芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • ウィリアム・モリス 美しい暮らし 府中市美術館


    ウィリアム・モリスのヴァラエティに富んだアートワークを一望できる企画展です。
    この機会に、初めて府中市美術館に行きました。アクセスしにくいのが難点ですが、いろいろと開かれた企画をしているのが分かって好感が持てました。東京の市区でも文化政策に対する温度差は結構あります。

    さて本展は、テキスタイル、ステンドグラス、工芸(家具類)を中心にセクションごとに展示していました。
    この中でも、テキスタイルデザインの展示が充実しており、モリスがデザインや染め・織りの技術などに腐心していたことが示されていました。特に、インディゴ染めには骨を折ったそうで、飽くなき実験を繰り返し、モリスの手はいつも青く染まっていた、というようなエピソードも紹介されていました。「いちご泥棒」も、インディゴ染めの抜染(インディゴに染まらない白い部分を残して、そこをまた別の色で染める)で仕上げられています。
    テキスタイルの展示は、技法やパターンの説明はもちろん、パターンが大きな生地でみられるよう、展示方法も一部工夫されており、大変良かったと思います。
    ステンドグラスの展示は、教会のステンドグラス作品を縮小したものが一室に展示されていましたが、それらを比較しながら総覧できるような展示になっており、こちらも内容良くまとまっていました。

    最後のセクションでは、ジョン・ヘンリー・ダール、チャールズ・ヴォイジーらの周辺作家のデザインも展示されており、また違った角度から、アーツアンドクラフツ運動の広がりや、当時のデザインの流れなどを見ることができます。モリス周辺というと、バーン=ジョーンズなどのビッグネームとの関係は良く説明されていますが、このような弟子、同世代作家のデザインなどはあまり見る機会がないので、さらに見てみたいと思いました。

    さらっと見られてしまう展示量だと思いますが、内容のつまった充実度の高い企画展です。
    カタログも販売されています。

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    ターナー展 東京都美術館


    イギリスを代表する巨匠、ジョゼフ・マロード・ウィリアム・ターナーの回顧展です。
    ターナーの屈指のコレクションを持つテート美術館所蔵作品から構成されており、とても見ごたえがあり、充実した内容の展覧会になっています。

    ターナー関連の展覧会では、最近では、渋谷文化村で、英国水彩画展と銘打ってマンチェスター大学ウィットワース美術館の水彩画コレクションを紹介する企画展がありました。
    今回の個展では、水彩画はもちろん、迫力のある油彩大作が何作品も展示されており、水彩画展とはかなり趣の異なった印象を受けました。
    ターナーの作品は、最近までほとんどまとまって見る機会がなかったので、今展はターナーの画業の全体像を探るのにはとても良い機会でした。

    展覧会は、年代、画題ごとに細かく区切って構成されていました。
    まったく大雑把感や偏りがなく、非常に良く練られており、「大回顧展」というだけの豪華さ、充実ぶりでした。

    さまざまな場所の風景画を見ると、ヨーロッパ各地を周り、作品に仕上げていることが分かりますが、風景を単に見た通り、スケッチ通りに描くのではなく、構図をドラマティックに大胆に構成し、鑑賞者を絵に引き込んでいることに彼の技量が現われています。それは、臨場感であったり、自然への畏怖や感嘆を刺激し、観る者の印象に強く残るのです。
    さらに、ウィットワース美術館所蔵の水彩画展でも見ましたが、ターナーは色彩への探求心が強く、色彩のタッチや効果を飽くことなく追求していることが習作、完成作から伝わってきます。この一つの展覧会を通しても、幅広いヴァリエーションがあります。このような、光や大気の効果に執着し、それをさまざまに操るあたりは、モネの連作などを想起させます。
    大画面の中に、構図と色彩が見事に融合して、心情的に鑑賞者に強く訴えかけるターナーの技術は、非常に素晴らしく、まさに巨匠というにふさわしいと感じさせられました。

    展覧会は、作品数もありますが、迫力のあり、興味のひかれる作品が多いので、じっくりと鑑賞できる時間をとっていったほうが良いと思います。
    雨天&平日の比較的空いていると思われるところで行きましたが、15時から閉館までの2時間半では少し足りなかった感がありました(いつも休み休み鑑賞しているせいもあります)。
    東京展のあとは、来年1月から神戸に巡回します。