芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    『ギュスターヴ・クールベ ある画家の生涯』マリー・ルイーゼ・カシュニッツ


    『ギュスターヴ・クールベ ある画家の生涯』
    マリー・ルイーゼ・カシュニッツ 鈴木芳子訳
    エディションq 2002

    ドイツの女流作家カシュニッツによる、フランスの写実主義の大家、ギュスターヴ・クールベの評伝。

    カシュニッツは、「第二次大戦前夜パリでクールベ回顧展をみて彼の作品に魅了され」、「大戦下のフランクフルトで困難のなか資料収集にあたり、執筆に没頭した」ということで、本書の出版は1949年である。資料を明確に並べ客観的に考察する、美術史家のような語り口でなく、短い章を重ね、画家の内面の描写に力点を置く語り口で、物語のように読める評伝になっている。

    数々の伝説的なエピソードからは、カシュニッツのいうように、クールベの非常に大胆で、反抗的な生き方や、自信家ぶりがありありと伝わってくる。幾つのも大言壮語、独りよがりで怒りっぽい性格、国家権力に頑なにはむかう態度は、オルナンの自然と一緒に育った子どものままの姿であり、多くのスキャンダルを引き起こす種となるが、一本気で人間味ある気性、見事な写実主義絵画を産み出し続けるひたむさもあって、なかなか憎めないところである。
    特に、パリ万博の際、代表作の出品を断られ、これに対抗し個展を開いたという有名な出来事の前にやりとりされたクールベの手紙は面白い。
    クールベは事前に、ニューヴェルケル大臣の午餐会に招待され、パリ万博への出品を要請されたのだが、クールベはこの手紙に、「大臣は馬鹿のなかでもきわめつけの馬鹿者」であり、「奴は私を二万フランか三万フランで買収できると思い込んでいる、とんだお門違いだ」と、名誉ある話に意を解さず書き綴っている。そして参加を拒否し、大臣が「たいへん高慢な方ですね」というと、「私はフランスで最も高慢で思い上がった男なんです」と答え、何と、国が彼の作品である『水浴びをする女たち』の「法外な入場者数で取得した一万五千フラン」を返せ、と切り返したということだ。ことあることに有頂天になり、大言壮語する彼の性格も考慮しても、とても面白く読める。

    この個展開催後も、レジオン・ドヌール勲章を拒否したりと、彼の引き起こす事件は大きな問題となるが、画家としての力量をうかがわせるエピソードも数多くある。
    新古典主義の大画家アングルをして、「この青年は目そのもの」といわしめ、対するロマン主義を代表するドラクロワからも一目置かれた卓越した表現力はまさに新しい時代を切り開くものだったし、友人の一人が、クールベのキャンヴァスに描かれた「谷の彼方にある茶色のもの」は何か見てきてくれ、と彼に頼まれたが、それは紛れもなく柴の束であり、実際に見てくると確かに柴の束であった、という伝説的逸話を報告していることからもこれは明らかだろう。
    加えて、弟子たちの前では、「パレットナイフを用いて、わずか数分で異国の風景を描き上げる」という制作実演ショーができたというし、酒場ではビールの泡を用いて、机にあっという間に絵を描けた、という驚異的な技量を持っていた。さらに、レンブラントの絵を模写した際、それをオリジナルのかわりに24時間かけておいたが、誰も分からなかったらしい。

    本書は、クールベの生い立ちを、勉強嫌いで、絵で身を立てること決心した青年時代、やがてパトロン、ブリュイヤスとの絆を結び、一躍、時代の寵児となった成功の時代、そしてパリ・コミューンに参加し、スイスに逃れ失意のまま一生を終える亡命時代まで、画家の内面を中心に描きながら、同時に作品の解説や批評にまで及んでおり、クールベの画業全体を歯切れよく伝えている。とりわけ、最後の逮捕、亡命の時期は、成功期の姿の失せた悲痛なクールベの様子を迷いなく書き綴っており、それまでと一転、もの悲しさが残るところである。

    クールベの美術史的な研究書は他に読んでいないので、この本に現代ではどのような位置づけがなされているか分からないが、クールベに興味のあるものなら、さらっと読めてしまう内容で、画家の人生を振り返り、作品を見ていく上で格好の書であると思う。
    巻頭などにカラー図版などは残念ながらないので、一冊クールベの画集を持って見ると理解が違うだろう。また巻末には、詳細な年譜が付いており、これは本書の読解の助けになってくれる。
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    新古典主義新古典主義(しんこてんしゅぎ)とは、18世紀後半以降、フランスで見られた古代ギリシア・ローマへの回帰運動を指して使われるようになった言葉である。他のヨーロッパの国でも同様の傾向に対して使われる。.wikilis{font-size:10px;color:#666666;}Quotation
    2007/02/21(水) 16:30:31 | デザインの杜
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