芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
  • calendrier
  • ベルト・モリゾ展 損保ジャパン東郷青児美術館


    印象主義の代表的女性画家、ベルト・モリゾの日本初となる本格的な個展。
    これだけの量と質の作品を見るのは本当に貴重なことで、特にモリゾに強い思い入れのない人でも、印象派が好きな人であれば、見て損はない、楽しめる展覧会だと思います(巡回しないので、遠方の方は大変かと思いますが…)。
    画題は、家族を扱ったものが多く、またそれが適度な大きさのキャンヴァスに描かれており、慎ましやかであり愛情の溢れる作品が多いのが特徴です。




    会場に入るとモリゾ関係の資料を並べた部屋になります。ここでは資料と、姉エドマ・モリゾによる、絵筆を持つベルトの肖像を見ることができます。
    エドマはベルトと同じように絵画を勉強しながらも、自身は画家になることを諦めたのですが、これが予想だにしなかった完成度を持った絵で驚きました。古典的技法による写実的な絵であり、肌はその下の血管まで意識して表現されています。各所の質感や光の表現も見事にできていて、師であったコローがベルトよりもエドマの絵を評価していた、というのも納得できます。

    絵画の構成は、おおむね年代順に並べるものだったと思います。
    「モルクールのリラの木」(最上図)は、平べったく程よく仕上げられた作品。明るい中景の草むらが、影となる前景など他の部分を引き立たせており、細やかな人物の描写、情景は親密さを感じさせます。
    「人形を抱く少女」(上図)は、未完成のようですが、モリゾのランダムに跳ねるタッチが活かされた作品です。背景は室内というのを感じさせないような、抽象への段階を踏んでいる、不思議なつくりです。逆に、人物、人形はやさしく表現されており、タッチの対比とともに、画家の娘への感情も読み取れるようです。
    「バラ色の服の少女」は、よくデッサンされたパステル画です。色調の対比も綺麗ですが、顔、表情のつくりが(いつもそれを簡略に済ます)モリゾとは思えない仕上がりです。
    「コテージの室内」は、窓辺の少女(ジュリー)を描き、前景は大きな丸テーブルや椅子を大胆に配する構図ですが、とても雰囲気を感じさせる作品で、静かさが漂っています。古典派、ロマン派、そして象徴派が、暗い画面に神話主題を描いていた時代に、これだけ明るく、タッチの変化に富み、プライヴェートで親密な絵を描いていたのですから、画家自身のいう近代性というのもはっきりと分かります。

    「マンドリン」(下図)、そして一連のジュリーの肖像画である「夢を見るジュリー」、「本を持つジュリー」は、後期の作品となるものですが、それまでの短い跳ねたタッチから、長い流動的なタッチに移行しており、さらに背景とドレスの色調が統一されていることもあって、全体としてまとまりのある作品になっています。「マンドリン」、「夢を見るジュリー」は、確固とした画家のまなざしを感じさせ、得に良い作品だと思います。
    「水浴」「横たわる裸の羊飼いの少女」は、あまり取り上げられることのないヌードを扱った絵です。これらの作品では、対象によってタッチが分けられて表現がされており、ここでも後期の画風の変化を見ることができると思います。



    スポンサーサイト
    コメント
    この記事へのコメント
    コメントを投稿する
    URL:
    Comment:
    Pass:
    秘密: 管理者にだけ表示を許可する
     
    トラックバック
    この記事のトラックバックURL
    この記事へのトラックバック