芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • ウィーン美術アカデミー名品展 損保ジャパン東郷青児美術館


    歴史あるウィーン美術アカデミーから、17世紀バロック絵画をメインに、近代まで幅広く収蔵作品を紹介する展覧会。ウィーン美術アカデミーの巡回展は稀ということで、またもや会期ギリギリになってしまいましたが、この多忙な時期に行けて良かったです。しかし、毎年学祭の時期は風邪に罹るのが必定なようで、見るのがこれほどしんどかった展覧会もなかったのではと思います。胸が苦しく、呼吸困難で、ゼエゼエハアハアしながら休み休み回ってました。

    最初の方のフランドル絵画では、ベルギー王立美術館展の画家と重なる有名画家も多く、ルーベンス、ファン・ダイク、ヨルダーンスらの肖像画、神話画が見られます。
    ここでは、17世紀フランドルを代表する静物画家、ヤン・フェイトの作品にも注目したいです。他のフランドル画家に比べても、タッチによってものの質・量感を捉えようとする絵であり、大胆な構図もあいまって、よりダイナミックな絵になっていると思いました。

    さらに進むと、ムリーリョ「サイコロ遊びをする少年たち」(下図)、レンブラント「若い女性の肖像」(最上図)がありまず。
    ムリーリョは、神話・歴史画のほかに、この作品のように下流の生活風景を描いた作品を残していますが、悲愴さを漂わせることなく、逆にしたたかさや温かみが感じられる絵になっています。近代でいえば、フランソワ・ミレーのような柔らか味のあるタッチが魅力です。
    後者のレンブラントの肖像画は、彼が20代半ばの作品だそうですが、すでに顔の表現などは、この展覧会の作品を見渡しても、ずば抜けた完成度を見せています。

    静物画のセクションでは、ヤン・ブリューゲル以降のフランドルの伝統である、見事な花卉画が並びます。驚いたことに、ここにある、ラヘル・ライス、ヤコベア・マリア・ファン・ニッケレンはともに女流画家ということで、特に前者は美術史に名を残す数少ない女流画家の一人なようです。筆触というものが見当たらない完璧な絵肌をつくっていて、その技術に対してたじろきます。
    その他にも、海洋画、ロイスダールが見所の風景画、など画題によって作品がまとまっているセクションがあって、見比べが面白いです。

    近代絵画のセクションでは、ローベルト・ルスが断然興味をひきました。
    「ペンツィンガー・アウの早春」は、背の高い枯れ木の林道と、そこでの人々の生活を描く自然主義的大作。細かい木の枝を確かな線で1本1本描き込んでいる描写力には感嘆させられます。もう一作品の「アイゼネルツより」も、小品ですが細やかな仕事がなされていて、ルスの作品はラファエル前派周辺のあの描写力を彷彿とさせるものがあります。因みに、ルスの2作品の間に、クールベの作品が挟まれていましたが、この意図は何なのでしょうか。
    他には、ハンス・マカールトのニーベルングの指輪に取材した天井画の下絵が良かったです。細かに描き入れられた装飾と、大胆なタッチによる場面、人物描写が見事に調和していて、下絵、習作の部類のものですが異彩を放っていました。暗い色調の中に、金色の絵具も映えていました。

    鑑賞料500円ちょっとで、こんなにもクオリティの高い作品を沢山見ることができるとは予想していませんでした。東京展は日本で最後の巡回会場で、残り会期もこれを書いている時点でほとんど日にちがありませんが、特に17世紀絵画好きの方は、本当に見ておいて損なしの展覧会ですね。



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