芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • ベラスケスの十字の謎


    エリアセル・カンシーノ
    宇野和美訳
    徳間書店,2006


    スペインの宮廷画家ベラスケス作の名画、『侍女たち(ラス・メニーナス)』に秘められた謎(「ベラスケスの十字の謎」)に迫る物語です。

    『ラス・メニーナス』というと、美術の資料集などにも必ず載ってくるような有名作で、画中にいるベラスケス自身、鑑賞者とは背向けに置かれるキャンヴァス、小さく鏡に映るフェリペ4世、などなどミステリアスな要素を持った絵として知られています。
    本作は、この『ラス・メニーナス』に描かれた小人・ニコラス・ ペルトゥサトを主人公・語り手としており、その他スペイン王宮に実在した人物を交え、史実を下書きにしながらも、独創豊かに絵の謎・裏側の真実を描き出しているところが注目される点です。
    このような美術史ミステリはあまり数がないし、(どこまでが史実もしくは伝承的な裏書きがあるのかは分からないですが)当時のスペインを舞台として、画中の登場人物、そして彼らの関係・交錯・言動を細かに描いているのは率直に興味深いです。作者は構想してから長い間かかって書いているようですが、それも頷けます。
    児童書にカテゴライズされてしまうのかと思いますが、こういうところは(当時のスペイン王室の状況を多少知っている)興味の向いた大人の方が楽しんで読める本です。

    一応「謎」を扱っている本書の内容に過度に触れるのは好ましくないと思うので(手に取るのであれば内容紹介は読まない方がいいです)、あらすじの紹介は控えますが、謎そのものよりも、現実にある一枚の絵から広がる物語の世界を楽しむ方が面白く読めると思います。ダヴィンチコードのような性格ではありません。
    ベラスケスに限らず、スペインのバロック美術や、当時の世界史・美術史に興味があれば、世界に浸り、満足した読了感を得ることができると思います。
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