芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • おやゆびひめ 絵/牧野鈴子


    おやゆび姫の物語をレコメンドしようというわけではない。いまどき、おやゆび姫を読んで感動しましたとはおさおさいえない。ここでは、その挿絵を手がける牧野鈴子の作品として取り上げている(というわけで、読書のカテゴリには入らないかもしれないが、本としての形態で出されているので、読書コーナーに入れてある)。絵本は子供が読み、見るものだが、絵画作品として見るならば、一作品丸々そのイラストレーターの作品世界をみられるわけなので、絵を描く、楽しむものにとってはとても参考になるものである。

    おやゆび姫は、ネット書店で検索すれば、優に100件はヒットするような作品である。ほとんどが絵本形式なのだろうから、それぞれに挿絵があることになる。この作品もその数ある中の一つである。もっとも有名なのは、いわさきちひろの絵だろうか。

    本との出会いは偶然なもので、病院の待合室で待たされ、何もすることがなかったので、それまで一度も見たことのなかった本棚を見てみたら、この本があったので手にとって見た次第である。
    すでに主題や物語があって、それを絵として表現するという場合、いかにその世界像や意味をヴィジュアルで表せるか、ということが当然ながら重要であり、それが見る側にとっても面白いところだが、この本に関していえば、その点が上手く、「正統に」表せている。例えば、既成概念を壊すことで、新しい世界観を提示することもできるが、この絵本では、おやゆび姫の世界、アンデルセン童話の世界の漠然としたイメージを、より開かせてくれるような調和と幻想性を示しているのである。見開きで、左に文、右に挿絵という構成をとっているが、挿絵だけではなく、文章の周囲を飾る絵の装飾もこれを助けている。

    最初は普通に紙に水彩で描いているのかと思ったが、良く見るとこれはおそらく、画布にジェッソをぬって、アクリルで描いているようである。画面は、彩り豊かに配色されているが、茶系の色で、画面を軽く汚したりして、雰囲気を持たせているところも良いと思った。ところどころ、下塗り(ジェッソ)がはがれているようなところも同じ効果を生んでいる。
    機会があれば、牧野鈴子さんの違う作品も見てみたいと思う。
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