芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    ルノワール ―伝統と革新 国立新美術館


    久々のルノワール展です。国内外の美術館、コレクションより作品が集められ、油彩完成作をメインに80点が鑑賞できます。
    ポーラ美術館が特別協力する展覧会となっており、同美術館の収蔵作品はもちろん、最新のルノワール研究報告まで見ることができます。
    国立新美術館開催の東京展のあと、4月中旬より国立国際美術館の大阪展に続く巡回展です。こういったときに展示作品の入れ替えがあって見たい作品が見られない、ということが往々にして発生しますが、今回も「イレーヌ・カーン嬢」が大阪展のみの展示だったりします。もちろん、逆もしかりですが、イレーヌ~はスイスのコレクションだし、今回是非見たかったです…

    展覧会は4章構成となっています。
    1880年代までの作品がメインとなる「第1章 ルノワールへの旅」、裸婦の主題を集めた「第2章 身体表現」、画家の華やかさを演出する「第3章 花と装飾画」、ルノワールの作品に息づく斬新と伝統を読み解く「第4章 ファッションとロココの伝統」。

    初、中期の作品に興味がある身としては、第1章や第3章が見どころになりました。
    この中では「団扇を持つ若い女(1879-1880、クラーク美術館)」(上図)、「テレーズ・ベラール(1879、クラーク美術館)」が特に気になりました。
    有名な「ルグラン嬢(1875)」とも共通してますが、絵具の塗り方や重ね方にムラをつけて、明暗・濃淡のグラデーションをつくる表現は、それこそ陶器に絵付けしたような感じで色合いを楽しめて、個人的にはとても気に入っています。「団扇~」では女性の服の部分に、「テレーズ~」は服や背景含め全体的に、「ルグラン嬢」ではカーテンなどに、このような表現技法が使われています。
    「団扇~」は図録やリーフレットの表紙に載せられていますが、表現方法や画面構成が面白く、さらに人物の描写が魅力的であり、展覧会の中で一番に輝いていた作品だと感じました。
    「テレーズ~」は肖像画家としての力量が示された作品で、顔のつくり、統一的な色調の美しさ等、魅惑的な一枚となっています。1880年代前半までの作品は、色彩、デッサンともに伸びやかに表現されており、画家自身は放棄してしまったものの、印象主義の人物描写としては一つの完成様式とまで思えます。

    展覧会独自の内容としては、3章の装飾画の展示と、ポーラ美術館作品の光学調査の展示が良かったです。
    装飾画は「タンホイザーの舞台」をメインにいくつかの作品が(装飾パネルとして)工夫されて展示されていました。
    光学調査の方は、x線や赤外線を作品にあてて、隠れている筆致、デッサンや絵具の種類を探っていくものでした。時代が進むことでどのようにルノワールの技法が変わっていくかを分かりやすく展示・説明していました。

    ルノワールが画業の中での主題をセクションごとに分けて、その主題において、ルノワールの個性を見たり、作品どうしの比較ができたりする展示になっており、楽しめました。
    図録は、大きくピクチュアが載せられている点もいいですが、資料面でも充実してます。
    特に、今展の作品の図版を交えて、詳細につくられている年譜は良くできていると思います。
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    ザ・ウェーブ


    『ザ・ウェーブ』
    モートン・ルー著
    小柴一訳、新樹社


    1969年にカルフォルニア州の高校で実際に起こった事件を元に書かれた物語です。
    この高校の歴史の授業で行われた実験が、どのように生徒を巻き込み、暴走していくのかを描いています。
    ネタばれしない程度にいうと、ナチスドイツ支配下で見られた「理解不能」の出来事を、アメリカの学生が擬似体験によって理解するという実験であり、社会心理学、社会学的な要素を色濃く示したロールプレイイングが学校の中で繰り広げられていきます。

    社会心理学、心理学をかじった人であれば、このような実験が過去、実際に学者によって行われ、それがどのような結果をだしたかは幾つか事例を思い起こすでしょう。
    現在は、道義的な面から、身体面・精神面での安全が確保できない心理学実験は行われないようになったと思うので、『ザ・ウェーブ』のようなことは、一昔前のことになってます。
    ただし、人の社会的、社会心理学的に見る危険な側面が、過去の教訓によって克服されたわけではまったくありません。日本でも、全共闘や特定の新興宗教の暴走がどのような末路をたどったかを振り返ればすぐに分かります。

    たとえそれが極化しなくとも、集団においてごく普通に観察できる幾つかの要素(同化、排除・疎外、内集団びいき、リスキーシフト、権力の暴走・堕落、没個人化、等々)は、反省的に捉えられないと、個人や集団にマイナスの影響を与えます。
    自己の所属する集団を反省的に、客観的に捉える視点を養う、とはかなり大げさになってしまいますが、多少なりとも立ち止まって観察する機会を持つ、という点でも本書は一石を投じる本になるかと思います。
    こういうわけですので、個人的には、読んで面白いとか読み終わった後に内容を諒解する、という趣の本ではないと思いました。
    万人向けはしないと思いますが、社会系よりの文系?にシンパシーがあれば、手に取ってみる価値はありそうです。
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