芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    フェルメール<地理学者>とオランダフランドル絵画展 Bunkamura


    ドイツのシュテーデル美術館所蔵の絵画展であり、昨今大きな注目を浴びるフェルメールの作品が展覧会の核となっています。
    シュテーデル美術館の成り立ち・来歴は図録などに詳しく解説がありますが、コレクションの母体をつくったシュテーデル、その後を継いだものたちによってかなりの質をもったフランドル絵画が収集されてきたことは、今回展示されている90点あまりの作品を見ても一目瞭然です。ということで、フェルメールの「地理学者」が主役の展覧会ではありましたが、その他の作品も決して見劣りはしないような、素晴らしいフランドル絵画展でありました。
    東京展はすでに終了して会場は愛知に移っています。やはりフェルメールの名があると集客力になるようで、近年のBunkamiraの展覧会では一番の混雑を見せていました。

    主題ごとにセクションが分けられており、Ⅰ歴史画・寓意画、Ⅱ肖像画、Ⅲ風俗画・室内画、Ⅳ風景画、Ⅴ静物画といった順で構成されています。
    Ⅰ歴史画では、ブリューゲル父子、ルーベンス、レンブラントと巨匠の作品が見られます。中でも、ダヴィデ王を描いたレンブラントの細やかで静謐さを感じる絵画が目を引きます。また個人的には、四匹のネズミがダンスをしている作品(フェルディナント・ファン・ケッセルに帰属)が気に入り葉書まで買ってしまいました。こういった動物を擬人化した絵のジャンルはフランドル絵画にはありますが、この絵はリアルとコミカルのバランスがとれた表現力の高い作品だなと思いました。より大きな作品の切り取られた一片と図録に書いてありましたが、全体像を見れたら!と思わせます。
    Ⅱはフランス・ハルスの一対の肖像画が見どころと思います。この画家の人物表現にはいつも驚かされます。筆の入れ方、捌き方が本当に上手いんですよね。ただの荒っぽさ、雑さとは全然違う。遠目でみても近くで見てもそれが良く分かります。実物を見て楽しまなくてはならない作品だと思います。
    Ⅴでは、かなりのクオリティをもった静物画がいくつも並んでいました。中でも特に良かったのが、ヤン・ウェーニクスの狩猟静物画です。ウェーニクスは、パリのプティ・パレで見てからとんでもない技術を持った画家として記憶に留まった画家なのですが、本作を見ても細部の描き込み、質量感の表現とまわりと比べても段違いな絵画であると思います。フランス・ハルスの大胆な表現に対して、ウェーニクスの精緻な表現も見られる、ということで個人的にはすごく満足のいく展覧会でした。
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    新書二つ
    「友だち地獄」 土井隆義 ちくま新書、2008
    「いじめの構造」 内藤 朝雄 講談社現代新書、2009

    最近読んだ新書で気になった二冊をさくっと取り上げます。
    社会学・社会心理学の観点から、現代の若者・子供の行為、心理構造を探ったものでインパクトの強い二冊だと思います。

    ***

    「友達~」の方は、現代の若者特有のメンタリティ・関係性としての「優しい関係」というタームを基軸に、若者社会の構造理解を試みるものです。
    現代を象徴する社会問題、文化・時代の比較論、コミュニケーション論などを通して、関心が深く身近に感じる問題を丁寧に読み説いている印象を受けます。
    「優しい関係」というのは何となくイメージがつくかと思いますが、「傷つきたくないし、傷つけたくもない」、という言葉にあるような、表層的に上手く関係維持するような社会状況の秩序、といえるでしょう。
    本書が良いのは、この関係性を支えるツールや社会的状況(一番のファクターはネット)をリアリティをもって分析・因果把握していることと、その欺瞞性・問題性の指摘に終始するのではなくあくまで社会学的に記述しようとしているところです。
    いろいろネット社会やサブカル的なものに焦点をあてた本が並んでいるのは見ますが、本書はネットがどのように若者やその関係構築に影響してきたのかを簡潔に知るにはまとまった新書だと思います。

    ***

    「いじめ~」は、これまた内容的には衝撃が強い本で、フィールドワークを綿密に行ってきた著者がまとめた具体例とその切れの良い分析が光る新書になっています。
    大人から見ればまったくグロテスクで理解不能ないじめの実態を、構造的に分割し理解していくということで、著者のオリジナリティある記述・タームでいじめの世界がモデル的に構築されています。
    個人的には、攻撃/破壊衝動・欲求というものには以前から興味をもってきたのですが、その攻撃衝動のようなものが、集合的に、社会的に構成される場面にも関心がありました。
    一面的には無邪気、、無垢性を持って語られる子供の世界ですが、それとはまったくかけ離れた社会的状況をも生み出す場にもなりえる、そしてそれは大人の世界同等の社会的構成を見せる、というのも目はそむけられない事実だと思います。このような触れにくい問題に、正面きって社会学的理解をしようとする新書であり、鋭い人間理解を提示するものになっていると感じました。
    ちょっと価値判断が強く出ている面と最後の提言のセクションは、内容的に稿を改めるべきというか、本書の性格的にも分析編を充実させて欲しいとも思いました。
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