芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • NHK日曜美術館30年展 東京藝術大学大学美術館


    NHK教育の老舗美術番組である、「日曜美術館」の30周年を記念しての展覧会。
    いや、日曜美術館が自分の生まれるはるか以前から続いていたというのは驚きました。個人的には、大きな展覧会に合わせたような企画のとき以外はあまり見ていないので、番組についての言及はできませんが、これからも続いて欲しいと思います。
    芸大美術館は、東山魁夷を見て以来、久しぶりに行きました。隣に、大学のミュージアムショップができていました。

    展覧会の構成は、番組でこれまで放送した作品から選んだものを、作品とVTRで振り返る、というものです。そういうことで、取り上げられた作家は多数で、かつ、ジャンルも絵画、工芸と多岐に渡ります。このような理由もあって、別段行かなくてもいいかな、と思っていましたが、上村松園先生とポーラ・コレクションで未見のルノワール、岐阜県美術館のルドン、が集められているということで行くことにした次第です。
    まず気になったのは、会期が短めであることと、巡回する関係と入れ替えの関係かと思いますが、図録に載っている作品で実際に展示してない作品が非常に多かったことです。
    各画家につき1作品というのは物足りない。このような作品数の問題に加え、趣味が限定されている方なので、思ったよりもとても早く終わってしまいました。以下、気になった作品を多少取り上げてみます。

    オディロン・ルドンは、岐阜県美術館から油彩一点と、リトグラフ2点が来ています。岐阜県美術館は群馬県立近代美術館を凌ぐ、日本屈指のルドン・コレクションがあるということなので、まとめて見られたら、と思っています。油彩「目を閉じて」はしばしば取り上げられる題材。油彩でも厚塗りの絵肌をつくって、多色を散りばめる大胆さが見て取れますが、顔の表現は繊細にできています。

    ルノワールは、ポーラ美術館に常設展時なされていなかった裸婦作品でしたが、水彩で塗ったような、とても淡く描かれた作品でした。VTRコーナーでも取り上げられているのだし、もっと完成度の高い作品を展示しても良かったでしょう。

    上村松園は、「花がたみ」一点(上図)。これは一枚で十分すぎるほどの完成度を放つ作品です。画題は能から取られているようですが、優美さや儚さといったものに加え、ある種の緊張が伝わってくる、中でも存在感ある作品です。いわずもがな、ですが、仕上がりはとても良くできていて、紅葉も葉一枚一枚に濃淡や色彩の調子をつけて描いています。
    上村松篁は松園の子で、初めて作品を見ました。花鳥図でしたが、平面的構図と色彩の配置で全体のバランスをつくるという意味で、装飾的な絵だと思いました。

    菱田春草「落葉」は木の幹が並ぶ絵ですが、構図・色彩ともにとてもまとまった作品だと思いました。一点の無駄もないような塗りをしていて、全体として堂々とした落ち着きを見せています。このように必然的な画面のつくりができたら、と思わせる素晴らしさを感じました。

    横山操はシベリア抑留の体験を持つ、昭和を代表する画家とのことで、初めて作品を見ました。富士山を好んで題材としたようで、今展にも「雪富士」という墨の濃淡で富士を描いた大作が来ています。まず見て、構図、山の切り取り方がダイナミックであり、これが前景の枯れた鋭い木々とあいまって、富士の荘厳さや冬山の厳しさを良く表現していると思いました。前景の木々は、強い黒の塊から生えてきているようで、後景との対比が強調されています。

    田村一村という人も始めて作品を見た画家です。奄美大島で活躍した画家とのことです。縦長の構図の連作のうち2点が来ていました。画面の構成が非常に凝っていて、自然の造形美を探究したというような作品です。特に「奄美の杜」は木の蔦・枝の絡みから、海の波まで、大胆な構図の下、非常に細やかな仕事がなされていて、好感を持ちました。

    今展には、多くの画家の作品を一度に見られるという、欲張り感やお得感があるのでしょうが、やはり、それらの連関は薄く、作品も限られてくるので、途切れ途切れで見ている感が否めません。もちろん、「そのような」展覧会の趣旨でやっていることなので、好悪はいえません。しかし、作品と関連のVTRを見て、その作品や画家への理解が深められる、一歩身近な存在になる、という見せ方は、やはり美術番組ならではだと思います。
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