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  • 認知的一貫性について少々
    社会心理学におけるハイダーの認知的均衡理論が地味にしっくりきたので少し語ります。

    理論自体は検索すれば分かりやすい図式が出てきますが、簡単に説明します。
    『ガイド社会心理学』を参照します。
    この理論は、自分(p)、他者(o)、対象(x)の3つの要素をおき、それぞれの間の「好き/嫌い」「所有、所属」の結びつきにより、均衡・不均衡の状態を判定するものです。
    たとえば、自分pが他者oを好いていれば2者間の関係は「+」とおき、反対ならば「-」とおきます。
    このプラマイをp-o,o-x,x-pにあてはめていき、3つ関係の積がプラスであれば均衡状態、マイナスであれば不均衡状態と判定します。
    …簡単にいえば、「お互い好いている間の二人がある対象をともに好き・所有していれば均衡状態」、「犬猿の仲の二人がある対象をともに好き・嫌いであれば不均衡状態」といういうな感じです。

    この理論は、認知的一貫性、つまり人の認知的枠組みは矛盾ないように構成される、という文脈でのものであり、核心的なのは不均衡状態における3者関係の在り方です。
    不均衡状態は、主体にとって不快なものであるので、「不均衡状態においては、不快感を無くし認知的一貫性を保つため、均衡状態を回復しようと動機づけられる」、ということがこの理論の重要な点です。
    つまり、不均衡な状態では、3者間のうちのどれかの+-記号を反対のものへと変えようとする意志が生まれるわけです。
    たとえば、嫌いな人が、自分の大好きなブランド品を持っていた、あるいは、自分が好きな歌手のファンであることが分かった、というような場合、認知的一貫性を回復するために、1.相手を嫌いであるという認識を改める、2.好きなブランドや歌手を放棄する、3.相手が対象を嫌いになるように行動する、という3つの選択肢のいずれかがとられるということになります。
    何気にそんな簡単に動機づけられるものか、とも思われますが、個人的には、社会生活においてそれ相当な説得力というかカヴァー力?を持った理論であると思います。

    というのも、もちろん(苦手な人と趣味や意見があって居心地が悪いというような誰もが描く)経験上の実感ということもありますが、社会心理学上の、「単純接触効果」や「類似性魅力」といった代表的な対人関係仮説も、認知的一貫性の観点でのハイダー理論が相補するものとなるんじゃないかと思うからです。
    これらが同じ文脈や理論的意図をもっているわけではありませんが、「p、oが毎回あるところであう(ある社会的場面xへの所属に関して、双方が+)のであれば、po間は+と帰属される」、「p、oが同じものがともに好きという点で類似(ある対象xに対して双方が+)していれば、po間は+と帰属される」とハイダー理論でいえる場合、これは「単純接触効果」や「類似性魅力仮説」の一部を表象していることに他なりません。
    自分は社会心理学を修めたわけではないので、この古典理論が現在専門的にどのように扱われているのかは分かりませんが、単純理論といえるけど意外な実効力を持ち合わせた理論だなと感じた次第です。

    余談ですが、教科書的な書物には詳述されていませんでしたが、主体を動機づけるには、対象が主体にとってどのような位置づけのものなのか、また主体にとって認知的一貫性がどの程度幅を利かせているのか、ということも関数になってくるかもしれないと思います。
    素人考えでも、3者関係のうちの対象xは瑣末的・周辺的・総括的なものではなく、アイデンティティを構成する中心的なものであった方が動機づけに大きく関与するはずです。
    また、認知的一貫性がある主体においてどれほど強くあらわれるかも個体差があるのかもしれません。これは冗談ですが、高校生よりも大学生、大学生であれば理系や法学部生の方が、認知的一貫性を回復しようとする動機づけが強くなる、のかもしれないというようなことです。
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    コメント
    この記事へのコメント
    認知的一貫性?
    心理学のこと良く分かりませんが、認知することに一貫性があるのか、無いのかが、肝心ですね。
    均衡しているとすれば、科学的な理論が成り立つのですが、ぼくには人間のすることに、まだまだ疑問や変則的なことが多すぎるように思えています。しかし、ハイダーの理論一度勉強してみたくなりました。
    ボルゲーゼ美術館、門前まで行きましたが最終日時間切れで入らなかったです。隣の現代パステル展へ行きましたが、花見に時間食われてしまいました。現パ展、なぜか2年連続出品しました。東京都美術館しばらくお休みで寂しいですね。
    ここのblog時々美術展の案内で、勉強させてもらっています。有難うございました。
    2010/04/12(月) 14:33:56 | URL | とし坊 #/2CD/BNk[ 編集]
    コメントありがとうございます。

    たしかに、愛と憎しみが紙一重、などというように人間の矛盾・相反した、ときに両価的な感情は問題になるところですね。
    上で扱う認知の問題はベーシックなものなので、たとえば、ある状況下での態度変化(本心では嫌いだがある人の前では好きという)であったり、他者への役割期待(彼は先生であり、父親でもある)というようなより社会心理学的・社会学的段階にいたる前のものだといえます。
    ただ、認知的・心理的に不均衡状態に陥った時に、認知的一貫性による均衡回復が図られるこそ、急激な態度変化(百年の恋もさめる)や心理的な葛藤が起こる、ということもいえそうです。
    まあ、いろいろな要素(関数)があって、人の感情や態度が変化に富んだものになるからこそ、そこにあるベーシックな構造を拾い出してこようとする心理学や社会心理学が発達してきたんだと思います。
    また気になったことはピックアップしていく予定です。

    公募展とはすばらしいです。
    自分もいつか作品を軽くでも表に出せる機会がつくれたらと思います。
    2010/04/12(月) 22:02:32 | URL | webcat #-[ 編集]
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