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  • クリーブランド美術館展 女性美の肖像 森アーツセンターギャラリー


     アメリカ、オハイオ州にあるクリーブランド美術館の膨大な近代美術コレクションから厳選した約60作品を見せる展覧会。ほとんどが、日本初公開とのこと。
     5章構成で、おおまかに印象派以前、ポスト印象派、ロダンとロッソ、ピカソとその周辺、北ヨーロッパのモダニズムと分けられます。

     やはり自分の興味と重なるのは、印象派と彼らの先駆となった画家を挙げる1章です。
     入ってすぐのクールベの作品、「ロール・ボロー」。夕焼けの空を背景に黒衣の女性が物憂げにこちらを見つめる絵です。クールベの場合、風景画に対し人物画の場合、筆触を抑えた伝統的な肌のつくりをしていますが、この作品は、そのような人物画の中でも、古典主義的手法の強い絵だと思いました。人物の内面的な要素まで引き出すような、雰囲気のある良い絵です。
     ルノワールは、彼の最初期の肖像画と、1890年頃の作品「リンゴ売り」。前者の作品は、彼の画集があったら最初の数枚に挙げられるような作品ですが、やはりエッセンスは感じられるものの、固く、衣装などもより平面的です。解説が指摘するように、いろいろな箇所に応じて塗りが分けられているものの、それらが全体としてあまり調和を生んでいない感じに見受けられました。
     1章の中で、一番の輝きを見せるのが、アンリ・ファンタン=ラトゥール。彼の作品となると、ルーヴルにあるような完成度の高い集団肖像画が想起されますが、今展の作品は、女性の肖像画2点。特に女性の立像と花を描いた、「ルロール夫人」は章の中で一番魅かれました。背景は、ファンタン=ラトゥールに特徴的な、薄く筆触を重ねた、くすんだ焦げ茶系の地をつくっていて、そこに白いドレスの女性を配していますが、この人物は、陰影から、血管に至るまできちんと表現されており、白いドレスの質感も、かすれや盛り上げを使って、見事に表されています。画中の花も、彼が得意としていた画題だけに、それだけで作品になるような、完成されたタッチを持っています。
     また、ジェイムズ・ティソが1点(上図)あり、この作品は印刷で見たことがあっただけに、実物と対面できて良かったです。ティソはロンドンに渡り、その上流階級社会を描いていますが、作品はその優雅さを上手く伝えていますね。今展の「7月、肖像画の見本」は、四連作の中の一つという位置づけのようです。オルセーで見た作品よりも落ち着きのあるつくりで、建物、ソファ、クッション、ドレス、ほろ、などさまざまなものの質感が上手く表現された作品です。
     最後に、ベルト・モリゾの油彩が1点あり、これは久しぶりに見るような、完成度のある、というか「仕上げられた」モリゾの作品でした。草上にドレス姿の女性が休む、という構図は、ルノワールなど近親の画家の作品にも見られる構図。

     2章は印象派後のポスト印象派世代の作品が主です。ここでは、これから外れるような位置づけの、ルドン、セガンティーニが良かったです。
     ルドンはお馴染みの花の絵(下図)。油彩による作品です。イエロー、オーカー系の背景でまとめているというのが全体的な印象ですが、下部には青と赤が用いられており、背景にも3原色を用いています。
     セガンティーニですが、印象派的タッチや線描、点描などの要素をくむ、彼に特徴的なタッチが魅力の画家。「松の木」というタイトルで、松の木1本を中ほどまで描いた作品が来ていますが、一本の木に焦点をあてて、これほど豊かに画面を構成できるのは本当に素晴らしいです。木の表面などは、この彼のタッチが生かされ、柔らかに表現されています。

     その他、ロダンの彫刻を集めた章、スカンジナヴィアやドイツ、ロシアなど北方のヨーロッパ近代絵画を集めた章など、独立的に、趣向の変わった章を設けているのもアクセントになっていました。特に北ヨーロッパのモダニズム画家などは、まったく知らず、新鮮な印象を受けました。

     今回の展覧会では、クリーブランド美術館のほんの一部のコレクションの展示であり、もっと沢山見たい感が残りました。これからも、期待したいところです。また、キャプションは、油彩でもファブリックとカンヴァスというように画材を分けて書いています。両者はどのような違いなのでしょうか、少し気になりました。
     カタログは、論文や解説があまり充実しておらず、版も小さい。しかし値段は普通にする、ということであまり満足していません。もちろん、大きな巡回展というわけではないので納得はしますが、やはり図版は大きなものが良いですね。



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