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  • GARNET CROW  I’m waiting 4 you


    先月に5thアルバムをリリースしたGARNET CROW。リリース後も創作意欲全開のようで、ますますこれからが楽しみでです。

    「I’m waiting 4 you」のお遊びがきいたタイトルの通り、これは最新作の前作になる4thアルバムです。このアルバムがリリースされたとき、病院に寝泊りすることになっていて、朝から夜までずっと聴いていた覚えがあり、そういう意味で個人的には、とても思いいれのあるアルバムです。アルバム自体の完成度も益々アップした感じで、プロフェッショナルなクリエイター集団としてのガーネットの成熟度が伝わってきます。

    全体として、最初の頃のダークさが目立った作品よりも、このアルバムでは、「忘れ咲き」や「君を飾る花を咲かそう」「この冬の白さに」「君連れ去る時の訪れを」などの切ないバラード調の曲が光っている感じです。
    特に「忘れ咲き」はAzukiさんの作詩と、ピアノ演奏が良く、個人的に、アルバムの中でも、ガーネットの中でも上位に位置する曲です。因みにシングルの方には、曲をイメージした写真を詩とともに並べたブックレットが付いています。
    「君連れ去る時の訪れを」はラストを飾る、深みのある曲。この曲などは、中村由利さんのヴォーカルが最初のころと比べると変化してきている、ってが顕著に分かる曲だと思います。

    また、アップテンポでノリの良い、「僕らだけの未来」もシングルリリースされている曲だけに存在感あります。パーカッション系が幅を効かせている数少ない曲だと思いますが、こういうところは古井さんの編曲ありきですね。
    さらに、僕としては「picture of world」がお気に入り。「ずっと見てたんだ」「築き上げたんだ」「似たようなもんだ」など、語尾の音を同じようにメロディに重ね、アクセントしているところも面白いし、全体的にも周りとは少し毛並みの違った曲調が新しい感じです。
    インディーズアルバム収録の「sky」も新しいアレンジで収録されています。基本的な部分は踏襲しており、元のイメージを壊していない良いアレンジで、ギターが前奏から前に来ているところは僕好みです。

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    トリスタン・プリティマン 『twentythree』


    南カルフォルニア出身の女性シンガー・ソングライター、トリスタン・プリティマン(Tristan Prettyman)。子供のころから、サーフィンとギターを楽しみ育ったようです。
    アコースティック・ギターと気持ちの良いヴォーカルが魅力の、今最も注目している、洋楽アーティストです。

    キュートで、乾いた感じのヴォーカルも良いですが、特に彼女の奏でるアコースティック・ギターはとても心地よいサウンドをつくっています。この点は、とりわけギターをやっている人はお奨めしたいですね(コード・ストロークでジャンジャカやっているだけの音楽とは違います)。僕も最初に聴かされて、好きでしょ?と聞かれたときに、好きと即答してしまいました。ということで、個人的には、一回、曲の始めやさわりを聞いただけで素直に受けいれられる音楽でした。

    このアルバム『twentythree』は、数字の通り、彼女が23歳のときにリリースしたものです。
    最初の「Love Love Love」から盛り上がります。前奏のギター・サウンドから、ヴォーカルの入り方もとても良く、アルバムの始まりを飾るにふさわしい曲だと思います。
    「Shy That Way」はジェイソン・ムラーズとのデュオで、より深みがある曲になってます。アルバムの中でも印象に残る曲です。
    「Story」「Electric」「Song For The Rich」など、落ち着いた曲調のものも結構あり、いろいろな曲やヴォーカル、メロディーがこなせる、という幅が感じられます。
    他にも「Simple As It Should Be」など良い曲ばかりで、捨て曲なしの良いアルバムになっています。

    まだ若く、ライブでは新曲を沢山披露しているということなので、これからのニュー・アルバムに期待したいです。

    thanks to tuchy
    所有
    「得るということは、頑強に求める結果だ」とO.ルドンの自伝・評論にあった。
    この言葉は何気ないものかもしれないけれど、意外に心に残った。
    手許に置きたい、と思うものは、いつも強く思って、求め続ける姿勢がなくては手に入らない。逆から考えると、棚ボタ的に得たものが身につかない、ということわざが幾つかあるように、「頑強に求めた」過程がなければ所有はできないともいえる。

    この言葉を残したルドン自身は、兄による遺産整理で、自らの故郷を失っている。その喪失は彼にとって一つの「死」を意味するほどのもので、裁判まで争ったが、故郷ペイルルバードの地は守りきれなかったのである。これを見ても、現実には、頑強に求めていたとしても所有は保障されないものである。しかし、だからこそ、身に置きたいものは、強く求め、願い続けることが大切なのだろう。

    また別の側面で、あるものを得る、得ようと努力を続けることは、その他のものを失うことだとも思う。能力や時間は有限なのだから、あることに専心すれば、違うことへ向かうチャンスを失うことは明白である。大切だと分かっているものを犠牲にしても、あるものを得なくてはならないこともある。こう見ると、所有は喪失と隣りあわせかもしれない。

    話はそれるが、あるときサークルで、やって後悔するか、やらないで後悔するか、どちらが良いかという議論を聞いていた。このこともここでの話と関係の深い話だと思う。何かを実行して、それが上手くいけばいいが、失敗すればそれなりの代償を払い、後悔する。それを実行しなくとも、もし上手くいったとしたら、という思いを抱えて後悔することになる。失敗した代償を背負うか、失われた過去への執着を背負うか、これは一概にどちらが良いかいえないし、選択はその人の生き方、価値観に拠るだろう。これを見ても所有と喪失の収支の難しさが伝わっていくる。

    所有は、喪失と表裏であり、打算がつきまとうものだ。さらに、いったん得たものと思っていたものが、実は手の内になかった、ということも起こりえるだろう。
    そういうことで、書かれている範囲以上に、「得るということは、頑強に求める結果だ」というルドンの言葉が心に残った。本当に得たいものへの「頑強さ」はどれくらい持っている、持っていたのだろうかということを反省することにもなる言葉である。
    ウィーン美術アカデミー名品展 損保ジャパン東郷青児美術館


    歴史あるウィーン美術アカデミーから、17世紀バロック絵画をメインに、近代まで幅広く収蔵作品を紹介する展覧会。ウィーン美術アカデミーの巡回展は稀ということで、またもや会期ギリギリになってしまいましたが、この多忙な時期に行けて良かったです。しかし、毎年学祭の時期は風邪に罹るのが必定なようで、見るのがこれほどしんどかった展覧会もなかったのではと思います。胸が苦しく、呼吸困難で、ゼエゼエハアハアしながら休み休み回ってました。

    最初の方のフランドル絵画では、ベルギー王立美術館展の画家と重なる有名画家も多く、ルーベンス、ファン・ダイク、ヨルダーンスらの肖像画、神話画が見られます。
    ここでは、17世紀フランドルを代表する静物画家、ヤン・フェイトの作品にも注目したいです。他のフランドル画家に比べても、タッチによってものの質・量感を捉えようとする絵であり、大胆な構図もあいまって、よりダイナミックな絵になっていると思いました。

    さらに進むと、ムリーリョ「サイコロ遊びをする少年たち」(下図)、レンブラント「若い女性の肖像」(最上図)がありまず。
    ムリーリョは、神話・歴史画のほかに、この作品のように下流の生活風景を描いた作品を残していますが、悲愴さを漂わせることなく、逆にしたたかさや温かみが感じられる絵になっています。近代でいえば、フランソワ・ミレーのような柔らか味のあるタッチが魅力です。
    後者のレンブラントの肖像画は、彼が20代半ばの作品だそうですが、すでに顔の表現などは、この展覧会の作品を見渡しても、ずば抜けた完成度を見せています。

    静物画のセクションでは、ヤン・ブリューゲル以降のフランドルの伝統である、見事な花卉画が並びます。驚いたことに、ここにある、ラヘル・ライス、ヤコベア・マリア・ファン・ニッケレンはともに女流画家ということで、特に前者は美術史に名を残す数少ない女流画家の一人なようです。筆触というものが見当たらない完璧な絵肌をつくっていて、その技術に対してたじろきます。
    その他にも、海洋画、ロイスダールが見所の風景画、など画題によって作品がまとまっているセクションがあって、見比べが面白いです。

    近代絵画のセクションでは、ローベルト・ルスが断然興味をひきました。
    「ペンツィンガー・アウの早春」は、背の高い枯れ木の林道と、そこでの人々の生活を描く自然主義的大作。細かい木の枝を確かな線で1本1本描き込んでいる描写力には感嘆させられます。もう一作品の「アイゼネルツより」も、小品ですが細やかな仕事がなされていて、ルスの作品はラファエル前派周辺のあの描写力を彷彿とさせるものがあります。因みに、ルスの2作品の間に、クールベの作品が挟まれていましたが、この意図は何なのでしょうか。
    他には、ハンス・マカールトのニーベルングの指輪に取材した天井画の下絵が良かったです。細かに描き入れられた装飾と、大胆なタッチによる場面、人物描写が見事に調和していて、下絵、習作の部類のものですが異彩を放っていました。暗い色調の中に、金色の絵具も映えていました。

    鑑賞料500円ちょっとで、こんなにもクオリティの高い作品を沢山見ることができるとは予想していませんでした。東京展は日本で最後の巡回会場で、残り会期もこれを書いている時点でほとんど日にちがありませんが、特に17世紀絵画好きの方は、本当に見ておいて損なしの展覧会ですね。