芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • 大正シック 東京都庭園美術館


    ホノルル美術館の日本美術コレクションを集めての展覧会。
    今展は大正から昭和初期の日本美術を紹介するもので、庭園美術館という建物もあいまって、とても「大正シック」というにふさわしい展覧会だったと思います。
    出品作品もヴァラエティがあり、絵画では障屏画から木版画まで大小さまざまな作品、工芸でもテキスタイル、硝子、皿や籠などいろいろな種類のものが見られます。

    ここで見られる大正期の絵画は、江戸時代までの伝統が崩れ、西洋様式との混合がますます進み、画題もより身近なものへと変化しています。それによって、今まで描かれなかった、洋服やメカニカルなものが画面へと進出し、新奇な対照をつくっています。
    このような画題や様式の斬新さは、今見ても楽しめるものであり、日本史の資料集などでは紹介されない、当時の美術のリアリティが良く伝わってきます。

    東京展はもう終わりですが、これから各地を巡回するので、近代日本美術に興味がある人は、またとない機会なので行かれることをおすすめします。


    ■中村大三郎 「婦女」(上図)
    彼の作品は、少し見たことがあったのですが、この「婦女」は大作で、かなりの完成度を持った作品で、改めて彼の技量を知りました。仕上がりの綺麗さは文句のつけ所がありません。ソファの花の柄にしても、クッションの薄い絹のひだにしても、筆致が完成されていて近寄って見てもあまり意味のない感じです。着物の朱色の発色、グラディエーションの綺麗さも魅力です。下絵もあわせて展示しています。

    ■山川秀峰 「鷺娘」
    近代日本画壇の中で、もっとも僕が注目する画家。「鷺娘」は歌舞伎舞踊からの題材。さらりと書かれた絵ですが、女性のはかなさ、美しさが良く表現されていると思います。

    ■別役月乃 「七夕」
    北野恒富の弟子の女流画家。井戸に身をかがめる少女と、髪を洗う女性が俯瞰構図で描かれています。面白いのは、二人とも顔を見せず、表情をうかがい知ることができない人物構成。個人的には展覧会のなかでも一番の印象に残った作品です。黒髪の表現や、帯びの銀箔など、直接見て欲しい作品。

    ■華風 「浜辺の二少女」
    姓名など不詳の画家。輪郭のぼやけた優しい人物表現がなされていて、異彩を放つ作品。日本、西洋文化の混合・対比が見て取れ、名の残っていない画家の作品ですが、まさにこの展覧会にふさわしい作品かもしれません。

    ■柿内青葉 「美人」
    鏑木清方の弟子の女流画家。西洋のデッサンを用いて、日本女性が日本画で描かれています。このような人物に写実性を取り入れた日本画は、西洋と日本美術のただの折衷ともいえない、独特の魅力があり、僕が近代の日本画に注目しているところでもあります。もうひとつの出品作である「夏の夕べ」も、写実的な絵ですが、仕上げ方が異なり、両方を比較して見ると興味深いと思います。僕は図録を見て、同じ作者だと気付きました…。

    ■榎本千花俊 「銀嶺」(下図)
    鏑木清方の弟子。スキーウェアを着た女性を描いた作品。スキーウェアの微妙な色使い、サンバイザーや細やかな模様の手袋の表現、雪を連想させる背景の細かな銀箔など、これも直接見て楽しまなければいけない作品だと思います。



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