芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    没後70年 竹内栖鳳 山種美術館


    ※展覧会は終了しています。

    近代日本画の巨匠、竹内栖鳳の回顧展です。
    今年(2012年)は竹内栖鳳の没後70年にあたるそうで、これを記念しての企画展になっています。展示作品は、山種美術館のものがメインとなっていて、同館の所蔵作品の充実ぶりを改めて実感します。いくつかのセクションに分けて、初期作品から晩年作品まで、小品から大作まで、と栖鳳の画業をいろいろな角度から俯瞰することができます。

    展覧会は前期・後期と展示替えを行っています。
    やはり、あの展示環境では展示する作品数にも限界があるのは明らかなので、これは仕方ないとは思いますが、個人的には、展示スペースがあるところで展示替えを行わないで一度に見せてほしいと思ってしまいますね…
    サイズはA5と小判になっていますが、図録も制作・販売されています。

    栖鳳は、素描を重んじて、それを毎日繰り返したそうで、素描や対象の観察の重要さを説いています。このために、家では、実際に多くの動物を飼育していており、「班猫」のモデルの猫を制作のために買主から譲り受けたという有名なエピソードも残っています。こうした栖鳳の態度や言動からは、作品制作にかける並々ならぬ意気込みを感じます。確かに、対象の観察が入念になされていることから、動物のリアルな表現が、例えば毛並みなどの質感のみならず、動き、しぐさ、表情といったものにまで感じられるのです。加えて、このような裏付けがあるからこそ、大胆な描き込みの焦点化や省略をしても、それが却って作品の構成に資する効果を持つレベルにも達しています。特に、二頭の虎を描いた「双雄」では、虎の顔以外などは、描き込み、塗り込みが抑えられていますが、これが作品の良いバランスを保っていて、虎の存在感を高めています。さらに対象は、勢いある筆さばきや、動態的な構図でもって表現されており、鑑賞者は目の前にリアルな虎やそれを取り巻く蘇鉄を描くことができます。こうした大胆な画面処理や、練られた構成を直に体感すると、やはりその下の観察や素描の繰り返し・積み重ねの確かさを納得してしまいます。

    東の大観、西の栖鳳といわれながらも栖鳳の認知、評価は上がっていないことが図録でも解説されていますが、雑誌記事によると2013年には国立近代美術館、京都市美術館で回顧展が催されるそうです。注目が集まって、いろいろな作品を見られるようになるといいですね。
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    メトロポリタン美術館展 東京都美術館


    ニューヨーク、メトロポリタン美術館のコレクション展です。
    「絵画54点、彫刻・工芸66点、写真13点」が展示されています。こうして数字を見るまでもなく、会場では工芸作品の存在感が光っており、美術館の収蔵する多種多様なコレクションを見ることができる機会になっています。自分のように絵画を中心に見る人にとっては、各時代から抜粋された傑作をつないで鑑賞していく感じになると思います。以下、数点になりますが感想を残しておきます。

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    レンブラントのフローラは、女神フローラを描いた(ルネサンス期などの)他作品に比べると簡素で、飾り気がなく現実的です。これは、亡き妻へのサスキアによせて描かれているためで、レンブラントには同じような作例があります。モチーフに合わせて、光の表現は穏やかであり、構成も余計なものを排している感じで、こういったところから作品の気品高さを読み取ることができると思います。

    ターナーのヴェネツィアの風景画は、筆や色彩の勢いがあり、遠近の強調された構図で、ドラマチックな作品に仕上がっています。空と海の青の色味が異なり(ウルトラマリン系の青とグリーン味のある青)、雲が強いハイライトで塗り重ねられているので、色的にはあまりまとまっている感は受けませんが、それが適度な緊張感や主張を生んでいる印象を持ちました。

    アルバート・ビアスタットの風景画は、とても細密でリアルに仕上げられています。ビアスタットはドイツ出身のアメリカの画家であり、ヨセミテ渓谷は彼がひとつのテーマとして取り組んだ題材のようです。岩肌や大気の質感表現、湖面の反射、大気遠近の表現など、絵の中にいくつも見るべきものがあり、鑑賞者を飽きさせない作品だと思います。

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    展覧会そのものもヴァラエティがありましたが、グッズショップも負けないくらいの内容になっていました。
    自分は、保存用に絵葉書を買ったくらいですが、トートバッグなどおしゃれなものもいくつかありました。
    巨匠たちの英国水彩画展 Bunkamura


    マンチェスター大学ウィットワース美術館所蔵の水彩画を紹介し、イギリスの水彩画の伝統、系譜を提示する展覧会です。
    ウィットワース美術館の成り立ち、英国の水彩画の位置付けなどはカタログ小論に詳しいですが、水彩画は絵画のジャンルとしては低く見られており、水彩画家による協会の設立などを通して英国において独自の発達を遂げたということです。私的な習作としてあった水彩画は、ターナーの水彩画を頂点とする黄金期を経て一つの絵画ジャンルとして確立し、ラファエル前派らにも受け継がれていきます。

    展覧会は英国の水彩画の歴史、画題に対応しており、18世紀の貴族階級のグランド・ツアーへの応答、ターナー、ヴィクトリア朝時代の水彩画などのセクションに分かれています。
    小品も含まれているとはいえ、150点を超える作品が集められており、ヴォリューム感、見応え十分な内容になっています。ある程度見どころをピックアップしていかないと疲れてしまうような印象で、壁が額で埋まっている感がありました。

    18世紀の風景画は、ある程度様式化した構図、制作過程があることが見てとれます。鉛筆やインクなどで線が引かれ、色数を絞った水彩で描かれており、細部の表現、大気遠近表現などに優れた作品が多いです。初期ターナーも、後期作品の自由度とは違って、このような厳格で緻密な水彩画を残していますね。
    マイケル・アンジェロ・ルーカー、トマス・ガーティン(上図)、フランシス・ニコルソン、などデッサンと水彩が非常にマッチした気品ある作品が集まっています。

    ターナーのセクションでは、初期作品とは趣が異なり、幻想的、印象的な中後期作品が並びます。色彩の変化があり、とても自由に水彩のタッチが運ばれています。動態的で、感情に訴えかけてくるものが感じられます。

    ラファエル前派、ヴィクトリア朝時代の水彩画は、それまでの様式化されたものからの変化が見てとれ、画題、色彩、塗りなど画家の関心がより表されている印象を受けます。これら19世紀半ば以降の作品では、水彩が建物や自然の陰影表現の枠から出て、ひとつの選択しうる画材として存在感を得ています。
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