芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • イリヤ・レーピン展 Bunkamura


    ロシアの国民的画家、イリヤ・レーピンの回顧展です。
    2009年に同じく文化村で開催された「忘れえぬロシア展」に続き、モスクワのトレチャコフ美術館のコレクションで構成されています。

    レーピンの作品は、トレチャコフ美術館に行った時にもいくつか見てきているわけなんですが、今回は、常設展示していない作品、デッサン類なども多く公開されるため、本当に待ちに待った企画展でした。

    内容構成は、一流の肖像画家としてのレーピンの魅力を存分に呈示するものとなっており、最初から最後まで目が離せないような充実ぶりです。
    ムソルグスキー、キュイ、クラムスコイ、トルストイなどロシア史を飾る大物の肖像や、家族の肖像、自画像など、どれも描かれた人物の雰囲気、たたずまいまでを伝えるかのような作品ばかりです。
    また、歴史画でも、特にその人物表現は際立っており、「皇女ソフィア」「ゴーゴリの自殺」などでも鬼気迫るものを感じさせる圧倒的な表現・構成をしています。一家の主人の帰還場面を描いた「思いがけなく」(上図)なども、表情や人物構成などがとても良く練られています。
    デッサン類も非常に洗練されたものであるので、これも見る価値があります。

    展覧会は、東京展を皮切りに、静岡・兵庫・神奈川と各地を巡回しますが、前期/後期で展示替えがあります。見どころとなる油絵の肖像画などは展示替えはないのですが、デッサン・水彩類などは展示替えがあります。
    機会が設けられたら、最終の会場となる神奈川県立美術館・葉山に行ってみたいと考えています。

    カタログは資料的な価値はありますが、いかんせん図像の解像度、色調再現などが悪いのが残念。デッサンにしても、線がつぶれぎみになってしまって、もうちょっと、といいたくなるほど。やはり、直接見て感動を胸に刻んでおくよりかはないです。
    ハガキなどもほとんど絵を引き延ばしてしまっており、こういうのはいつもよろしくないと感じてしまいます。

    今年の展覧会では、レーピン展は最上のものだと思いました。日本では、あまりレーピンというか、ロシア美術は浸透していませんが、評価が高まればいいかなと思います。
    それにしても、文化村はセガンティーニ展など、良い企画展が多いですね。
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    映画 るろうに剣心
    映画版の「るろうに剣心」を見てきたので、さらっと感想を残しておきます。
    以下、内容にも若干触れています。

    ++

    おおかたのレビューにある通り、アクションはとても見応えのある仕上がりになっていると思いました。「一対多数の切り合い」の場面が陳腐化することなく、「飛天御剣流」を映像化することは成功していたと思います。
    さらに、鳥羽伏見の戦場、神谷道場、観柳邸の舞台表現などもリアリティがありました。

    個人的に難点と感じたのが、内容の詰め込み過ぎ、そこからくる流れの説得力・了解感の弱さ、です。
    確かに、主要登場人物を網羅した方がるろ剣という気がするし、受けがいいとは思うのですが、総花的にキャラを散りばめて、小出しのエピソードを積載オーバーするのは、映画という媒体を考えると良かったのか?
    あくまで個人的な感想ですが、左之や弥彦の中途半端感、斎藤一の凡人感、刃衛と観柳の関係性の薄さ、観柳の取り巻きの不自然さ(エンディングロールでやっと理由が分かる)などなど、粗が目立つのが否めません。例えば、メインキャラの薫にしても、白昼にあんなに軽く、木刀で剣心に切りかかってくるのは不自然だし、ラストのセリフにしても原作からいいように抜粋した感がぬぐえない(あのセリフが原作で活きているのは、京都編を経たからですし)。
    主人公・剣心の不殺の誓い、贖罪というテーマ(「剣心」として戦う理由)をもっと心理描写も含めて見せて、統一的な流れをつくって欲しかったかなとは思います。加えて、恵と刃衛が物語進行に強く関わるキャラとなるならば、もっとこの二人についても心理・背景描写を増やすべきだったと思います。刃衛はもっと格好良く、存在感あるキャラにできたはずなのに、結局、原作における、幕末からの因縁、刃衛がいう人斬りの宿命、黒笠事件の持つ闇などはあらかた捨象されてしまい、不平士族崩れになってしまっています。惠にしても、原作での罪の罰の意識、葛藤、剣心との出会いによる再出発、を多少なりとも描いていれば良かった。


    この映画化が発表された時は、正直、そこそこのものとしてまとまっていて、黒歴史にならなければいいな、くらいにしか思っていませんでしたが、予想を上回るヒットにびっくりです。
    これを機に、るろ剣ルネサンスが着実なものになれば、一ファンとしてはうれしいですね。

    興行成績、世界での公開など実績・評価を上げており、まだまだストーリーの広げようは十分なので、次回作があるのではと予想・期待しています。

    ちひろと世界の絵本画家たち 損保ジャパン東郷青児美術館


    ※展覧会は前月で終了しています。

    いわさきちひろの絵本原画と、世界各国の絵本画家の原画を展示する企画展です。
    いわさきちひろは、子供のころから馴染はありましたが、表現技法などについても結構前から注目していて、是非原画を直に見てみたいと思っていました。
    今回、まじかに表現のテクニック、線描のスマートさなどを確認してくることができて有意義でした。

    今回の展覧会を通じて、印刷でちひろの絵を見ているのでは、余白、紙質・色、構成が、分からない/いじられているため、その魅力が不十分にしか伝わっていなかったということが非常に良く分かりました。
    絵本やポスター、はがきなどは、原画の一部をけずったり、余白を伸ばしたりしており(そして対象以外を白くとばしている)、こうした改変によってオリジナルの持つ良さ・意味合いが変わってしまっているのです。
    オリジナルは、当然ながら紙にそのまま着色しており、紙の質感、余白の持つ緊張感、にじみの微妙な発色など印刷では伝わってこない良さが、ちひろ絵の魅力をさらに増しています。

    世界の絵本原画の展示もかなり幅広く、文化などの違いも楽しめ面白かったです。ここでも「不思議の国のアリス」挿絵で取り上げたことのあるオクセンバリーのものもあり、やはり上手いなあと思いました。
    全体としては、もっとちひろ原画に絞って量を見たかったので、いつかちひろ美術館などに行けるといいなと思ってます。