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  • オルセー美術館 vol.2


    オルセー美術館については、以前にも書きましたが、前に書ききれなかった分などを含めて、またレポートします(2005年のレポートはこちらに)。
    2年前に行った時と、作品の配置や、展示室の割り当てなどが変わっていました。特に地上階の、寄贈コレクションを扱うセーヌ・ギャルリーです。クールベの「オルナンの埋葬」も額が外された状態でした。

    2度目に行っても発見ばかりで、まだまだ見ていたい気分でした。
    流石に、世界規模の近代絵画美術館です。以下、気になった画家、作品を取り上げます。


    アカデミスムのところでは、前に行った時はなかった、エルネスト・エベールの「マラリア」(上図)がようやく見られました。この作品はエベールがローマ大賞を得、その後輝かしいキャリアを送ることになった出世作です。古代ローマのマラリアの流行に取材しています。近くで見ると意外に塗り込みは浅く、タッチを生かして描かれています。光は、中央の女性に絞りぎみで当て、その周りの暗さや平坦な背景構図は、陰鬱な空間を作り出しています。筏に署名が書かれていました。

    注目するジェイムズ・ティソは、作品によって随分仕上がりの印象が違うことを再認識しました。4作品ほど並べられていますが、さほど完成年が違わないものの、より古典主義的に仕上げられたものや、クールベのように大振りなタッチを生かしながら写実的に描かれたものなどが混在しています。
    「ファウストとマルガレーテの出会い」(1860)では、人物、服などのタッチを消して、より古典主義的に仕上げられています。対して「姉妹」(1863)(下図)では、ストロークタッチでドレスの質・量感が見事に表現され、木陰の雰囲気も良くできています。「ミスL.Lの肖像」(1864)は、「姉妹」よりも落ち着いたマチエールで仕上げられています。





    フランス象徴主義に属する、リュシアン・レヴィ=デュルメルは、幻想的で奇怪なパステル画で引き込まれます。魔女やメデューサといった題材を取り上げ、パステルを上手く用いて小さな画面に独特の雰囲気をつくっています。特に黒猫やトカゲ・ヘビが面白い「魔女」(下図)や、青が美しい「入り江(calanque)」が気に入りました。





    また、フランス象徴主義といえば、ルドンですが、今回は後期のパステル画ではない、黒の時代の油彩に注目してきました。ルドンは、多色を用いたパステル画を50歳も過ぎてから精力的に取り組み始めるのですが、この転換の以前は、まったくのリトグラフ作家でした。この画家のキャリアの大半を占める黒の時代に描かれた「色のある」貴重な油彩画が、10余点展示されています。どれも小さな、色を抑えた平べったい塗りの作品で、静物や風景が描かれています。これらの油彩画は、ルドンの「転換」の一要因として見られていますが、平べったい塗り方は除いて、その慎ましさからは、晩年のきらびやかな作風は見えてきませんでした。

    エドモン=フランソワ・アマン=ジャン(1860-1936)は、今回の見学で初めて注目した画家です。彼は、薔薇十字会のサロンに参加するなど象徴主義の流れに属する画家で、油彩とともにパステルで、耽美的な女性像を残しています。大原美術館のコレクション1号は彼の作品であったりと、日本には存命中に紹介されています。
    今回見たのは「Thadee Caroline Jacquetの肖像」です(下図のピクチュアは全体的に暗めで、実物はもっと色の感じる絵です)。椅子に座った女性を横から描いた構図で、背景処理も平面的な作品ですが、とてもしっかりとした構図・構成です。ロマン派美術館でジャン・ジャック・エネルの似たような構成の絵(「アルザスの女性」)を見ても思いましたが、このL字型の構図は単調というより、簡明かつ土台がしっかりとした構図であり、女性の横顔で作品の雰囲気をおおうのに良い効果を生んでいると思います。

    最後に、中階の装飾芸術エリアにある「祝典の間」について。前回行った時は、彫刻や装飾芸術は時間の都合で省いたのですが、「祝典の間」にはブーグローの「ヴィーナスの誕生」がありました。彫刻を並べた、装飾きらびやかな部屋に、イーゼルにのせてある形で展示されています。ブーグロー・ファンはお見逃しなく。



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