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    カラヴァッジョの没後400年という節目の年に日本で公開されている「カラヴァッジョ/天才画家の光と影」を観てきました。映画自体の製作は2007年となっていますので、日本での劇場公開はファンにとっては待望、ということだったのでしょうか。
    本国イタリアでは、この節目の年に開催されているカラヴァッジョの回顧展が大盛況とのことです。日本では、ボルゲーゼ展の作品を鑑賞するにとどまりますが、この映画も含めて彼の画業を再確認する良い機会となっていると思います。
    もう結構前になりますが、庭園美術館でみたカラヴァッジョ展の印象が強く残っていて、子供ながら連れて行ってもらって良かったなと当時を振り返ります。

    さて映画ですが、まだ公開中で、これから封切られる映画館も少なくないので、ネタばれな内容は避けて、影響力はないにしろ、少なくとも観に行こうと考えている方を支援する記事にしたいと思います。

    まずストーリーですが、画家が出身のカラヴァッジョ村から意気揚々ローマに立ち、成功と挫折を繰り返し、トスカーナ地方の港で最期をむかえるまでが丁寧に描かれています。
    カラヴァッジョというとその破天荒ぶりが知られるところですが、あまり史実を美化することなく、画家の「光と影」を人間味あふれる形でスクリーンに提示していると思います。
    それなので、映画批評などにさらしてしまうと、ただの男のエゴを2時間も見せて、、というふうにもとられそうです。ただし、カラヴァッジョを物語を通してより身近に理解する、という観点では、愛や正義という語のみで聖人化せず、ある画家の生きざまを率直に見せた方が良いと思いますし、映画はバランスをとってそれに成功していると思いました。カラヴァッジョが同性愛と疑われた側面や娼婦に夢中になっていた側面も、ローマという街を上手く見せながら、劇中に織り込んでいました。
    ストーリーであえて難点を挙げるとしたら、観る側の教養ということになりそうです。歴史の史実や時代背景などが描写されていくのですが、知らないと映画に置き去りにされてしまいます。自分は本当に世界史がお粗末なので、当時のローマの時代背景を良く知らず深く咀嚼ができませんでした! 
    ローマカトリック、その中のスペイン・フランスの勢力争い、パトロンのデル・モンテ枢機卿(親フランス派)、修道士ジョルダーノ・ブルーノの殉教、異端審問(地動説-異端)、ベアトリーチェ・チェンチ事件、マルタ騎士団、とこのくらいのワードは頭に入れてから観ると映画館でキョロキョロしなくて済むと思います。オフィシャルのストーリー紹介は、そのまんま物語進行をなぞっているので見てしまうと面白くないかなと思います。

    また、テーマとなる「光と影」は映像の中にも表現されていて、街並みやアトリエの中で可視的にあらわされている面はもちろん、たとえば夜の街や監獄を闇の部分として見せることなど、シンボリックにも提示されていたと思います。総じて見ると、ハリウッド映画のように、というのではなく、もっとナチュラルに17世紀のイタリアを見せてくれている気がしました。
    さらに、カラヴァッジョの画家である面も忘れずに描いており、モデルを並べて描く、対象をじっくり観察する、光源に神経を使う描写などなど、画家のリアリスムを追求する姿を細やかに見せています。

    伝記をおこしたようなのっぺりした映画ではなく、躍動感のある映画だと思います。それはカラヴァッジョの密度の高い人生に帰する部分も大きいですが、映画として上手く立ち回っている部分もそれなりにあると思わせます。
    もう一度見返したいと思いましたので、おすすめします。
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