芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • 藤田嗣治展 東京国立近代美術館


    おそらく、日本人の近現代の画家でもっとも海外で有名であろう、藤田嗣治の作品を集めた展覧会。
    展覧会構成は、Ⅰエコール・ド・パリ時代、Ⅱ中南米、日本時代、Ⅲフランス時代という三部に分かれています。小セクションごとに壁の色や照明を変えて、展示場の雰囲気をつくっていたのも良かったです。

    Ⅰ部は、一番馴染みが深い、「乳白色」と表現される絵が占めます。
    「乳白色」という表現が的を本当に得ているのかは別として、白で強い均質な下地を作って、そこに細かな筆で輪郭線を入れる方法と、ほとんど数色で済まされ、布などの装飾が強調される世界は、仕上がりの印象が、近代の日本画などにも似て革新的だったのでしょうか。
    ともかく、ここら辺の作品は、早くも、絵画技法がかなり統一されている印象を受けます。
    布地は、しわまでも輪郭線で表され、あまり絵の具を含まないかすれた筆で、上から影がつけられています。この布の質感はあまり整理されていないのに対して、木の表現は、木目がきちんと丁寧に描かれ、より対象を捉えています。

    Ⅱ部は、パリを離れ、中南米を渡り描いた作品、再び日本に帰ってきてからの作品です。
    Ⅰ部で見られるような均質的な白い画面の絵ではなく、ここでは、色彩を多く用い、輪郭線を強調しない絵も見られます。でもどこか、落ち着かない感じを受けます。
    また、日本の情景を描いた作品でも、輪郭線を保ち、独特の揺れた線で描く画風をしながらも、色彩豊かになっている絵が見られて、作風の変化も感じ取れます。
    戦争画のセクションでは、画面を茶色っぽい灰色で統一し、そこに数多くの兵士が、表情、動きともにとてもダイナミックに描かれた、シンガポールやアッツ島の戦争画が見られます。藤田の力量が見られる絵だと思います。




    Ⅲ部では、日本を離れ、パリで制作をした作品のセクションです。
    ここでは、子供を主題とする絵、宗教画が多くを占めています。
    子供を描いた絵は、絵本に登場するようなかわいらしい感じの子供を、スマートな線で描いています。どれも素晴らしく、個人的にはこのテーマの作品が一番気に入りました。
    また、これも絵本にあるような、と呼べる、動物を擬人化した作品も見られます。かなりコミカルで、画家のイマジネーションを楽しめます。
    宗教画は、晩年にカトリックに改宗したのを機に、多く描き出されたもの。正直、こちらは見ていてあまり気持ちいい感じはしませんでした。

    この展覧会は、藤田嗣治の作品を年代順、テーマごとに配置する構成で、とても主題や絵画技法の変遷を追うのに分かりやすいものだと思いました。あまり藤田の作品を見たことがなく、特別な肩入れもないので、中立的な立場で、僕なりに、藤田の絵画技術などを見て、比較できたと思います。
    個人的には、装飾的な、「乳白色」のエコール・ド・パリ時代の作品より、後期の子供、擬人化された動物を扱った作品に魅かれました。この作品の方が、多色を用いて、線がとても綺麗に描かれていて、なお且つ、より動的な面白い構図が多いからです。
    また、これも個人的なことですが、僕も猫が好きで、猫を扱った作品を描いてきたので、同じく猫を頻繁に登場させる藤田には共感を覚えます。特に「猫」(下図)と題された、多くの猫が乱舞する絵は、一瞬の動きをダイナミックに捉え、とても面白く仕上がっていて、良かったです。


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