芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • フィラデルフィア美術館展 東京都美術館


    アメリカの美術館でも屈指のクオリティを持つ、フィラデルフィア美術館からの近代以降の絵画と若干の彫刻を集めての展覧会。
    構成は、最後のアメリカ美術の章を除いて、年代・流派順であり、数も絞って展示していたと思います。

    やはり個人的には、印象派以前の近代絵画が楽しめました。
    有名画家の良い作品が来ていたと思います。
    逆にキュビスムのところは、まだ苦手でさらっと見てすませてしまいました。
    具象なら具象、抽象なら抽象、と明確な区切りがあるといいのですが、現実のものを形や色、パースペクティヴなどを変えて再構成するというのは、違和感があるのです。

    そういうことで、以下は、主に印象派までのコメントになります


    ■クールベ 「スペインの女」(上図)
    腕にまでからみつく、豊かな黒髪の、強い黒とうねりが一見して注目されます。美しい女性像とはいえないと思いますが、女性の顔の骨格や肉づき、光の当て方などとてもリアルに表現されています。少し気難しそうな女性のイメージまで伝えてくれます。深い青と朱の落ち着いた色調対比もなされています。

    ■コロー 「テルニの山羊飼い」
    バルビゾン派の絵にしばしば見られる、逆光を上手く用いた絵です。山羊飼いは日と明確なコントラストをなしており、山羊は薄暗い前景で浮かび上がるように描かれています。それらが、とても叙情感をかきたてています。
    画面の大半は存在感のある大木が占めており、それを割るように、日没の空が描かれていて、劇的とはならない、慎ましさ、素朴さを感じます。

    ■マネ 「キアサージ号とアラバマ号の海戦」
    南北戦争に取材した大作です。マネは当然のことながら、実際にはこの海戦を目撃したわけではありませんが、圧倒的な臨場感とリアリティーで再現をしています。
    画面中央上に、沈没する船を描き、その手前には救助に向かう小船を描いていますが、その前には何も置かず、見者の視点を強く喚起しています。波の動態的で、飽きさせない描写が見事です。

    ■ピサロ 「ラクロワ島、ルーアン(霧の印象)」
    とても色調のまとまった、綺麗な点描画です。スーラの影響で点描を描いたピサロですが、こんなにまとまって整然としているのは、初めて見たと思います。
    遠め目で一見して、一瞬、(ベルギー)象徴派の絵を思わせるような空気と静けさを感じました。ゆるやかな大気遠近と、湖面の反射による部分的なシンメトリーなども、それらを助長していると思います。




    ■ドガ 「室内」(上図)
    弱くやわらかい光の表現、それに対応する朱の色調統一、画面上に天井を描くなど部屋(の狭さ、限界)を強調する構図、男女のポーズ・配置。これらがこの絵に、ある種の幻想性と、物語性を多分に与えていると思います。

    ■モネ 「アンティーヴの朝」
    木の思い切った配置と、それを引き立たせる遠近法、こまやかなタッチと美しく表現されたパステル調の色調。木々の微妙な色の表現も良いと思います。

    ■ルノワール 「ルグラン嬢」
    実は、展覧会に行く目的はこの絵との再会が大部分を占めていました。
    2001年のブリヂストン美術館の展覧会の前後に、この絵の模写に取り組んでいて、田舎から東京に来て、実物を見て、いろいろと感動をもらい勉強をした絵です(こちらの記事参照)。そういうことで個人的に思いいれの深い絵の一つです。
    前に見たときのような強烈な印象は、今となっては流石に受けませんでしたが、完成度の高さ(特に表情)はとても感じました。ルノワールの油彩は、三桁はゆうに見てきましたが、その中でも個人的にはもっとも良い作品の一つです。印刷と実物との差が激しく、実際に目で見て確かめなければ、良さが楽しめないと思います。
    もっと後の時代になると、(手などは象徴的ですが、)かなりデッサンがいい加減になってきますが、この「ルグラン嬢」の時代は写実と印象主義の明るいタッチが見事に融合していて、かなり好きです。

    ■ホアキン・ソローリャ 「幼い両生類たち」(最上図)
    スナップ写真を想起させる、大胆で、写真的な構図とレジャー的題材をとった作品。
    ソローリャはこのような浜辺の風景を描き、アメリカでもかなりの人気があったようです。
    海の複雑なトーンや、画面中央の少女のピンクのワンピース、裸の子供たちの強い日差しが照りつける肌など、色づかいが鮮やか、かつ上手いです。大振りなタッチでこれだけ表現できているというのも驚きです。

    ■カサット カサット父子の肖像
    パステル画の方を見てきましたが、油彩でも、パステル画のフェザリングのようなタッチで、端整に顔や手を描いています。ベタ塗りな黒い服、荒々しいタッチの背景、というように、色々なタッチ、印象が混在してもいます。より自然主義的(?)に描かれた、「母との抱擁」と比べても面白いです。

    ■ワイエス 「競売」(下図)
    今年あったワイエス展になんだかんだで行きそびれてしまったのがかなり悔やまれます。そういうことで、高校の教科書の頃から憧れだったワイエスの絵を初めて見ることができました…。
    競売の様子を遠巻きに描いており、前景には荒々しく、強く表現されたわだちが描かれています。ものの質・量感が見事に表現されていて、やはり圧倒的な完成度の高さを感じます。荒野のわびしさや、画面の中の物語性なども提示しています。




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