芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • 芸術都市パリの100年展 東京都美術館


    1830年から1930年の100年間のパリに焦点をあて、パリ市内にある主要な美術館の作品でもって、その時代を振り返る展覧会です。今年は日仏修好通商条約締結から150年というメモリアルな年のようで、このような企画が実現しています。
    このブログの、「パリのミュゼ」のカテゴリにある美術館がメインであって、パリの美術館を一通りまわった人は見慣れた作品が多いのかというと、そうでもなかったです。個人的には、見ていない作品(または、おそらく見たのだろうけれど忘れている作品)が半分以上であって、新鮮な気持ちで見られる展覧会だと思いました。さらに彫刻も程よく展示されていて、ロダン、マイヨール、ブルーデルといった代表的な彫刻家の作品が見られます。他にも、版画、写真も多くあり、いろいろな角度でパリの芸術を見られます。

    まずは、ルノワール。「ニニ・ロペスの肖像(1876)」(下図)と「ボニエール夫人の肖像(1889)」の二点があります。前者の方は、色彩や塗りでの主張を抑えた、淡く儚げな雰囲気を保った作品で、吸い込まれます。未完で終えられたのかと思いましたが、背景の描写が曖昧なタッチで済まされていたり、椅子にかけた肘が塗りこまれていなかったりと、渾然とした不思議な画面になっています。前期の作品といえますが、あまりルノワールでこのような作風は見てこなかったので、今回注目した作品です。
    対して、「ボニエール夫人」の方は、きちんと塗りこまれており、とても明るく、大胆な色調対比がなされた作品です。この色と明るさは、1890年あたりでは特にそうですが、今でもすごいなと思わせます。絢爛さと一種のアンニュイを感じさせる絵だと思いました。

    モローは、モロー美術館から数点来ていましたが、中でも気になったのが、「妖精とグリフォン」です。モロー美術館では見た記憶がないのですが、単に忘れただけなのか、常設展示していない作品だったのか…。さておき、同美術館に完成作で、この作品と構成は似ているものの、別のヴァージョンのものがありますが、今回の作品は、全体にわたって塗りこまれていない未完成作品です。しかし、グリフォンの動きや描写に力が入っており、構図に広がりがあるので、興味深く見ることができる作品です。また未完成であるがゆえに、モローが作品を描く工程が見られるのも良いところです。

    今回注目した画家が、テオ・ヴァン・リッセルベルグ(1861-1926、テオ・レイセルベルヘ)です。ベルギー生まれの画家で、レ・ヴァンにも参加していました。スーラに影響を受け、新印象主義に傾倒したということで、「アリス・セットの肖像」(上図)は、見事な点描技法で描かれています。点描をこれだけ上手く使っている作品もあまり見ないので、とても驚き、じっくりと見させてもらいました。この大作を、相当リアルに、しかも統一感を持たせて仕上げるのに、どれだけかかるんだろう、と思います。図版ではなく、直接見て楽しむべき絵画です。ドレスも単に青を点描しているだけではないのが分かります。見事な点描ということで、松岡美術館で見たアンリ・マルタンの風景画を思い出しました。
    この作品のほか、オーギュスト・ペレとその夫人の肖像画がありましたが、こちらは点描ではなく、生き生きとしたタッチで描かれています。いろいろ描くことができる画家なのだと思います。これからも彼の作品に出会えたら良いですね。

    その他、気になった作品を挙げてみます。
    ファンタン・ラトゥール「サテュロス(ユゴー『諸世紀の伝説』より)」。ファンタン・ラトゥールは、神話主題での作品も結構残していますが、その特徴となるふわふわした描写で今作も描かれています。人物の配し方や、細やかな絵肌が良いなと思いました。
    リュック=オリヴィエ・メルソン「一滴の水のための一滴の涙(ユゴー『ノートル=ダム・ド・パリ』より)」。躍動感溢れ、粗野で汚い群衆と、静謐で、明るく、綺麗に描かれたエスメラルダのコントラスト!。魅せてくれる絵であり、飽きさせない絵です。人物に、輪郭線を描いたり、肌などに、パステルでいうフェザリングのような細かい線描を入れていたりと、画面からは、独特な表現が見えてきます。
    その他にも、アモリ・デュヴァルやシャセリオーの作品など、見事に仕上げられた良い作品が来ています。ドーミエの版画もとてもコミカルです。
    これから、広島、京都と巡回するようです。東京展は始まったばかりですが、あまり混んでいなく、見る側としては落ち着いて見ることができるのかと思います。



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