです。

    下塗りに、水彩その他を用いるのは、パステルに限れば、下地の色、マチエールを生かしてこそだと僕は思うので、パステルそのもの自体を前に出す作品には、その下塗りを上からパステルで塗りつぶすのはためらわれます。
    まずは、紹介いただいたような、擬グリザイユ技法で重ね塗りを試したいと思います。
    2005/10/20(木) 09:24:12 | URL | webcat #-[ 編集]
    はじめまして
    いやーびっくりしました。ぼくは、放送大学という通信制大学で、はじめての大学生を経験している老学生です。4年目に入るので、卒論を書いていますが、テーマは、正しく、ここの命題と同じです。「パステルについての考察ルドンを巡って」なんて、自分で選んだ偉そうなテーマで、苦しんでいます。たまたま、検索してこちらに来て、参考になるコメントがたくさんあるので、びっくりしています。ぼくのHPに、書きかけの卒論pdfを、露出しているので、恥ずかしいですが、宜しければ、ご意見たまわりたく思います。ぼく自身は、パステルで風景スケッチonlyです。HPに載せています。では。
    2006/10/10(火) 21:14:33 | URL | とし坊 #/2CD/BNk[ 編集]
    こんにちは
    コメント有難うございます。
    こちらとしても、びっくりなのですが、ただいま、僕も、ルドンについての小論文作成に向けて、ルドン関連の書籍を集めて読んでいるところなのです。(実はフランス・アカデミズムについて書く予定でしたが、資料的限界で、ルドンに行き着いたわけです。)
    確かに、パステルとなると、ドガよりも、ミレーよりも、ルノワールや昔の宮廷画家たちよりも、ルドンのパステル画に大いに魅かれます。絵を描くものとしても、パステルでよくもあのような多色をきれいに使えるなあ、と感心です。

    さて、ごく簡単ではありますが、とし坊さんの論文を拝見させていただきました。美術史家がおろそかにしがちな、技法的部分への言及やパステルの歴史的な概観は非常によろしいと思います。また多くの文献を参照なされており、情報や知識の幅がきちんと形成されていると思いました。とても勉強になりました。完成に向けて頑張って下さい。
    また、少し気になったところは、①細かいことですが、パステルには水も油も用いない、と書かれた箇所があったと記憶していますが、水は用いることが可能であること、②もう少し、客観的にパステルの良さを記述できたら良いのではないかということ、です。パステルの魅力は僕も実感するところですが、内面的な感情を表面にして、それを論文において判断されてしまうと中立的な立場から離れてしまうと思うのです。ここでは確実に言葉足らずになり、表面的なことしか伝えられませんが、パステルの表現可能性と歴史的地位向上という事実はそのままに、ルドンやその他の画家のパステル画の素晴らしさをいうことに留めるのも、逆にパステルの素晴らしさを伝えるのには良いのではと思った次第です。
    僕自身は、絵具そのものには素晴らしさや優劣はないと思います。それをどう使うかという画家の想像と創造においてそれが生まれると思っています。

    最後ですが、良い風景画を描かれていると思います。とても画風や画面がまとまっており、落ち着きのある絵だと思いました。
    ちなみにギターは僕も弾きます。
    2006/10/11(水) 03:58:48 | URL | webcat #-[ 編集]
    パステルとギターと
    こんなに早くお返事いただくとは、思いませんでした。ありがとうございました。
    この15日卒研のゼミです。(2)のことは、指導教官からも厳しく注意されていることです。気持ちが外に出てしまい、論文の文章でないと云われていますが、これでも押さえているつもりなんです。「演歌の世界だ。」なとと、揶揄されています。もう少し、削るか、客観的な表現に変えようと思います。(1)は、各所で、水油は、使わないと書いていますが、これは基本的な範囲でのことのつもりなので、これも表現を変えます。現実に、ぼく自身も、パステルの上に水を被せることがあります。主に暗い面が欲しい時です。重くなりますので、パステルを生かすためには、あまり使わない方が良いのではないかと思います。ドガは、お酒をぶっかけることもあったとか。ルドンは、パステルの先を、水に浸してから描いている部分もあります。部分的に、重量感を出すためでしょう。
    絵の具に優劣はないですが、特徴はそれぞれ違い、使う方がどれだけ引き出せるかでしょう。ルドンは、パステルの良さを最大限に引き出していると思います。
    いずれにしても、ぼくは今が唯一の初めての勉強なので、論文の書き方に慣れてないので、苦労してます。趣味の世界と、少し違うようですね。
    パステルとギターには、高貴なものと庶民的なものを合わせ持っていて、美的、歴史的に共通のものを感じています。パステルとギターの比較美学論など、面白いのではないかと思います。難しいでしょうね。(笑い)
    2006/10/11(水) 12:17:07 | URL | とし坊 #/2CD/BNk[ 編集]
    パステル、油絵具、アクリル…
    こちらこそ、参考になる文章を読ませていただき有難うございました。
    確かに「論文」となると、客観性や科学性が求められるところですね。最終的に納得されたものができるまで完成度を高めていけたら、良いですね。

    また、とし坊さんは絵を沢山描かれているということなので、絵の表現の幅を広げることにもチャレンジされたら、見方がより豊かなものになるのではないでしょうか。僕も、大学に入ってから、パステルやオイルパステルに加え、色鉛筆、アクリル、皿の絵付け、鉛筆デッサンなどに取り組むようになりました。いろいろな画材で絵を描けたら楽しいですよね。

    それでは、また何かコメントをいただけるようであれば、お願いします。
    2006/10/12(木) 02:04:56 | URL | webcat #-[ 編集]
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