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芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • 国立ロシア美術館所蔵 ロシア絵画の至宝展 富士美術館
    八王子の富士美術館には大昔1回行ったことがあったと思いますが、それ以来の訪問です。
    今回は、国立ロシア美術館のコレクション約40点が来日、ということで期待を込めていってきましたが、レーピン、シシーキン、アイヴァゾフスキーらの傑作ぞろいで非常に満足でした。
    今年はこれからBunkamuraでトレチャコフ美術館のコレクション展もありますし、近代ロシア絵画を展望できる良い機会です。
    毎度言及しますが、こういう国外の企画展は、現地の常設展示作品以外のものが多く出品されるため、非常に貴重です。ペテルブルクやモスクワにいっても見られるか分からない作品を東京で見られるわけです。
    ちなみに2007年開催の巡回展「国立ロシア美術館展」には行きそびれてしまい、今も後悔しています。

    今展も、(レーピンやアイヴァゾフスキーの現地常設展示されている主力級作品も来ていましたが、)おそらく記憶では常設で見なかった作品が主だったと思います。
    全体を見渡して、風景画の傑作が多かった印象です。
    今展のアイコンになっている、アイヴァゾフスキーは、ダイナミックかつ精緻に旧約の大洪水を描いた作品は絵から離れても近づいても魅せる作品ですし、もう一方の大作「(第九の)波濤」は、まずは色味の複雑さや奇麗さが目に入ってきますが、波の厚みや、光の透過感の表現が素晴らしく、超現実感のなかにリアリティを持たせています。
    その他、サヴラーソフ、シシーキン、クインジらも非常に完成度の高い風景画が来ていました。

    レーピンは、数こそ少ないですが、トルストイの肖像と、大作「サトコ」と代表作が来ていました。
    「サトコ」は反則級の作品で、当時の限定された制作環境でよくあれだけの画面構成をしたな、というため息しかない作品と感じます。資料やグラフィックソフトがすぐにでてくる時代ではないですからね。画面上からのパースペクティヴも絶妙で、まさにそこに場面が広がっているような臨場感を感じます。
    ロシアを代表する画家ばかりでしたが、クラムスコイがなかったのは少し残念でした。

    富士美術館の常設展示(コレクション展)も見てきましたが、ナティエ、サージェント、シダネル、モリゾあたりはよい作品があります
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    没後50年 藤田嗣治展 東京都美術館
    藤田嗣治の没後50年を記念した大回顧展です。
    藤田の大規模回顧展に赴くのは2006年の国立近代美術館以来かと思いますが、今展も藤田の画業を総覧するにふさわしい内容でした。
    東京国立近代美術館を中心に藤田のコレクションは日本国内で充実していることもあり、これまでに見たことのある代表作も多かったですが、欧米の美術館からも初来日作品を含め集まっていました。また、「乳白色」以前のパリ渡航前後の初期作品も結構あったのでルーツを探るうえでは興味深かったです。
    個人的な関心としては、藤田の絵画技法、線描などテクニック面に注目していますが、繊細な線や塗り、技法のミクスチャー、装飾的な/平面的な構成など見るべき作品が多かったです。厚塗りや大ぶりなタッチなど、ごく油彩的な表現が隆盛を極めていた状況にあって、これだけ油彩的な印象を消して、線と塗りの独特な調和を醸し出しているというのはやはり革新的であり、藤田がその地位を占めるに至った大きな理由と思います。特に、日本画的な流麗な線は当時の欧米の油彩画家では引けなかったでしょうし、繊細な絵肌、塗りにしてもまた同様です。

    構成はオーソドックスに年代順となっており、「乳白色」裸婦以外では、
    1930年代セクションの「ラマと四人の人物」「狐を売る男」(1933)の非常に綿密な水彩画、
    戦後の20年セクションの「機械の時代」(1958-59)「すぐに戻ります」(1956)、「ビストロ」(1958)の画面・空間構成の練られた大作・秀作が気に入りました。
    また、動物の表現は獣臭さ、感情、動きなどの点で絵画的な要素も含め非常に完成度が高く、澄ました、動きの少ない裸婦などよりも個人的には好きです。
    晩年は宗教画代も多くなりますが、個人的には「争闘」「ラ・フォンテーヌ讃」などの方がが心地よく面白く見られて好みです。
    モネ それからの100年 横浜美術館


    印象派の生みの親クロード・モネとその後の100年の中の画壇に息づくモネの影響の軌跡をテーマとした企画展。
    モネの睡蓮自体が対象や光のニュアンスなどの「印象」をとらえたもので、それに連なる絵画も感覚的なものが多いのは必定であり、全体的には専門的知識もいらない、美術鑑賞入門、基礎美術教育などにはうってつけの内容ではなかったかと思います。

    インスパイアされた画家の作品も、モネの睡蓮のモチーフの再解釈や引用、空間構成や色彩のオマージュ、対照などいろいろなバリエーションが集められていました。
    ゲルハルト・リヒターや松本陽子などは色彩やタッチなどの親和性の観点でモネと同じ空間に展示するのはあっているなと思いました。

    印象派、特にモネだからこそこのように後の100年間の画壇に影響を与え、受容される要素、素地があったんだなと再認識できる企画展です。
    ルーブル美術館展 肖像芸術―人は人をどう表現してきたか 国立新美術館
    「肖像芸術」をテーマとしたルーブルのコレクション展です。
    ルーヴル美術館の全8部門が協力、とのことでコレクションやテーマの幅広さを示す内容となっていました。
    夏休み効果もあってか、8月中旬平日午後で入場待ちがありました。

    体感的には3/5が彫刻作品、2/5が絵画、1/5がその他といった構成でした。
    肖像、というと肖像画をイメージしますが、そういう観点では意外にも彫刻が多かったです。

    絵画では、ゴヤ、ヴィジェ・ルブラン、ジャン=グロ、アングルらの作品は良いと思いました。

    ゴヤの「ルイス・マリア・デ・シストゥエの肖像」は、細やかに愛らしく描かれた作品ですが、タッチや構成などからは、厳かな王侯貴族の肖像画という面とは異なった、近代性を帯びたある種私的な印象を受けます。

    ヴィジェ・ルブランの帝政ロシアの伯爵夫人を描いた肖像は、細密に描かれた非常に完成度の高い肖像画で、人物の表現や質感表現に目を見張る作品です。背景が単一の黒で塗られていて、モデルとの対比による緊張感、クッションや衣服の赤/青の色の対比の強調等の効果を生んでいると思います。

    アングルの「オルレアン公フェルディナン=フィリップ・ド・ブルボン=オルレアンの肖像」は、腰に当てた手など人物デッサンを意図的に崩しているのか、人物の存在感を誇大化しているような趣もします。完成度はやはりアングルであり、塗の綺麗さや陰影表現を見ても高いです。
    ルドン−秘密の花園 三菱一号館美術館
    ※2018.2-5

    オディロン・ルドンの回顧展です。
    ルドン展としては、
    2013年「オディロン・ルドン 夢の起源」(損保ジャパン美)
    2012年「ルドンとその周辺-夢見る世紀末」(三菱一号館美)
    あたりから約5年ぶりの企画展となります。
    上記2展は岐阜県美術館のコレクションが大きな要素でしたが、本展は「ドムシー男爵の食堂装飾」のパネル作品群を中心にオルセーのコレクションが核になっています。

    三菱一号館美術館のコレクションのハイライトとなる「グラン・ブーケ」は、「ドムシー男爵の食堂装飾」を構成する一枚で、モチーフ、色彩もありますが、他に作例をみない大パステル画であることから、一際存在感を放つ作品です。
    「グラン・ブーケ」の入手とパリ(グラン・パレ)でのお披露目の経緯もあり、オルセーの「ドムシー男爵の食堂装飾」とともに「グラン・ブーケ」を展示する本展は三菱一号館美術館の開館からの宿願であったでしょう。展示室の関係もあり、食堂装飾の完全再現はなかなか難しかったと思いますが、当時の展示状況が分かるよう工夫されて展示/構成されていました。
    オルセーの「ドムシー男爵の食堂装飾」については、今回初めて日本で公開されたものかと思いきや、過去日本で公開されていたという事実に驚きました。1980年の期間で開催された「ルドン展」(伊勢丹美術館ほか6会場巡回)で、展示状況は分かりませんが(「グラン・ブーケ」をのぞく)「ドムシー男爵の食堂装飾」が出品されていたようです。
    しかし、「グラン・ブーケ」も含め16点をそろえ、展示構成も練られた本展はやはり過去のルドン展とは一線を画すものがあり、資料としての図録も含め大変貴重と思います(1980年の展覧会図録を見ましたが、掲載されていない作品もあり、解説も詳しくはなく出品目録の要素が強い感じを受けました)。

    さらに、食堂装飾パネル以外の出品作品も非常にクオリティが高く、力の入りようが伝わってきました。最終章の「装飾プロジェクト」などは私も初めてそのようなコラボレーション作品などがあることを知りました。

    本展は、黒のルドン(版画)、色彩のルドン(パステル、油彩)というこれまでの切り口では漏れていたルドン像を提示するものであって、より広がりのあるルドンの世界を印象づける契機になったと思います。