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  • モーリス・ユトリロ展 モンマルトルの詩情 三鷹市美術ギャラリー


    エコール・ド・パリの画家であり、波乱にとんだ女流画家シュザンヌ・ヴァラドンの息子である画家、モーリス・ユトリロの展覧会。
    ユトリロの作品は、見る機会があっても2、3作品ごとで、ほとんどまとまって見たことはありませんでした。
    それなので、これだけ作品があるのを見るのは驚きでした。作品は、日本、スイス、フランスなど各地から集められています。30点以上が日本初公開とのこと。三鷹市美術ギャラリーももっと宣伝した方が良かったのでは、と思いました。

    構成は、1910年台から晩年の作品まで、年代順に並べるという分かりやすいもの。ユトリロの場合、画題は変わらないし、年代ごとで様式が分かれるので、作品ごとの対比ができます。

    ユトリロのイメージとなる、モンマルトルの白壁の建物を白いトーンで描いた「白の時代」近辺の作品がつくりこんであって、やはり良い印象を持ちました。
    「ノルヴァン通り」(1910、名古屋市立美術館)は、建物の他、道路、空を含めて白の基調での統一感があり、色の表現、マチエールが面白いと思います。ノルヴァン通りを書いたものは、同じくらいの大きさ、構図のものがもう2枚ありましたが、この名古屋市立美術館のものが気に入りました。
    その他、壁のマチエールが良く表現されたものは、「サン=ヴァンサン通り」のシリーズです。1914年、1919年の作品がありましたが、ともに大胆な構図で、手前の画面を大きくしめる白壁が、朽ちている質感を良く出して描かれています。このような微妙な色の塗り重ねは見ていて飽きません。
    「郊外の通り」(1912)というスマートで綺麗な作品もありました。このような構図、色彩、タッチとも整理されたのは展覧会の中でも珍しかったと思います。

    1920年代からの色彩の時代に入ると、空や木、人物が画面に色彩を持って登場します。
    この時代の絵を見ると、白の時代が持っていた趣や作りこみ感が薄れていっているように思います。
    空は、青く描かれますが、水色に加え、ウルトラマリン系のブルーと、紫が混在し、奇妙なグラディエーションをつくっています。明らかに、現実世界の空を描いたものではないでしょう。
    そして、人物ですが、ほとんど棒人間のような描き方で、女性はひどく骨盤が広がって描かれています。デッサンの不確かさは、彼の主題のあり方からきているのかとも思いましたが、人物をこれだけ画面に配しているのに、そのかたちにあまり関心がいっていないのは少し疑問に思いました。女性の下半身を強調した描き方は、彼の信仰する母親とジャンヌ・ダルク以外の女性への嫌悪からきている、との解説もありました。
    色彩の時代は、ヴァリエーションとしては楽しめますが、壁を全面におした大胆な構図や、そこで表現された複雑な色使い、マチエールが見出しにくいのは、「白の時代」と比べて見劣りするところかもしれません。もちろん、彼の画家としての状況、環境の異常性もあるので、美術史的なアプローチをして見ると、より深く理解できるのだと思います。

    東京展はもう終わりですが、各地を巡回するようなので、これだけの作品を見るめったにないチャンスをいかすことをおすすめします。
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