芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • プラド美術館展 東京都美術館


    プラド美術館から、スペイン宮廷絵画、イタリアルネサンス絵画など、16-17世紀絵画を集めての展覧会。
    会場は、結構混んでいて、十分に見られなかった感は否めませんが、久しぶりのルネサンス絵画ということもあって新鮮でした。

    一章はスペイン絵画です。エル・グレコ、ベラスケス、ムリーリョなどをメインに、宗教画、肖像画以外に、花卉画などの静物画が目を引きます。
    まず、フランシスコ・リバルタ「聖ベルナルドゥスを抱擁するキリスト」の布や肌の質感のつくり方は良かったです。幻視を極めてリアルに、神々しく描いた作品。画家は、カタログでは、「17世紀初頭のバレンシア派の最も重要な画家」と紹介されています
    それから、ジュゼッペ・デ・リベーラの三作品が続きます。最初の二作品「聖アンデレ」「盲目の彫刻家」は、共に老人を描いた作品ですが、肌の質感などは、とても良く表現できていて、リバルタと比べてみても面白いです。また、カラヴァッジョから影響を受けているということもあって、光の表現も上手いです。
    フアン・バウティスタ・マルティネス・デル・マーソのマルガリータ王女を描いた作品は、周りの作品とは趣が違っていて、はっとさせられます。描いている人物、調度品の類は17世紀な感じですが、ベラスケス寄りな絵画技法は、より洗練されている印象を受けます。後でカタログを見て、これが18世紀の作品だとされていた経歴を知りましたが、確かに印象のレヴェルでは誤っても仕方ないと僕も思いました。
    一章を締めるのが、ムリーリョ。「エル・エスコリアルの無原罪の御宿り」(上図)は、このセクションの一枚といえます。マリアに焦点化される無駄を描かない構図、マリアの古典化されない表情、背景の柔らかい質感をつくるタッチなど目を引く要素がいっぱいです。下方の天使が持つ草花にも、きちんと必要な筆を配っていて、流石の趣があります。
    ムリーリョは、ほとんど最近注目し始めた画家で、ルーヴルでは、このような類の作品を見ていないように記憶しているので、ムリーリョに対してさらに関心が深まりました。ここでも「無原罪~」「貝殻の子供たち」と「聖パウロの改宗」を比較しても、やはり主題による絵画技法の使い分けが感じられて、それが画家の幅を広げていると思いました。



    二章は、イタリア絵画です。この章は、ティツィアーノに集約されるといっても良いセクション。
    まず、展覧会広告にも大きく使われている「アモールと音楽にくつろぐヴィーナス」。近くで実際に見ると、ティツィアーノの繊細なタッチとは違った感じで、特に人物以外は大胆な、大まかなタッチの作品です。
    次に「サロメ」(上図)。ティツィアーノもサロメを描いているのだと初めて知りましたが、とても秀逸な作品で、この展覧会の中でも一番魅かれた作品です。サロメだけを描き、彼女がヨハネの首の載った銀皿を掲げ、振り返るようなポーズでこちらを見ている構図です。この緊張感を引き出す構図と、かすれたような繊細なタッチで、やわらかな光を表現する色彩は全く以って感嘆です。カタログの方にも、この構図の他作品への大きな影響が指摘されています。
    その他では、灰色のくすんだトーンの中で写実的に人物を描く、ベルナルド・カヴァッリーノ「聖ステファヌスの殉教」、光の表現が見事で、迫力のある花卉画である、アンドレア・ベルヴェレーデの作品が良かったです。

    三章は、フランドル、フランス絵画です。
    ルーベンスのダイナミックな作品、ファン・ダイクの上質な肖像画がメインでしょう。いつ見ても、ファン・ダイクの完成度の高さには感心です。

    四章は、18世紀ロココ美術です。
    ルイス・メレンデスのボデゴン(スペインでの静物画、厨房画)のシリーズが見所でしょう。ボデゴンまたは、その他の花卉画は、各章に作品があり、それぞれの技術を見ることができる機会にもなっていると思います。
    メレンデスの果物は、少しハイライトを強調しすぎる感もありますが、逆に水差しなどは、陶器の質感ばっちりでかなりリアルです。
    その他では、シャルル=ジョゼフ・フリパールのテーブルの原画のための作品が興味深かったです。
    ブーシェとか直なのはありましたが、全体として、あまりロココっぽい感じはなかったセクションでした。

    終章はゴヤオンリー。
    カルロス四世の肖像は、紅い服と緑の背景が対比されていて、中でも完成度が高い作品です。また「魔女の飛翔」という奇妙な作品もありました。

    2002年に開かれた「プラド美術館展」には行けなかったので、プラドの作品に触れる機会として良かったです。特にムリーリョ、ティツィアーノの作品には良い刺激を受けました。東京展は6月終わりまで、大阪展もその後三ヶ月開かれるというので、多くの人が来場し、有意義な時間を過ごされることと思います。
    最後に、今展のカタログは、論文、解説、コラムが多く載せられていて、時代、作品背景などを知るのにとてもためになります。お奨めしておきます。
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