芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    ホイッスラー展 横浜美術館


    19世紀イギリスの画家、ジェームズ・マクニール・ホイッスラー(1834-1903)の回顧展です。本展は、「日本では27年ぶり、世界でも20年ぶりとなるホイッスラー回顧展」になるとのことですが、日本ではホイッスラーの作品を見る機会はかなり稀であったことを考えると、メモリアルかつ重要な企画展と思います。
    また、ホイッスラーはエッティングも油彩に匹敵するほどの数を制作していますが、海外の美術館も含め、私個人、まとまった作品を見たことがありません。これまで紹介の進んでいなかった版画画家としてのホイッスラーを捉えるうえでも特に貴重な企画展となっています。

    ホイッスラーの芸術論として、彼は、絵画作品の価値=美の独立性をうたっており、主題と構図や色彩の美しさとは相互に関わりのないもので、芸術的感覚はそれ自体として評価されるべきことを主張しています。つまり、構図や色彩の調和は、人物や場面の来歴などの雑多なコンテクストとは切り離して価値づけられるものである、ということです。
    現代であれば広く受け入れられている視角ですが、19世紀後半の画壇やラスキンとの裁判を見るに、当時としてはまだ新奇な考えであったのかと思います。20世紀にも入ると、抽象絵画を筆頭にホイッスラーの主張が先鋭化した絵画様式・表現方法がいろいろと出てきますね。
    このような開かれた思想のもとに、彼の「ノクターン」や「ハーモニー」と名づけられた作品群があるわけで、わたしたち鑑賞者はまずもってこの彼の考えを知り、作品を見、楽しむことが大切であると思います。100年以上前の絵画ですが、宗教画や歴史画を見る際のお勉強は抜きにして、誰もが同じ鑑賞者の資格でもって自由に作品を楽しめる、ということです。

    展覧会の中身は、こうした彼の芸術論を感じられるものとなっていて、特に最初の人物主題の油彩画があつまったセクションやピーコックルームに関する展示は感嘆ものでした。
    油彩画は、いくつかの大作・代表作がきていましたが、どれも色調、色の配置、画面構成が練られていていました。構図や色彩の全体的なハーモニーを追及していくと、細部の描き込みや形が捨象されていく(つまり、対象の形象やその細部の線的表現が二次的なものになっていく)のではないか、とも思われるのですが、デッサンの精確性や全体のバランスをとった描き込みは失われることなく、主題となる対象が表現されています。ただし、彼の表現が色彩により重要度を置くと、幻想的な、抽象画とも親和性を持った絵画が仕上がってくるのだと感じました。

    ホイッスラーの芸術論とそれが形となった絵画や総合芸術(ピーコックルーム)、さらに紹介の進んでいなかったエッチング等、回顧展にふさわしくいろいろな角度でホイッスラーの芸術にアプローチできる展覧会だと感じました。
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