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  • THE ハプスブルク 国立新美術館


    ハプスブルク家の肖像画や絵画・工芸コレクションなど、ハプスブルク家ゆかりの名品を集めた展覧会です。東京展は新美術館で12月14日までやっています。
    結構人の入りの良い展覧会ですが、流石に閉館前1時間くらいは休日でも落ち着いて見られるようです。
    ウィーン美術史美術館の所蔵作品がメインということで、過去にも日本に来た作品も何点かありましたが、セクションごとに良くまとまっていて、クオリティ的には十分な内容でした。
    構成は、ハプスブルク家の肖像画から始まり、イタリア、ドイツ、(工芸、)スペイン、フランドル絵画と明確に分けられた章からなっています。

    )ハプスブルク家の肖像
    意外にも作品数は少なかったです。王家の肖像とあって、誇張表現がすごかったです。
    アンドレアス・メラーの「11歳の女帝マリア・テレジア」は、マリア・テレジアにもこんな時期があったんだなと思わせる少女像ですが、質感の描き分けには意識がいっておらず全体をツヤっぽく仕上げていて、まるでおとぎ話のような感じになっています。
    画風、表現の違いでいえば、時期は違えど同じフランツ・ヨーゼフ1世を描いた2点が好対照だと思います。ミハーイ・ムンカーチの作品は、しわもはっきりと、生々しく皇帝の表情を描いていますが、それが逆に威厳と気品を感じさせたりしています。ムンカーチは自然主義、リアリスムの画家なので他の画家とは立場が違うといえばそうですが。
    ヴィンターハルターの絵も骨格を直しているような感じですが、さすがに仕上げ方が上手い。タッチを活かすところは活かして、表情は綺麗に滑らかに、というような感じですね。

    )イタリア絵画
    ティツィアーノが見所かなと思いました。
    彼のパトロンであった「イザベラ・デステ」の肖像画は、遠くから見たら目立たないような作品ですが、きちんと見ると良いところがいくつも見えてくる絵だと思います。各所の描き分けはもちろん、表情のつくりなどは全く古さを感じさせません。人物意思や緊張感まで伝える技術や、他の16世紀の画家とは一線を画するリアリスムなど、とてもティツィアーノの作品は魅力的ですね。
    その他では、「聖母子と聖家族」という作品がありましたが、この作品はちょっと同じ画家の作品とは思えませんでした。ティツィアーノの描くような顔や塗りではないように見受けられるのですが、こういった作風の絵も他のあるのでしょうか?

    他の画家の作品では、アントニオ・ブッリーニの「オルフェウスとエウリゥディケ」が気になりました。人体構成やパースはあまり正確とはいえませんが、躍動感ある劇的な画面構成が奇抜だなと感じました。

    )ドイツ絵画
    デューラーの絵が貴重であると思います。他はクラナッハとか。あまり見ていて気持ちの良いものではないんですが。
    )スペイン絵画
    総数は少ないものの、スルバラン、ベラスケス、ムリーリョ、ゴヤと一通りあるセクション。固いけれどムリーリョの大天使ミカエルが良かったかな。
    )フランドル絵画
    ヴァン・ダイクの作品が光っていました。この画家も同時代の画家の中では際立っていると思います。3作品ほどありますが、精緻で落ち着いたデッサンや構図は共通に、仕上げ方は作品ごとに効果的に変化を持たせています。
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    ベルギー近代絵画の歩み 損保ジャパン東郷青児美術館


    ベルギー王立美術館のコレクションを展示する美術展です。
    東京では文化村の展覧会と、ベルギー美術を紹介する企画が重なっています。
    比較するところではないでしょうが、本展は題名の通り、展示の幅があるのでベルギー美術を広く見たい、ヨーロッパ近代美術の流れを知りたいという人にはよりニーズのあうものだったと思います。
    何気に4月から山梨、鳥取と巡回してきて、東京展は3会場目になります。初日にいってきましたが、それほど混雑はなくゆったり見られました。
    以下、興味を持った画家を若干ピックアップしておきます。


    ◆イッポリート・ブーランジェ  ブーランジェは風景画に意欲的に取り組んだ、ベルギーでも特異な画家であるようです。風景画の大作が3点あります。タッチを活かした重厚感ある作風です。「洪水」は荒々しいタッチで風景を上手く表現しています。水のクリアな表現が素晴らしく、すべてを包み込む洪水の様子が伝わってきます。

    ◆テオドール・ルソー ベルギーにおけるバルビゾン派の普及・受容という観点で、ルソーやコローの作品が展示されていました。ルソーの「森のはずれ」「ベルヴューのテラスからみたパリ」はいずれも夕暮れの風景が描かれ、逆光に沈む暗い大地、木々が広がる作品です。特に後者は神々しさを感じさせる作品といってもよく、複雑な空、アクセントとなる川などの表現に目が行きます。

    ◆イジドール・ヴェルヘイデン 「春の果樹園」「死んだ鹿」「昼食」の3点があります。「朝食」を見たときには、その他2点と同じ画家だとは思いませんでした。「昼食」は晩年の作品であり、新たな表現を見せる作品と解説されています。作風の変遷は細かくは知る由もないですが、「昼食」はそれまでの厚くべったりとしたタッチではなく、細やかに優しく表現された作品です。花、銀器などは特に雰囲気がありますね。

    ◆ジェニー・モンティニー 子供を多く主題としたようで、この作品も数十人もの子供が描かれた作品となっています。子供の構成の仕方やタッチ・絵肌が特徴的ですが、かなり微妙な色調を上手く操っているところが素晴らしいと思いました。

    ◆ギヨーム・ヴォーゲルス 色彩感覚とナイフでの表現が注目される画家。作品は風景画ですが心象的な雰囲気があり、強烈なインパクトを持ち合わせています。

    ◆アルベルト・バールツン 「ゲントの夜」と題された夜の運河の情景を描いた大作が展示されています。絵具を幾重にも重ねた重厚な絵肌と微妙な色彩表現、遠近感を自然に出す構図、光が浮かび湖面に反射する幻想的な情感、と素晴らしいポイントが沢山あります。個人的には本展で一番に推したい作品です。

    ◆テオフィル・ファン・レイセルベルヘ 以前に行ったベルギー王立美術館展で作品を見てから注目している画家ですが、今回は細やかな肖像画と、大きめの集団肖像画の2点がありました。後者の「散歩」(上図)と題される作品は、大きめのキャンバスということで、タッチも大振りになってますが、タッチが変わることによる雰囲気や人物構成の変化という点をもう一点と比較すると面白く鑑賞できると思います。また統一された色調を画面に点描で広げており美しいです。レイセルベルヘは新印象主義の影響から点描を始めますが、後年にはこの様式を放棄したとのことで、点描以前と、以後の作品というものが個人的に非常に気になっています。

    ◆エミール・クラウス イギリスで制作された「テムズ川の光の反射」シリーズ4点があります。色数はかなり抑えられており、光や大気や、それによって変化を表す水面の表現に関心が示されています。「ロンドン、テムズ川の実習船」なんかは、背景の蜃気楼のような表現をつくっている弱い縦のタッチと、前面のしっかりとした川の光の反射を表すタッチの呼応が面白いかなと思いました。