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  • 皇室の名宝(一期)  東京国立博物館平成館


    天皇の即位20年を記念しての特別展で、展示内容から一期・二期に分けられた展覧会になっています。一期は「永徳、若冲から大観、松園まで」と題され、三の丸尚蔵館の絵画作品を展示し、二期は「正倉院宝物と書・絵巻の名品」という名のとおり正倉院宝物をメインに幅広く日本美術の名品を紹介するとのことです。
    安土桃山~近代の質の高い絵画作品を見られるというわけで一期の展示にいってきました。
    日本美術の展覧会をやると、ご年配の方に非常に人気があるということで、会場は激烈に混んでいました。平日でもこれだけの混みようという展覧会に行くのは久しぶりで疲れました。鑑賞するという環境にはないという感じでしたが、こういうのはどうにもならないですかね。


    展示の目玉は若冲の30幅からなる「動植綵絵」です。全てを近くでゆっくりと鑑賞することはできませんでしたが、ひとつひとつが綿密に構図だてられている印象で、細部もぬかりなく描写されており、これが30も並ぶとかなりのインパクトがあります。
    雪や水の表現など古さを感じさせない様式で描かれているもの印象に残りました。若冲は、このような色彩豊かで、精密に仕上げられた作品も素晴らしいですが、墨で一気に勢いよく描かれた作品も魅力的ですよね。「芦鵞図」のがちょうの背景のススキなんかはかなり格好良いと思いました。

    個人的に一番良かったのが酒井抱一の「花鳥十二ヶ月図」です。いくつかのバージョンがあり、プライスコレクションに続いて見ることができました。
    若冲を見た後だと抱一の作品はとてもなごんで見られたのではないでしょうか。空間を上手く利用した花木の配置、繊細な描写やたらしこみの技法、など上品なつくりです。
    特にたらしこみの技法は素晴らしく、花や葉、幹に濃淡の微妙な調子を与えており、存在感を際立たせています。葉などは、たらしこみの下から白抜きで葉脈を浮きだたせているのですが、これってどうやるんだろうか…。絵具をはじく画材で描いているのかな…?

    その他は荒木寛畝の「孔雀之図」がすごかったです。寛畝は、荒木十畝の師であり養父である人物ですが、父子ともにかなりの技術を持ってます。
    この孔雀の迫力ある見せ方や、羽根の精密描写は、他の孔雀作品と比べ圧倒的です。
    ただ、孔雀が岩の上に立っている感じがしないのがちょっと気になりますね。

    鏑木清方の「讃春」も注目したい作品です。六曲一双の屏風で、右隻と左隻は形式的には独立してありますが、描かれている内容は対照的なものになっています。
    右隻はセーラー服を着た二人の女学生が描かれ、背景には城や城壁が見えます。左隻は前景は江戸時代かと思うような船上での母子の暮らしようが描かれていますが、背景には大きな鉄橋が聳え立っています。
    両方共に中景を空けて、前景・後景との対比で遠近・空間の広がりをつくっており、さらにこれが大気遠近法でより際立たされています。特に左隻の画面を横断する鉄橋は成功しているなあと思います。

    最後に、上村松園の3幅からなる「雪月花」(上図、部分)。雪・月・花はそれぞれ、『枕草子』、『源氏物語』、『伊勢物語』に対応していて、貞明皇后に捧げるため20年あまりの歳月をかけて描かれたそうです。御簾の表現だけ見ても並々ならない意気込みが感じられ、見入ってしまいます。


    第一期はすでに終了しており、もうすぐ二期展示が始まります。正倉院宝物の方がお目にかかる機会は少ないので、これもかなりの賑わいになるのでしょうか。
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