芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    近代の美人画―その耽美と憂愁 うらわ美術館


    明治以降、主に大正、昭和初期の近代美人画約80点(培広庵コレクション)を集めての展覧会。
    僕にとって、うらわ美術館に行くのは初めてであり、日本画オンリーの展覧会を一人で見に行くのも初めてでした。
    あまり接点がない日本画ですが、この展覧会が、近代の日本画且つ、美人画という人物を扱ったものであるということで、行ってきました。

    コレクションは、鏑木清方、伊東深水、上村松園などの有名な作家の作品があり、それらを東京、上方、金沢など作家の出身地域に区切って展示しています。

    入ってすぐ、山川秀峰の「花簪の女」(上図)「阿倍野」が特に目を引きます。
    「花簪の女」は単純な構図ですが、とても仕上がりが綺麗な作品。目など、墨の濃淡で描かれていて繊細にできています。
    その他では、京都の画家・小西長廣(ある時期から画壇から姿を消し、没年も未詳とのこと。かなりの力量がある画家なのに何故?)、同じく京都の画家・勝田哲、大阪の女性画家・島成園、金沢の画家・紺谷光俊などの作品が良かったです。

    このようにきちんと多くの日本画を見ると、僕のような、ほとんど何も知らない人間にも、日本画の持つ問題、論点が少し見えてきます。

    まずは、明治以降の近代化による、「日本画の様式の揺れ」。
    鎖国時代とはうってかわって、明治以降には、海外の絵にアクセスできる環境、それを学ぶ環境、そして画家が海外へ行く環境もでき、洋画の勢力が増しますが、日本画壇に、こうした洋画の流れへの相互作用(取り入れ、反発など)が見られるということです。日本画、洋画を行き来した画家もそれなりにいることも見れば、そういった面はより明らかでしょう。
    今回の展覧会でも、『伝統的な「引目鉤鼻」の無表情な女性像』、から、『多少なりとも近代の写実を組み入れた女性像』のグラディエーションが存在することは一目瞭然です。
    そして、より重要なのは、そのグラディエーションが、画家たちの中に存在することはもちろん、一人の画家の中にも存在するということです。
    例えば、北野恒富の「舞妓」は明らかに周りの作品と仕上がりが異なるし、岡本神草、中村大三郎なども、出展されている作品ごとに作風、色の塗りが異なっています。極めて伝統的なもの、写実主義的なものが当然のように混在しています。
    さらに、前近代と近代との融合、あるいは使い分けを、特徴的に見て取れる作品もあります。
    紺谷光俊の「採果図」は、人物の顔や衣の表現こそ伝統的な風合いがありますが、幹や葉、ブドウ、手足、骨格などはきちんとした写実性、科学性が取り入れられています。
    このような、伝統性が重んじられる日本画というジャンルにおいて、近代以降、それを抜けて写実性などが加味されていく流れは、とても興味深く、そのような作品には魅かれます。近代日本画に絞った今展に行こうと思い立った理由もここにあります。

    次に、構図の問題があります。
    日本画の社会での位置づけにも関係しますが、縦長の掛け軸の形式になるとやはり、構図の限界が見て取れます。かなりの縦長の画面に効果的に対象を入れようとすると、人物はほぼ立像になるし、動的な姿勢は描けません。しかも、背景なども取捨選択せざるをえなく、形式化されてくることになります。無理を通そうとするほど、「切り取られた」「断片的」といった印象を免れません。
    その点、画面を大きく保て、縦横をある程度自由に決められる障屏画形式などの絵の方は、構図の面ではかなりの発展性を感じました。
    特に、今展では、小西長廣「踊妓」(下図、部分)は、人物は静的ではあるけれど、良い広がりを持った空間をつくっています。
    ここでいっていることは、当たり前であるけれど、日本画の様式、構図を考える上で外せない論点だと思います。それ故に、大阪の女性画家、島成園の「化粧」は、縦長の画面を効果的に使った作品として評価できます。女性の手前に鏡を置き、背景も部屋の空間が感じられ、女性のすらっとした感じや、空間の遠近感などを引き出しています。

    今回の展覧会は、改めて日本画の魅力を発見でき、良い機会でした。
    特に、ムサビやタマビの日本画を見る機会にも思っていましたが、色の発色は文句なしに綺麗ですね。色が塗られているというよりも、色が染められている、発色しているという感じで、陰影こそあまり表現されないけれど、肌や着物のしっとり、さらっとした質感にはとてもあっていると思いました。また、墨の、柔らか味のある黒の表現もとても気に入っています。
    これからも、ここで見られた画家を中心に注目していこうと思っています。


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