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芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • アルヴァ・アアルト もうひとつの自然 東京ステーションギャラリー
    フィンランドを代表する建築家アルヴァ・アアルトの回顧展で、神奈川、名古屋、東京、青森を会場とする巡回展となっています。
    建築家と紹介されても、自分自身でいえば建築家としてのアアルトの知識はなく、なじみがあるのは、イッタラ、アルテックで発売されているガラスや家具ですし、多くの方が同様なのではないかと想像します。
    回顧展として、まずもって建築家としてのアアルトを紹介するものとなっており、その点ではアアルトを正面から捉えられる機会といえます。
    ただし、私のような立場からするとデザイン、工芸部分をもっとフォーカスして欲しい、という感想は率直に言えば持ちます。建築図面や立体図を見ても、どのように鑑賞してよいのか戸惑う部分はやはり否めません・・・

    家具はスツール60にも使われている曲木の技術で制作された椅子などが展示されていて、同時代のミッドセンチュリー家具と比べてもモダニティ、斬新さを感じます。
    曲線と親和性をもった流動的、有機的なデザインは建築、タイル、曲木のオブジェ、アアルトベースなどいくつも繰り返されていることも分かります。
    スツールは、ロンドンのデザインミュージアムでもイケアと比較されていたように思いますが、当時のまま(?)の特許製法で複数工程を丁寧にこなし、かつハンドも入っていることが動画で分かり、あの価格は納得しました。
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    ロマンティック・ロシア
    サンクトペテルブルクのトレチャコフ美術館のコレクション展(-2019.1.27)です。クラムスコイの「忘れえぬ女」が再来日し、ロマンティック・ロシアの核に据えられています。

    シーシキン、クラムスコイ、レーピンら大家の作品をメインに、幅広く19世紀ロシア画壇を紹介する内容になっていました。
    各画家1~3点ほどで、画家の説明キャプションもあったので、分かりやすく、多くの画家が紹介されていました。

    トレチャコフ美術館や、日本開催のトレチャコフ美術館展にも訪問してますが、やはり初見(と記憶する)作品も多く、見ておく価値のある企画展です。

    構成は画題で分けるものですが、上記のとおり各画家1-2点ほどしか出品されていないので、(そこそこ混んでいるのもあり)どこから見ても良い感じです。
    見所は、
    ・シーシキンを中心とした、自然主義、リアリスム作品
    ・クラムスコイの代表作品(「忘れえぬ女」、「月」)
    ・レーピンの肖像画
    と思います。
    あとは、多くの画家が紹介されているので、お気に入りの画家、作品を見つけることもあるでしょう。

    レーピンの肖像画二点(ルビンシュテイン、クラムスコイ)の比較などはすぐ目につくところで、レーピンの表現技量を見られるところと思います。
    よくあげられるリムスキーコルサコフの肖像しかり、内面的な表現を姿勢、タッチなどで表現しており、特にルビンシュテインの方は大振りかつ重厚なタッチで力強い人物性を表しています。大胆に筆を置いているように見えますが、光/陰影の表現も完成されています。
    対してクラムスコイの肖像はしっかり描いている印象ですが、対照的に背景はタッチをランダムで重ねてテクスチャ的に構成しています。

    ワシーリー・コマロフ「ワーリャ・ホダセーヴィチの肖像」は、部屋の中で座る少女と人形などを描いた作品です。アースカラーのなかに赤を散りばめるように配置しアクセントにしている印象です。
    面積の広いブロック的なタッチのなかでも、筆の毛並みを残すストロークでつくられた毛皮の敷物の表現など、一見おおざっぱにはみえるところ丁寧に練られて作られています(少女の横顔も背景に陰部分が当たるようにし、きちんとコントラストを作り焦点化しています)。
    また、少女の低い目線を強調する縦長の構図など工夫が随所にみられ、周囲の丁寧に仕上げられた自然主義的作品と比べ際立っています。

    シーシキンの大作「雨の樫林」は、かなりスケッチ的に仕上げられていることがわかります。淡い色で奥行、重なりなどを巧みに生み出しています。

    クルイジツキー「月明かりの僧房」は、クラムスコイ「月」と同じ、夜の月あかりを表現した作品ですが、幻想的であるクラムスコイ作品よりもはっきりとした光を描いています。前景の芝生に映る陰がコントラストを強調していてモチーフを強く印象付ける感じを受けます。
    対してクラムスコイは、光の質がもはや違うことは一目瞭然で、光の当て方も含め、抒情的、詩的なレベルまでドラマチックな画面構成・表現をしています。
    このような絶妙、微妙過ぎる諧調・色彩表現は図版では再現できないのでぜひ生で鑑賞すべきです。このレベルだと、植物学的正確さを示した圧倒的な画力は、いうまでもない前提、二の次、になってしまいますね。

    ヴィノグラードフ「秋の荘園にて」は、前景は紅葉し枯れも進んだ草木、後景にその隙間から屋敷がのぞいている風景が描かれています。
    下半分はそこだけを見ると何を描いてるのかわからないほど乱れたタッチですが、上半分の屋敷を描いた部分で対象を具象化して、下半分の乱れたタッチの集合を秋の草木として、(部分でなく)全体として、言い換えれば鑑賞者の頭の中で具象化する、という試みに感じました。いうまでもなくバランスが大切であり、この作品はギリギリを攻め、うまくいっている感じがして印象に残りました。印象主義に近い表現ではありますが、単に細かいタッチを整然と、かつ 全体的に並べていないところは決定的に違うところです。
    ベルギー王立美術館
    2018.11にベルギー、フランスを回ってきたので、海外美術館のコンテンツを少々足していきます。

    ベルギー王立美術館は、古典美術館、近代美術館、世紀末美術館、マグリット美術館の4つから構成される、首都ブリュッセルにある複合美術館です。
    このうち古典美術館と世紀末美術館を鑑賞してきました。

    公式HPの作品アーカイブが非常に充実しており、事前チェックや鑑賞後の再確認など有用と思います。

    ■古典美術館(oldmasters museum)



    日本でもブリューゲルのコレクションで知られていると思います。
    ブリューゲルのほか、ルーベンス、ブリューゲル、ヨルダーンスらフランドル絵画の秀作が鑑賞できます。またクラナハも代表作(「アダムとエヴァ」)があります。
    コレクションは15-19世紀までをそろえており、19世紀絵画ではベルギーの新古典主義画家、フランソワ=ジョセフ・ナヴェなどは目立っていました。
    ギャラリーは2階部分のみで、展示量は意外にも多くはなかったです。大作を除いてしまうと日本のコレクション展を何回か行ったのと変わらない感じは受けました。


    ■世紀末美術館
    世紀末美術館は、王立美術館建物の地下領域にあります。展示室を階下に進んでいく面白いつくりをしています。
    19世紀末ベルギー、フランスの世紀末美術(絵画、工芸)を扱う美術館で、
    象徴主義、アールヌーボー、ポスト印象派、新印象主義
    などベルギー象徴派に限定することなく幅広く展示し、コレクションの質、量ともに非常に充実しています。
    古典美術館のマスターピースをさっと見た後は、こちらに注力した方が良いと思います。

    王立美術館所蔵のベルギー象徴派画家作品は日本でも企画展がいくつかあり、懐かしく再会した作品もいくつかありました。
    常設で見られる画家メモを張り付けておきます。


    フェリシアン・ロップス
    アルフレッド・ステヴァンス
    イポリット・ブーランジェ
    コンスタンタン・ムニエ
    エルール・クラウス
    アンソール …さすがに充実
    クノップフ …パステルなどはここでしか見られないと思う
    シュトゥック
    テオ・ファン・レイセルベルヘ …充実。点描でない作品で、アラブの騎馬を描いた「Fantasia arabe」は非常に躍動感に満ちた作品
    バーン・ジョーンズ
    アンリ・ル・シダネル …方形の庭を描いた1点のみだが存在感のある作品。
    ジャン・デルヴィル
    レオン・フレデリック
    ファンタン=ラトゥール
    コロー、シスレー、ゴッホ、ゴーギャン
    ガレ、ドーム

    国立ロシア美術館所蔵 ロシア絵画の至宝展 富士美術館
    八王子の富士美術館には大昔1回行ったことがあったと思いますが、それ以来の訪問です。
    今回は、国立ロシア美術館のコレクション約40点が来日、ということで期待を込めていってきましたが、レーピン、シーシキン、アイヴァゾフスキーらの傑作ぞろいで非常に満足でした。
    今年はこれからBunkamuraでトレチャコフ美術館のコレクション展もありますし、近代ロシア絵画を展望できる良い機会です。
    毎度言及しますが、こういう国外の企画展は、現地の常設展示作品以外のものが多く出品されるため、非常に貴重です。ペテルブルクやモスクワにいっても見られるか分からない作品を東京で見られるわけです。
    ちなみに2007年開催の巡回展「国立ロシア美術館展」には行きそびれてしまい、今も後悔しています。

    今展も、(レーピンやアイヴァゾフスキーの現地常設展示されている主力級作品も来ていましたが、)おそらく記憶では常設で見なかった作品が主だったと思います。
    全体を見渡して、風景画の傑作が多かった印象です。
    今展のアイコンになっている、アイヴァゾフスキーは、ダイナミックかつ精緻に旧約の大洪水を描いた作品は絵から離れても近づいても魅せる作品ですし、もう一方の大作「(第九の)波濤」は、まずは色味の複雑さや奇麗さが目に入ってきますが、波の厚みや、光の透過感の表現が素晴らしく、超現実感のなかにリアリティを持たせています。
    その他、サヴラーソフ、シーシキン、クインジらも非常に完成度の高い風景画が来ていました。

    レーピンは、数こそ少ないですが、トルストイの肖像と、大作「サトコ」と代表作が来ていました。
    「サトコ」は反則級の作品で、当時の限定された制作環境でよくあれだけの画面構成をしたな、というため息しかない作品と感じます。資料やグラフィックソフトがすぐにでてくる時代ではないですからね。画面上からのパースペクティヴも絶妙で、まさにそこに場面が広がっているような臨場感を感じます。
    ロシアを代表する画家ばかりでしたが、クラムスコイがなかったのは少し残念でした。

    富士美術館の常設展示(コレクション展)も見てきましたが、ナティエ、サージェント、シダネル、モリゾあたりはよい作品があります
    没後50年 藤田嗣治展 東京都美術館
    藤田嗣治の没後50年を記念した大回顧展です。
    藤田の大規模回顧展に赴くのは2006年の国立近代美術館以来かと思いますが、今展も藤田の画業を総覧するにふさわしい内容でした。
    東京国立近代美術館を中心に藤田のコレクションは日本国内で充実していることもあり、これまでに見たことのある代表作も多かったですが、欧米の美術館からも初来日作品を含め集まっていました。また、「乳白色」以前のパリ渡航前後の初期作品も結構あったのでルーツを探るうえでは興味深かったです。
    個人的な関心としては、藤田の絵画技法、線描などテクニック面に注目していますが、繊細な線や塗り、技法のミクスチャー、装飾的な/平面的な構成など見るべき作品が多かったです。厚塗りや大ぶりなタッチなど、ごく油彩的な表現が隆盛を極めていた状況にあって、これだけ油彩的な印象を消して、線と塗りの独特な調和を醸し出しているというのはやはり革新的であり、藤田がその地位を占めるに至った大きな理由と思います。特に、日本画的な流麗な線は当時の欧米の油彩画家では引けなかったでしょうし、繊細な絵肌、塗りにしてもまた同様です。

    構成はオーソドックスに年代順となっており、「乳白色」裸婦以外では、
    1930年代セクションの「ラマと四人の人物」「狐を売る男」(1933)の非常に綿密な水彩画、
    戦後の20年セクションの「機械の時代」(1958-59)「すぐに戻ります」(1956)、「ビストロ」(1958)の画面・空間構成の練られた大作・秀作が気に入りました。
    また、動物の表現は獣臭さ、感情、動きなどの点で絵画的な要素も含め非常に完成度が高く、澄ました、動きの少ない裸婦などよりも個人的には好きです。
    晩年は宗教画代も多くなりますが、個人的には「争闘」「ラ・フォンテーヌ讃」などの方がが心地よく面白く見られて好みです。