芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    『ザ・ウェーブ』
    モートン・ルー著
    小柴一訳、新樹社


    1969年にカルフォルニア州の高校で実際に起こった事件を元に書かれた物語です。
    この高校の歴史の授業で行われた実験が、どのように生徒を巻き込み、暴走していくのかを描いています。
    ネタばれしない程度にいうと、ナチスドイツ支配下で見られた「理解不能」の出来事を、アメリカの学生が擬似体験によって理解するという実験であり、社会心理学、社会学的な要素を色濃く示したロールプレイイングが学校の中で繰り広げられていきます。

    社会心理学、心理学をかじった人であれば、このような実験が過去、実際に学者によって行われ、それがどのような結果をだしたかは幾つか事例を思い起こすでしょう。
    現在は、道義的な面から、身体面・精神面での安全が確保できない心理学実験は行われないようになったと思うので、『ザ・ウェーブ』のようなことは、一昔前のことになってます。
    ただし、人の社会的、社会心理学的に見る危険な側面が、過去の教訓によって克服されたわけではまったくありません。日本でも、全共闘や特定の新興宗教の暴走がどのような末路をたどったかを振り返ればすぐに分かります。

    たとえそれが極化しなくとも、集団においてごく普通に観察できる幾つかの要素(同化、排除・疎外、内集団びいき、リスキーシフト、権力の暴走・堕落、没個人化、等々)は、反省的に捉えられないと、個人や集団にマイナスの影響を与えます。
    自己の所属する集団を反省的に、客観的に捉える視点を養う、とはかなり大げさになってしまいますが、多少なりとも立ち止まって観察する機会を持つ、という点でも本書は一石を投じる本になるかと思います。
    こういうわけですので、個人的には、読んで面白いとか読み終わった後に内容を諒解する、という趣の本ではないと思いました。
    万人向けはしないと思いますが、社会系よりの文系?にシンパシーがあれば、手に取ってみる価値はありそうです。
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