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    トレチャコフ美術館


    パーヴェル・ミハイロヴィチ・トレチャコフと、その弟のセルゲイが収集したコレクションよりなるモスクワの美術館です。彼らが残したコレクションは、死後も膨大に膨れ上がり、現在は15万点以上に及ぶ収蔵品を持つ、ロシア屈指の美術館になっています。
    ここで紹介する本館の他、コンテンポラリーアートを展示する新館もあります(パーヴェル・トレチャコフは現代絵画をコレクションに入れないで欲しいと願っていたそうです。…別館になっているからいいのでしょうか)。
    日本でも、2009年にコレクションを紹介する展覧会が開かれ、トレチャコフ美術館や19世紀ロシア絵画がより知られるところとなったと思います。自分も、この展覧会を機にロシアの19世紀絵画に注目するようになったので、今回、早々に美術館を訪れることができて良かったです。それにしても、トレチャコフの半身像を前にした、このファサードは趣あり過ぎです。

    展示作品は、18世紀から20世紀までのロシア絵画と、イコンです。
    大美術館にはそぐわない小さな扉を入っていき、2階から展示は始まります。18世紀絵画は古典的な感じで、大作も少なく、記録的な肖像画が集まっていたような記憶があります(時間の都合もあり、ちょっと飛ばし飛ばしで見ました)。
    メインの19世紀絵画は、やはりかなりの質・量を誇る作品からなっており、入り組んだ各展示部屋は、どれも大変に見ごたえあるものとなっていました。新たに発見した画家については後記します。
    2階の19世紀絵画を重点的に見て、出口に差し掛かる1階にイコン部屋がどーんと構えています。こちらも見る人にとっては眉唾ものなのかと思いますが、価値が分からず流し見で終えました…
    これで時間もいっぱいだし、出るのにもちょうどいいのかと思っていたら、1階には20世紀絵画の展示室も控えており、完全に時間配分を間違えてしまいました。20世紀絵画も、非常に個性強く、面白いものであるので、それなりの時間を割くべきだと思います。

    流石に本場?だけあって、日本展で注目した画家たち、ペローフ、レーピン、クラムスコイ、クインジ、シーシキンなどは、代表作が集まり、かなり充実した内容となっていました。小ぶりなファサードからは伝わりにくいのですが、美術館は結構な広さ・高さがあるので、大作が壁いっぱいに並べられているのは本当に圧巻という感じです。
    それでは、以下、日本展のレヴューでは紹介できなかった画家のうち、メモに残せた画家をピックアップしていきます。

    E.S.ソローキン Evgraf Semenovich Sorokin(1821-1892)
    K.S. フラヴィツキー Konstantin Dmitrievich Flavitsky
    “Princess Tarakanova”(タカラノワ王女)という歴史的事件に取材した大作があります。ドラマティカリーで叙情的な作品です。フランスのロマン派(たとえばアリ・シェフェールなど)に通じる作風を感じさせますし、表現力をとっても比肩する作品だと思います。
    M.A.ヴルーベリ Mikhail Aleksandrovich Vrubel(1856-1910)
     ロシアの象徴主義画家。油彩のほか水彩、彫刻、ステンドグラス、壁画など多くの作品を見ることができます。独特のモチーフ、画面構成、タッチなど見る者を困惑、圧倒させるものを持っています。
    I.K.アイワゾフスキー Ivan Konstantinovich Aivazovsky(1817-1900)
     海洋画で知られる画家。海、大気の質量感の表現に優れていて、ドラマティック、センシティヴなものを感じさせます。
    V.M.ヴァスネツォフ Viktor Mikhailovich Vasnetsov(1848-1926)
     神話・宗教などを主題とした絵を描いた画家のようです。「三人の勇士」「灰色の狼に乗ったイワン王子」など、強い筆致で見る者を引きつける構成の絵だと感じました。
    V.I.スリコフ Vasily Ivanovich Surikov(1848-1916)
    “The Boyarynia Morozova” "Morning of the Strelets' Execution” “ Menshikov in Berezovo” など、大作が目立ちました(習作もいくつかあります)。横が数メートルにもなる巨大キャンヴァスにダイナミックに民衆を配し、事件の緊迫した一瞬を切り出すかのような画面づくりは、ただ茫然とさせられる、という一言に尽きます。主題もそうですが、色の暗さ、人物の表現、厚めのタッチなどなど、個人的に思う近代ロシア的な要素をふんだんに持ち合わせている画家だと思いました。“ Menshikov in Berezovo”(下図)などは、主題の意味などは良く分からないにしろ、この時代のロシアの家族をリアルに表現した絵だと強く感じさせられるものを持っており、各人物の表情・姿態が深く感情・内面性を表しているような絵になっています。
    M.V.ヤクンチコワ=ヴェーバー?? Maria Vasilievna Yakunchikova-Weber(1870-1902)
     リアリズムに分類されない画家の中では、一番に気になった画家です。周囲と比べても表現が独特で、異彩を放っています。視界の切り取り方、軽やかで面白く膨らむタッチ、中間色の遣い方、など親密的で詩的な絵だと感じました。

    かなりの数のコレクション画像を公開する太っ腹な公式サイトがあります。
    www.tretyakovgallery.ru/
    またじっくりと鑑賞したいと思う魅力的なコレクションでした。近代ロシア絵画が、日本でもさらに紹介されることを祈っています。


    Vasily Ivanovich Surikov "Menshikov in Berezovo"



    Maria Vasilievna Yakunchikova-Weber "From a window of an old house"
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