芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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    『島成園と浪華の女性画家』


    東方出版,2006

    大阪で活躍した、女流画家、島成園をメインに、大正・大阪の女流画壇を紹介する画集です。島成園は、2006年の展覧会で「化粧」という作品を見てから気にかかっていた画家ですが、それ以来作品を見る機会がありませんでした。それなので、このような画集で、成園の画業を概観できるというのは願ったりでした。

    「三都三園」といわれ、上村松園、池田蕉園と並び評される画家であるものの、現在でも上村松園の評価が群をぬいていて、それほどピックアップされることは多くないようですが、若い時代の筆ののった頃の作品はとても力が入っていて見ごたえがあります。
    本書は、同表題の大阪で開かれた展覧会が元になっており、再評価の流れがきつつあるのかな、と思います。是非とも関東でも西日本の明治大正画壇をメインとする展覧会を期待したいですね。

    本書は作品紹介とともに、成園の生い立ちや女性画家の文化史的側面にスポットを当てています。
    職業画家でもあるが、女性でもあるということで、女性画家には常にジェンダーの視点がつきまといますが、成園自身も、この側面と無関係ではありません。それどころか、成園は女性であることの社会的役割に縛られた画家ともいえそうです。大正9年に28歳で、銀行員の夫になった後は、制作は続けながらも、夫の赴任先と大阪を行き来していたようで、制作意欲や制作ペースも落ちた、というふうに解説されています。確かに、画集にある、大正9年以降の作品は、それまでの作品とは異なっていて、構図や色彩が練られ、勢いを感じさせる画風から、さらっとした画風へと転換しています。
    加えて、大正9年、婚約前に発表された「伽羅の薫」が、それまでの成園の絵の形式を崩す、斬新なものであったことからも、この大正9年という年は、成園の画業のターニングポイントになってるようです。
    本書は、大正期から昭和10年くらいまでの30点を載せていますが、それぞれに、いろいろな成園の側面をのぞくことができ、もっと他の作品も見てみたい感が募りました。「影絵」などのまとまった綺麗な作品、「無題」や「自画像」のような緊張感をもち真に迫る作品、大胆不敵で強烈な「伽羅の薫」など、さまざまな成園のイメージを持ちました。
    実際にこれらの絵を見る機会が訪れること願いたいです。

    島成園以外にも、ともに三園と謳われた、上村松園や池田蕉園の作品、また成園と志を同じくした「女四人の会」の吉岡千種(ちぐさ)、岡本更園、松本華羊の作品、その他大阪で活躍した女性画家の作品を一望できます。冒頭には女性画家の結成したグループの解説が、巻末には年譜やそれぞれのプロフィールが載っていて、資料面でも優れた画集だと思います。大阪でこれだけ女性画壇が栄えたというのも、今回初めて知って、大変驚き、興味を持ちました。大正期の日本画(特に美人画)を見る上で、やはり上方の女性画家たちの存在はひとつの大きなキイになっていることを認識させられました。
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