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    ルドン論 その③ ルドンの絵画におけるパステルの効果


    ルドン絵画とパステルとの関係を述べた一節をおまけとして載せます。このことは以前にも述べましたが、やはり「パステル」画家というとルドンが一番に想起されますね。同時代人としてドガもパステルを多用していますが、彼の場合、線描としてのパステルであり、パステルの多様的な使用、という点ではルドンが注目され、この意味でルドンは画材としてのパステルの可能性を大いに見せてくれています。
    ルドンの絵画におけるパステルの効果 
     
     ルドンがいろいろな色を取り上げ、それを花々や、もやの連続のような背景に散りばめていることに、彼の絵画の特異性があり、それが今日まで彼の絵についていわれる神秘性や幻想性の根源となっている。また花卉とともに主題となった神話世界の表現も、それを大いに助けている。しかし、それを大本から支えているのは、やはり彼が主要な画材として選択したパステルである。
     パステルは、顔料をメディウムで固めたものを、そのまま紙などにこすりつけ着色する画材である。それゆえに、色鮮やかな色彩が得られ、粉末をのばすことで均質に色が広がる。だが、定着力が弱く、フィクサチーフを使っても色を塗り重ねることには限度があり、さらにパレットの上で自在に混色できる画材でもない。このため、油彩のように、油絵具をオイルで溶きいろいろな濃さで使ったり、堅牢な絵肌をつくったり、絵具で下の色を覆い隠したりすることは難しい。また、描いたときに生じる粉末で画面が汚れ易く、扱いにも注意がいる。
     このように、パステルは、(質量感を表現する)画材としての発展性は、油絵具と比べ劣っているといえるだろう。しかし、ルドンは、このパステルの限定性ともいえる面を逆に魅力に転化している。つまり、上で見た、色の明度、彩度調整による効果が、パステルによって柔軟になされ、複雑なグラディエーションの効果が、画面上で柔らかく、幻想的に表わされているのである。また、パステルは、定着力が弱いため、重ね塗り(特に下の色を大きく隠蔽するような重ね塗り)が困難だが、しかしこのおかげで、下に塗った色を直に生かすような微妙な重ね塗りの効果を逆に得ることができる。しかも、粉末を薄くのばすことによって、下の色と良い具合で折り重なり、そのときルドンがいう、「灰色の変種として灰色がかった色調」が得られ易いといえる。さらに、油絵具のような直接的な混色が難しいため、色と色は、それぞれの層を通して、混色の効果が発揮される。このパステルの効果は、以下のルドン自身の記述がいうところの効果を生むものである。

     二つの色がある割合で並列するかが、重なり合うと(ある割合とは双方が占める広さの割合)織物の織り手あるいは画家がそこに置かなかった第三の色が、遠くから見るとわれわれの視覚に感じられる。この第三の色は、芸術家が意識的に行なった結果で、視覚上の混色である(あるいはある色調の他の色調への交互の動き)。

     このような「視覚上の混色」は、特にスーラやシニャックなどの油彩画家においては、点描という形で試行されるが、パステルではこれを、油彩の点描のようにある種の違和感を生じさせることなく、色彩の連続として得られるのである。
     ルドンは、パステルの薄くのばし透明感ある重ね塗りができるという技法を効果的に用い、さらに、その上からフェザリングなどの線描技法を使うことで、より一層の背景の微妙な調子を表現したり、花や人物を際立たせたりすることをしている。パステルの利点を最大限生かし、弱点を魅力に転化するルドンのパステル画は、彼の色彩感覚、主題と重なりあい、パステルの画材としての可能性を示している。
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