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芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • ルドン−秘密の花園 三菱一号館美術館
    ※2018.2-5

    オディロン・ルドンの回顧展です。
    ルドン展としては、
    2013年「オディロン・ルドン 夢の起源」(損保ジャパン美)
    2012年「ルドンとその周辺-夢見る世紀末」(三菱一号館美)
    あたりから約5年ぶりの企画展となります。
    上記2展は岐阜県美術館のコレクションが大きな要素でしたが、本展は「ドムシー男爵の食堂装飾」のパネル作品群を中心にオルセーのコレクションが核になっています。

    三菱一号館美術館のコレクションのハイライトとなる「グラン・ブーケ」は、「ドムシー男爵の食堂装飾」を構成する一枚で、モチーフ、色彩もありますが、他に作例をみない大パステル画であることから、一際存在感を放つ作品です。
    「グラン・ブーケ」の入手とパリ(グラン・パレ)でのお披露目の経緯もあり、オルセーの「ドムシー男爵の食堂装飾」とともに「グラン・ブーケ」を展示する本展は三菱一号館美術館の開館からの宿願であったでしょう。展示室の関係もあり、食堂装飾の完全再現はなかなか難しかったと思いますが、当時の展示状況が分かるよう工夫されて展示/構成されていました。
    オルセーの「ドムシー男爵の食堂装飾」については、今回初めて日本で公開されたものかと思いきや、過去日本で公開されていたという事実に驚きました。1980年の期間で開催された「ルドン展」(伊勢丹美術館ほか6会場巡回)で、展示状況は分かりませんが(「グラン・ブーケ」をのぞく)「ドムシー男爵の食堂装飾」が出品されていたようです。
    しかし、「グラン・ブーケ」も含め16点をそろえ、展示構成も練られた本展はやはり過去のルドン展とは一線を画すものがあり、資料としての図録も含め大変貴重と思います(1980年の展覧会図録を見ましたが、掲載されていない作品もあり、解説も詳しくはなく出品目録の要素が強い感じを受けました)。

    さらに、食堂装飾パネル以外の出品作品も非常にクオリティが高く、力の入りようが伝わってきました。最終章の「装飾プロジェクト」などは私も初めてそのようなコラボレーション作品などがあることを知りました。

    本展は、黒のルドン(版画)、色彩のルドン(パステル、油彩)というこれまでの切り口では漏れていたルドン像を提示するものであって、より広がりのあるルドンの世界を印象づける契機になったと思います。
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    ビュールレ・コレクション 国立新美術館


    スイス、チューリヒのビュールレ・コレクションを紹介する企画展です。
    ビュールレ・コレクションは、個人邸宅を美術館として公開していたところに、2008年に強盗が入ってから閉鎖を余儀なくされ、2020年にチューリヒ美術館に移管されることになっています。それまでの期間で、日本での巡回展開催が可能となった経緯があります。
    出展作品の約半数が日本初公開であり、移管後はおそらくこのようなクオリティの企画展はないでしょう。

    見どころは、リーフレット等のカバー絵になっている、ルノワールの「イレーヌ・カーン・ダンヴェール嬢」です。
    1880年の作品で、サロン出品作です。サロンでも好評を得たようですが、ルノワールの肖像画でも非常に素晴らしい作品です。
    個人的には印刷でのイメージが長らくあり、現物を見たときは色彩の明るさに驚きました。このような経験は、同じく初期の肖像画である「ルグラン嬢」(フィラデルフィア美術館)を見た時もありました。もちろん、往々にして実物というか目で見た時の印象に近い諧調表現は印刷物では難しいのはありますが、印象がここまで変わるとすると実物を見ないと始まらない感はします。
    安定的な構図、古典的な表情のつくりと印象派的なタッチの髪や背景の葉の対照、肌や衣装と周囲のコントラストなど、いろいろと練られた要素が詰まっていて、魅せようとする肖像画の雰囲気を強く感じます。
    そのほかでは、モネの睡蓮の大作が展覧会の締めに置かれています。撮影OKとなっていて実際多くの人がスマホで撮っていましたが、(前も書きましたのですが)このような混雑する企画展では撮影OKは少し疑問です。

    テーマや画家によっていくつかの章に分けられていますが、最初の肖像画の章は、アングル、クールべ、ファンタン=ラトゥール、ルノワールと良い作品がそろっていました。
    後ろの章はポスト印象派、アンティミスト、ピカソ、ブラックらの作品が続き、始めの章とはガラリと趣が変わります。ビュールレの収集、コレクションの幅が分かります。
    プラド美術館展 ベラスケスと絵画の栄光 国立西洋美術館
    ベラスケスのもっとも重要かつ充実したコレクションを有するプラド美術館展とのことで、副題のとおり、ベラスケス7点が核となっています。
    また、ベラスケス以外にも、リベーラ、スルバランらのスペイン絵画、ルーベンスらフランドル絵画もクオリティの高い作品が集結しており、プラドのコレクションの充実度がうかがえます。さらに、これら絵画も、小品でかさ増しされている感がなく、大作ばかりで非常に現場での見ごたえのある企画展になっていました。

    スルバランは、ヘラクレスの12の偉業のシリーズが特に興味深かったです。
    「ヘラクレスとレルネのヒュドラ」「ヘラクレスとクレタの牡牛」の2点が来ていました。
    ヒュドラの方は、狭い洞窟に籠った、大して害もなさそうなヒュドラを叩き潰そうとしている感じが面白いです。19世紀の作例、モローの同名作品などと比較しても対照が浮き立ちます。
    男性の肉体表現に関心のいった作品で、スルバランの幅を見られる作例と思います。
    ヌード 横浜美術館
    2016年からの国際巡回展で、英国テートのコレクションから構成されています。
    古典的主題であるヌードについて、19世紀以降の展開を探る内容となっています。

    近代以前は、裸体表現は解剖学的な裏付けを持ちながら、まずデッサン、人体表現の基礎として位置づけられていた面がありますが、現代にいたるとそういったアカデミックな面や女性美の表現といった意味合いが薄まり、コンセプチュアルな、あるいはメタ表現的な展開を見せます。そして、やはり性役割、ジェンダー等の社会学的なものや政治的なものへの関係、既存の社会的・文化的文脈との関係(たとえば猥褻性との関連)で問題をはらむものとして扱われてきたといえます。
    今展も後半部分はそのような展示が多く、挑戦的、意欲的といえる構成になっていました。これも近現代美術の殿堂たるテートのなせる内容と思いました。

    個人的な興味としては、そのようなコンセプチュアルなものではないので、(テート・ブリテンの)ビクトリア朝絵画を鑑賞する目的で訪問しました。
    全体に対する構成割合は低いものの、レイトン「プシュケの水浴」、ミレイ「遍歴の騎士」、ドレイパー「イカロス哀悼」など第一級の作品が来ていました。
    ドレイパーは、これまで怖い絵展で作品を見たくらいですが、本作は大画面で大変迫力がある作品と感じます。質感表現や物寂しい色調などそういうところも見どころかと思いました。
    テート・ブリテンのビクトリア朝絵画展示室は同館では最大規模のギャラリーといえど絞られているので、今回は前年に行った時には見られなかった作品を鑑賞できる機会となりました。

    展覧会の目玉はロダンの巨大大理石像の「接吻」です。
    男女の対照的な表現や人物構成のダイナミックさが際立ちます。
    屋外のブロンズならまだしも、このような大理石彫刻は見る機会はそうそうないので(自分の興味に照らしても)、単純に圧倒され、心動かされました。
    そのほかの絵画では、デルヴォーが光っていました。

    ボストン美術館 パリジェンヌ展 世田谷美術館
    世田谷美術館に行くのは2005年の「ゲント美術館名品展」以来なので、十年以上振りです。
    前回の記憶がないのですが、アクセスしづらいですね。

    18世紀以降のパリの女性の生活、風俗等にフォーカスした展覧会です。
    名古屋、東京、広島と巡回します。

    本展では、妻、母親、労働者、社交界で活躍する女性…とさまざまな役割、視点からの作品、資料が並び、その時々の歴史や場面においてパリジェンヌがどのように生き、またどのような姿でとらえられていたかを比較しながら見ることができます。
    19-20世紀においては、流行を発信する自律した女性のイメージがありますが、社交界で活躍したり、流行を着飾り文化を発信したりする役割もパリジェンヌならではでしょう。貴族、プチブル、芸術家、女優など文化をリードしたパリジェンヌを数えていっても、同時代で比較して群を抜いています。このような文化が長くに渡り、ヨーロッパ各国、またアメリカに及ぼした影響は大きいです。

    絵画では、ヴィンターハルターやサージェントらの肖像画、マネの「街の歌い手」などがあります。マネは依然にも日本にも来ました(三菱一号館)。
    トマ・クチュールもありました(こちらも以前見たような気が)。
    版画、写真、ポスター、テキスタイル等々、いろいろな形式の作品があるので、油彩はそこまで多くはないですが、秀作が多くそろっていたと思います。

    この展覧会で示されたパリジェンヌの姿は無数にあるうちのいくつかです。パリジェンヌやその文化の多様性を理解する手がかりとなる企画展といえます。