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  • 「若冲と江戸絵画」展 東京国立博物館


    アメリカの日本美術収集家のジョー・プライス氏のコレクションによる展覧会。江戸絵画に絞られたコレクションは世界有数のもので、一時里帰りする名品を見るのに貴重な機会です。
    そういうことで、会場は午前中からとても混んでいました。僕の基準では絵画を見る環境ではないところまでいっていました。
    いつも思うのですが、こんなに絵に興味がある人がいたら、周りにもっと絵を描く人がいてもいいのでは、と何気に思ってしまいます。もちろん、音楽を聴く人=音楽をする人にならないのと同じで、そうならないのは分かりますが。
    僕としては久しぶりの日本画を見る機会でした。やはり行く動機となるのは、円山応挙、長沢蘆雪、酒井抱一あたりの絵です。彼らの描く動植物画は本当に見事です。人物画とは違って、動物、植物画は早くから写実の要素が発展してきて、特に江戸中期は素晴らしい技術を持った絵師が沢山出てきますね。

    構成は5部構成で、正統派絵画、京の画家、エキセントリック、江戸の画家、江戸琳派、という風になっています。

    ・正統派絵画は、御用絵師による形式を保った絵が中心。狩野元信、という絵がありましたが、やはり「伝」でした。元信は真作はとても少ないですからね。ここでは迫力のある、曽我二直庵「松鷹図」屏風が良かったです。
    ・京の画家は、円山応挙、長沢蘆雪と僕の見たかった章。応挙に関しては、彩色での動植物画はなかったのは残念。逆に蘆雪は沢山見るものがありました。蘆雪は、かなり前にリーフレットに載っていた絵を見て、興味をもち、名前を覚えていた画家です。今回、やっとまとまった作品を見る機会にありつけたわけです。蘆雪は、面白くディフォルメされた動物を描いていて、応挙の描く絵とは結構対照的です。いろいろな線が描ける絵師で、応挙の高弟というのが不思議なくらい奇抜さを感じます。特に「神仙亀図」という少ない筆で仕上げられた、勢いがある絵がある一方、写実的で、彩色見事な「牡丹孔雀図屏風」という応挙の模写も残しているのはびっくりでした。
    ・エキセントリックの章は伊藤若冲メイン。若冲というと、これでもかという艶やかさをもった鶏の絵がイメージされますが、しぶい水墨画も見れたのは収穫でした。特に、六曲一双の「鶴図屏風」(一部、下図)は、鶴をわずかな筆でかたちづくっていて、一筆で鶴の曲線を「決める」緊張感はすごい。絵をかじっていると「一発決め」がいかに難しいのはとても良く分かるので、それができている作品には大変魅かれます。本当に若冲だから、っていうのが分かります。そして大胆な筆さばきがある一方、細かく丁寧に羽や花が仕上げられているのも注目するところ。他はあまり見れませんでした。すごく混んでいる…。
    ・江戸の画家は、19世紀のさまざまな絵師の絵が集まっています。僕の聞いたことのない絵師がほとんどで、人物を題材にしたものが多かった章です。引目鉤鼻のひらべったい人物表現はあまり好きではないのでコメントは控えますが、例外として勝川春英「鍾馗図」は動的な構図が目立つ良い絵だと思いました。
    ・江戸琳派の章は、酒井抱一、とその弟子、鈴木基一がメイン。見所は酒井抱一の「十二か月花鳥」(一部、上図)です。この主題でかかれた12幅は宮内庁や出光美術館にもあります。花、草、日、虫といろいろ組み合わされていて、楽しめるシリーズ。抱一の植物は、細かな描写と滲みなどで表現された色の具合があり、とても綺麗です。もっと見たい感が残りました。

    また、この展覧会は所有者のプライス氏の意見が強く反映されていて、作品選びや構成に加え、照明まで氏のこだわりが示されています。最後の展示室では、屏風の左右に照明を置き、左右の光量をずらしたり、全体を明るくしたり暗くしたり、して光の当て方による雰囲気の違いを感じられるように展示されています。ガラスケースごしにずっと見るより、はるかに良い試みだと思いました。
    加えてオフィシャルサイトに加え、オフィシャルブログがあり、作品を大きな画像で見れるのが嬉しいです。行けない方には是非、ブログだけでもお奨めします。
    会期は短めですが、中心画家と周辺画家、両方の良い作品が見られる機会であって、江戸中期以降の絵に興味がある人は質、量とも満足だったと思います。




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    コメント
    この記事へのコメント
    ・・・!(その2)
    お世話になっております
    (久しぶりに拝見しておりまして 時間等 ズレのありますところご容赦ください)

    この展覧会のレヴューで 酒井抱一さんの作品を最初に掲げているものを 寡聞にして知りませんが・・・なんというか よいですね
    (青色を取り上げたというのが 個人的に嬉しい)

    自らも描く人が どのような絵の観方をするのか 興味のあるところです 
    今後も益々のご健筆を それでは
    2006/08/31(木) 18:32:33 | URL | TADDY K. #1xXJNkSU[ 編集]
    Merci.
    こんにちは。コメント有難うございます。

    やはり展覧会に行くと、その直後は表現媒体は違えど、創作意欲がかなり刺激されます。
    もちろん部活や趣味の範囲ですけれど。

    「若冲と江戸絵画」展は良い動植物画が沢山あり、特に日本画の岩絵具の発色の良さには魅かれます。青や緑は滲み具合もあいまって綺麗ですよね。
    また、大正・昭和期では、とりわけ竹内栖鳳の絵が好きです。

    9月からは西洋絵画展がいくつか始まるので楽しみです。
    2006/08/31(木) 21:32:46 | URL | webcat #-[ 編集]
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