芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
  • calendrier
  • 高島野十郎展 三鷹市美術ギャラリー


    福岡県出身の洋画家、高島野十郎(1890~1975)の没後30年を記念した展覧会。
    東大の農学部水産学科を卒業し、独学で画家になったそうです。評価が高まったのは、死後ということ。

    高島の題材は、花や果物などの静物、風景、肖像に分けられます。
    そして、描き方は対象の量質感を感じさせる、とても写実主義的なものです。葉、枝、髪の毛などには、かなり細かい仕事をしていて、とても絵に対して、直向きに、真摯に取り組んでいたのが感じられます。
    このような対象をそのままに写し取る、綿密な仕事は、画家のキャリア全体を見渡しても一貫しています。

    少し気になったのが、まずは、独特な線の歪み。明らかに、この曲がり方はおかしいと思うようなところがいくつか見受けられました。器や建物などの線が、何か歪んでいる。それも三つ陶器が並べられた絵は、三つの器とも左部分の線が同じような歪み方をしていて、不思議に思いました。おそらく、絵が写実的に描かれていて、なお且つ僕がそのような技術的な部分に目がいきがちだから、余計に気になるのだと思いますが。もちろん、絵の表現としての線の歪みは往々にして考えられます。
    また、後期に描かれているような一連の風景画は、大胆なタッチにたよることなく、とても細やかに仕上げられていて好感が持てますが、厳しくいうと、そのほとんどが、全体の色調を単一に保って、構図も冒険していない。一つ一つとして見ると文句なく良い絵だといえます。しかし、いくつも大人しい完成された小奇麗な絵、が並んでいると、少し他の趣向の絵も見たくなります。特に、画面を単一な色調に保つことは、それだけで絵に統一感が出ます。しかし、自己主張の弱い絵になってしまいやすい。
    描くものが、風景や静物といった動きや変化の乏しいものだからこそ、色やタッチ、構図のダイナミックな、またはキャンヴァスの大きい作品があったら、と思いました。いうまでもなく、画家の作品は今回見たものだけしか知らないので、その他にそういった作品を描いている可能性はあります(ヨーロッパで描かれた作品はタッチなどの点でこれに近いが、アトリエできちんと仕上げなかっただけの可能性もある)。
    それを考えても、今回展示されているものは、大きさは20号までくらいで、トーンを一定に保ち、構図もセンターに対象をもってくる絵が多くあるなという印象でした。付言すると、タッチを細かい筆で全体に均質的に入れると、描いているものがそれ以上に「線的」になってきてしまいます。こういった観点でみると、20代に描かれた自画像などは、後期の静物・風景画に比べれば荒削りかもしれませんが迫力があって良いと思いました。
    また場所が三鷹市美術ギャラリーということで、名前が出てきてしまいますが、この点、クールベは、同じ写実主義を志向していますが、タッチや構図などはとてもダイナミックですよね(同ギャラリーでは、この展覧会の前に「クールベ展」があったのです)。簡単に言えば、このクールベが持つようなエッセンスを持った高島野十郎の絵が見たいと思ったのです。高島の技術は、独学とは思えない素晴らしさがあるので。

    また、蝋燭や太陽、月などの光をテーマとしたある種、象徴的、観念的な連作もありました。こちらも独特な魅力を持っています。

    高島野十郎を知って実際に見たのはこの展覧会からでしたが、とても刺激を受けた展覧会でした。そして同じ週末にいったものの、「クールベ展」より人の入りが多く、人の興味をひく画家なんだなと思いました。つい、上の論評が批判的になっていしまったのも、それだけ彼の技術が見事で、僕の吸収したいものがあったから、だと思います。




    スポンサーサイト
    コメント
    この記事へのコメント
    コメントを投稿する
    URL:
    Comment:
    Pass:
    秘密: 管理者にだけ表示を許可する
     
    トラックバック
    この記事のトラックバックURL
    この記事へのトラックバック