芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • 日展100年 国立新美術館


    日展の前身の文展誕生から100年を記念しての展覧会。
    官制展覧会の歴史だけに、画家・作品ともにかなり豪華です。
    個人的には明治大正期の日本画を目当てに行ってきました。

    文部省美術展覧会(1907-1918)、帝国美術院美術展覧会(1919-1934)、文部省美術展覧会(1936-1944)、日本美術展覧会(1946-)の4つの流れに大別できる日展の歴史をそれぞれのセクションに区切って展示しています。
    これらの歴史を通して、日展100年というものの、その中身は改組などでの多岐に渡る変化の歴史であり、美術界の諸々の難しい事情が伝わってきます。

    100年を振り返るということで、展示作品数は相当なものがあります。
    展示代えもあるようですが、巡回展ごとの出品作が多く、ひとつの展覧会場で見られない作品も多くあります。そのため、図録は余計に厚くなっています。
    わがままをいえば、注目する画家の作品は全て見たかったところ…。
    以下、鑑賞メモです。
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    ルドンの黒 Les noirs de Redon Bunkamura ザ・ミュージアム


    フランス象徴主義に属する画家、オディロン・ルドンの展覧会です。
    今回は、ルドンというとまず想起される、神話や花卉を主題としたきらびやかな一連のパステル画ではなく、画家のキャリアの大部分を占めるモノグラフの作品を見せる展覧会です。
    ルドンの「黒」とは、フランス語で複数になっているように、木炭画やリトグラフなどの黒の単色で仕上げられた作品群を指します。
    ルドン日本一を誇る、岐阜県美術館の収蔵品によって構成されています。

    ルドンが出版したリトグラフ集のほぼ全て(数点欠いているという意味で)を網羅しているだけあって、それらを一回で見られる貴重な機会であり、かなりの作品数に圧倒されます。展示空間も工夫されており、心地よく見られました。いつも行っているような展覧会と比べれば、異様ともいえる空間でしたが。
    名前を知らなかった、知っていても作品を見ていなかったリトグラフが多く、個人的にはとても勉強になりました。2001年に群馬県で開かれたルドン展でも、いくつかのリトグラフを見たことがあります(因みに、かなり開きがあるにせよ、岐阜県美術館に次ぐコレクションは群馬県立近代美術館ではないでしょうか…?)。まとまってルドンの黒を見るのは、それ以来だったので新鮮な気分で見られました。

    展示されているリトグラフ、銅版画集は、『夢の中で』『エドガー・ポーに』『起源』『ゴヤ頌』『夜』『陪審員』『聖アントワーヌの誘惑 第一~三集』『夢想』『悪の華』『幽霊屋敷』『聖ヨハネ黙示録』。リトグラフの支持体として表記されている「シーヌ・アプリケ」とは、「洋紙に中国紙を貼付した紙」とのことです。
    リトグラフ集といっても、シリーズごとに線や印象が統一されているということでもなく、それぞれ一枚一枚の独特の雰囲気が不気味さと魅力を持っていると感じます。

    その他の展示品では、銅版画家ブレダン(ブレスダン)のもとで作成したエッチングがあります。初めて見るものですが、最初期のものとあって力がこもっている印象。
    また、制作の裏で、ボルドーなどで描かれた風景画の油彩小品もあります。オルセーで見たものよりも、細やかに描かれており好感を持ちました。特に「薔薇色の岩」は、ペインティングナイフで綺麗に岩の質感が仕上げられていて、油絵での力量を感じさせる絵です。

    また、とりわけ注目されるのが、2点のカラーリトグラフ作品。ともに1897年の作品ですが、黒から色彩への転換を見る直接的な作品ですので、このような作例はもっと見たいです。

    最後になりましたが、ルドンの世界観をいくつかの作品を統一させることで表現した映像作品も上映されています。これもすごく奇妙で面白く、完成度の高いものだと思います。
    ラヴェルのピアノ三重奏が使われていました。

    巡回展はなく、東京展は今週で終わりです。
    いささかマニアックな展覧会だとは思いますが、作品、展示空間ともに新鮮で、渋谷の喧騒から逃れ、ルドンの独特の世界観に浸れます。
    「ジャン=ジャック・エンネル、印象派と対峙して」 ロマン派美術館 Jean-Jacques Henner, Face à l'impressionnisme


    パリで開催中の、ジャン=ジャック・エネル(1829-1905)の展覧会のレポートをします。

    アカデミスムの最後の大物画家の一人ながら、伝統的なアカデミスムからは離れた画風が魅力であるエネルの回顧展が、2008年1月13日までロマン派美術館で開かれています。
    表題邦訳は、準オフィシャルとなる、メゾン・デ・ミュゼ・ド・フランスの展覧会情報ページによりました。展覧会の副題には、「最後のロマン派(le dernier des romantiques)」というフレーズが続いています。また各作品タイトルは、個人的に訳しました。

    作品は、ただ今閉館中のジャン=ジャック・エネル美術館を始めとして、プティ・パレ、オルセー美術館、ミュルーズ美術館などから集められています。この展覧会は、エネルの一大回顧展であることに加え、2008年秋に再オープンする、エネル美術館の「ルネサンス」を知らせるものでもあります。前パリに行った時には、ちょうどエネル美術館が閉館したところだったので、今回このように貴重な展覧会に行けて大変満足でした。
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    オランジュリー美術館 Musée de l'Orangerie


    1852年に建設されたチュイルリー公園内のオレンジ温室を、クロード・モネの「睡蓮」を展示するため整備し、画家の死後の1927年に美術館として公開。
    モネの「睡蓮」を展示する地上階と、ジャン・ヴァルテール-ポール・ギヨームコレクションを展示する地階に分かれています。
    6年という長期間の改修が終わり、綺麗で明るい美術館になっています。
    以下、作品紹介に移ります。作品の邦訳タイトルは、オランジュリー美術館の邦訳図録に基本的に拠ります。
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    パリ市立近代美術館 Musée d'Art moderne de la Ville de Paris


    パレ・ド・トーキョーの東翼棟が、パリ市立近代美術館です。
    万博出品作の、デュフィの超大作「電気の精」(最下図)があることで有名になっています。
    確かに、作品がある部屋はとても大きく、そこに敷き詰められた「電気の精」のダイナミックさには驚きました。色が溢れているといった感じで、いろいろな科学者、オーケストラ、「電気の精」などが描かれています。

    コレクションでは、エコール・ド・パリ以降の近現代絵画を扱っていて、アーティストの幅はかなりある感じです。
    近代絵画では、アンドレ・ドラン、デュフィ、ピカソ、ブラック、ロベール・ドローネー、スーティン、フジタ、モディリアーニ、ヴュイヤール、ボナールなどが展示されていました。フジタ、モディリアーニなどは1点しかありませんが、他は数作品ずつは展示されています。
    特にボナールの「浴槽の中の裸婦」は良い作品だと思いました。下のピクチュアではほとんど分かりませんが、タイルが鮮やかに細かく、アラベスクを描いているようで、とても装飾的に裸婦を取り囲んでいます。
    現代アーティストでは、残念ながら、ゲルハルト・リヒター以外分かりませんでした。沢山のヴァラエティをもった作品があります。





    企画展も開いていて、常設展と企画展を見るのには意外に時間がかかります。
    作品数も多いですが、展示スペースも広いです。
    他の美術館同様に、関連画家の画集を手広く扱う本屋もあります。




    パレ・ド・トーキョー Palais de Tokyo


    1937年の万博の会場として建てられた建物で、東翼棟がパリ市立近代美術館になっており、西翼棟は名称そのままパレ・ド・トーキョー(Site de création contemporaine)として、現代アート専門のギャラリーになっています。スタートは2002年とかなり新しいようです。また、「万博の日本館であったことから、パレ・ド・トーキョー」ような、建物を日本関連施設に結びつける由来はガセらしいです。オフィシャルには、美術館の下のセーヌ河岸につけられた、トーキョー河岸(Quai de Tokyo)の名に基づいていると書かれています。

    天井の高い開放的な展示空間に、大きな場所をとって作品が壁にかけてあったり、床に並べられていたりします。人が混むような美術館ではないので、余計に空間の広がりが感じられる展示スペースです。
    常設展示ではなく、企画展がメインのギャラリーなので、時期ごとにいろいろなアーティストの作品が見られるようです。僕の行った時は、スティーブン・パリーノというアーティストをメインとした展覧会をやっていました。大きな画布に、単色で色を塗り、それをくしゃくしゃにして展示するという形態の作品が多かったです。他には映像を使った作品や木組みのオブジェなどさまざまな作品がありました。

    コンテンポラリー・アートに興味のある人は作品、展示空間ともに楽しめると思いますが、そうでなければ素通りで終わってしまうと思うので、そのような方にはおすすめしません。東翼塔のパリ市立近代美術館が無料で良いコレクションを公開しているので、そちらに行った方が良いでしょう。これがアートなのか? というギリギリのラインを攻めている作品であり、そこを楽しめなければ、ガラクタと見なされて終わってしまいそうな作品ばかりだと思います。
    そういう意味で難しく、僕も、現代アートは興味を持ち始めた程度なので、完全に展示に没頭しきれなかったです。

    現代アート関連の本を扱う本屋があり、素人目に見ても、とても充実しています。さらに、アーティストが実際に制作したオブジェなどを売る、面白いブティックもあります。
    大きなレストラン・カフェも併設しており、くつろげる空間になっています。

    下のピクチュアは、彫刻が施された、パレ・ド・トーキョーの裏面です。レストランは、夏場はテラスのようです。

    それっぽいオフィシャル・サイトがあります。しかし、操作、閲覧しにくいです…。



    ロマン派美術館 Musée de la Vie Romantique 


     オランダ出身の画家、アリ・シェフェール(1795—1858)が1830年からアトリエ兼邸宅として使っていた住居を美術館として公開しています。パリでは中心から北の方になる、モンマルトルのふもとに位置しています。
     ここは、シェフェールと親交のあった、ロマン派の画家・音楽家・文豪、ジョルジュ・サンド、フレデリック・ショパン、フランツ・リスト、ウジェーヌ・ドラクロワらが集ったサロンでもあり、彼らのゆかりの品々が展示されています。(Musée de la Vie Romantiqueは、「ロマン派美術館」の他、「ロマン派博物館」「ロマン主義美術館」とも訳されています。一部のガイドブックには「ロマン派生活博物館」とも書かれていました。直訳的にいうと「ロマン派生活~」が正しいですが、こうもいろいろ訳されていると少々困りますね)
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    オルセー美術館 vol.2


    オルセー美術館については、以前にも書きましたが、前に書ききれなかった分などを含めて、またレポートします(2005年のレポートはこちらに)。
    2年前に行った時と、作品の配置や、展示室の割り当てなどが変わっていました。特に地上階の、寄贈コレクションを扱うセーヌ・ギャルリーです。クールベの「オルナンの埋葬」も額が外された状態でした。

    2度目に行っても発見ばかりで、まだまだ見ていたい気分でした。
    流石に、世界規模の近代絵画美術館です。以下、気になった画家、作品を取り上げます。


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    プティ・パレ Petit Palais


    1900年のパリ万博の際に、フランス美術作品の展示会場として建てられた建物で、現在は、19世紀絵画やフランドル絵画などを展示する美術館になっています。前に行った時は改装中で、2005年12月に再オープンしたところなので、内外装とも、とても綺麗でした。

    展示室は、入り口、左から入って、「パリ1900」「19世紀」「18世紀」「17世紀」「ルネサンス」「古代」「西洋キリスト教世界」「東洋キリスト教世界」と、1階と地階にわたって続いています。1900年万博からスタートしたプティ・パレということで、展示室の順路は、「パリ1900」から時代を遡っていくようになっています。時代順に追って見たい方は、地階から見ればオーケーだと思います。
    近代絵画で有名なプティ・パレですが、このように古代から20世紀までの美術を扱っているのは驚きです。
    以下、絵画がメインとして扱われている「17世紀」まで、簡単に作品紹介をします。


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