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芸術、書籍、音楽などのレヴュー。あるいは随筆。 - Revue de l'art, le livre, la musique etc, ou essai.
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  • コートールド美術館 魅惑の印象派 東京都美術館
    ロンドン、コートールド美術館の印象派、ポスト印象派のコレクションを紹介する企画展。
    美術館改修のための長期休館に伴って、日本での巡回展が実現されました。

    現地常設は、ルネサンス~現代絵画を広く扱っており、かつ展示スペースもさほど広くないため、現地では常設されていないコレクションも多数見られたのかと思います。
    もちろん、休館により普段なら決して貸出しはないような、美術館を代表する珠玉の作品も来ており、現地美術館を印象派目的で訪問する以上のクオリティになっていたようにも感じました。

    ルノワール、セザンヌ、ゴーガンあたりは作品がそろっていました。
    ルノワールの初期作品「桟敷席」(1874)は黒と白の強いコントラストで作品が締まっています。黒の純度はかなり高い(これを見た後に同じく黒い衣装を描いている、マネ「フォリー=ベルジュールのバー」をかなりくすんで見えるはず)のですが、衣装部など、黒く塗りつぶされているように見えても、微妙なタッチの変化をつけていて、衣装の質感がリアルに表現されています。

    展示資料にあった通り1910年あたりにはポスト印象派という語が登場し(範囲は現代的意味よりも広め)外国への紹介などが進んでいたとのことで、この時期には直近でコレクション展のあったウィリアム・バレルなどの収集家はすでに活動しています。サミュエル・コートールドが集中的に収集したのが1920年代(1932開館)なので比較的早い時期から全世代の印象派や同時代画家の作品を収集しており、これだけ良質のコレクションを築けたわけです。昨年ビュールレ・コレクション展もありましたが、19c末~20c初めの収集家同士の比較や(もしあれば)関係なども紐づけた展示も見てみたくなります。
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    みんなのミュシャ Bunkamura
    日本でも数年おきに回顧展が開かれ、盛況となるミュシャ展。
    今回は、ポスター作品を中心に、その後のミュシャ様式の受容、展開を含めて、ミュシャを包括的に扱う企画展です。東京展以降1年をかけて巡回するようです。

    プラハのミュシャ財団監修で、出展作品もほとんど同財団からのものだったと記憶しています。直近では森美術館で2013年に開催されたミュシャ展が、ミュシャ財団のコレクション展でした。
    財団がミュシャのポスター作品を多数所蔵していることは知っていたのですが、これほどまでにフォロワーの作品も所蔵していたのは知りませんでした(もちろん現地常設にはなかったです)。

    ミュシャの代表的なポスター作品はかなりカバーされており、『装飾資料集』などの習作デッサンなども展示されていました。
    明示的にミュシャの多用したデザインを説明し、その後のフォロワーによる展開を見せていたので、とても分かりやすかったですし親しみやすい企画展だと感じました。
    多くの方が、ミュシャっぽい、を感覚的に理解はしていますが、技法的かつ通時的に整理して捉えていることはほぼないと思います。
    日本の漫画家のイラストレーションも多く展示されていました。Illustrator、Photoshopなどデジタルに頼らない時代のインク、ポスターカラー等による作品と思いますが、時代感が出ていて味わいありました。現代のソフトありき世代にはこの時期の漫画家、イラストレーターの繊細な色遣い・技法は失われているのでしょうか。

    また最近増えてきた写真撮影可能コーナーですが、今回もセクション限定でありました。
    しかし、前回「バレル・コレクション展」でも実際に見たのですが迷惑的な撮影をしている方もいて、そのような行為がアンケートや監視員に目についたのか、今回は離れた規制線から後ろで展示風景を撮影する、というレギュレーションに変わっていました。これは評価したいと思います。
    ウィーン・モダン 国立新美術館
    オーストリアとの外交樹立150周年を記念しての企画展です。
    都美術館のクリムト展は想像を超える入場待ちのため鑑賞を放棄しましたが、こちらはなんとか鑑賞することができました。

    タイトルの通り、ウィーンの近代化に焦点をあて、19世紀のリンクシュトラーセの構築やビーダーマイヤー時代から、分離派、20世紀のモダンアートまでを中心に扱っています。
    絵画、工芸、歴史資料など展示品は多岐に渡り、展示量も多かったです。私は2時間半ほど時間を取っていましたが足りず、最後のシーレあたりはほとんどスルーしました。
    展示品はウィーン・ミュージアムのコレクションから構成されており、6年ほど前になりますが現地で見た作品との再会もあり懐かしい気分にもなりました。

    ビーダーマイヤーは、ウィーン・ミュージアムではヴァルトミュラーのコレクションが充実していますが、今展でもそれが反映されていました。
    フリードリヒ・フォン・アメリングは現地でも常設されている代表作「3つの最も美しいもの」と、妻を描いた肖像の2点来ていました。

    個人的に驚いたのが、ハンス・マカルトを章立てして紹介していたことです。
    マカルトは日本ではほとんど無名(?)かもしれませんが、ウィーンでは(再)評価されている19世紀を代表する画家で、クリムト、ミュシャらにも影響を与えたことでも知られています。とはいえ、日本で取り上げられているのを未だ確認したことがなかったので、作品をまとまって展示し業績・位置づけを示していたことは意義があると思いました。
    もちろん絵画技量についても文句のつけようなく、私のウィーン訪問時、ほとんど予備知識がありませんでしたが一番目に焼き付いたのが彼の絵です。現代の尺度で見ても十分に魅せるものがあります。分離派や象徴派などの核が確かに読み取れる稀代の画家と思います。早逝しなかったらどうなっていたのかとも考えさせられます。

    分離派セクションでは、クリムトが充実していたことに加え、分離派展ポスターのコレクション一大展示が圧巻でした。同じ分離派展のポスターですが、デザイン、タイポグラフィのバリエーションがあり、どれも作品として魅せるものになっています。
    版画作品については、「ウィーン工房のグラフィック」での展示も充実しており、分離派、ウィーン工房のメンバーのデザインの素晴らしさを堪能できました。やはり、ポスター、ハガキなどの印刷デザイン、媒体の発展は都市のモダニティと関連が深いので外せないテーマです。
    バレル・コレクション Bunkamura
    海運業で財を成したウィリアム・バレルが収集した印象派コレクションを紹介する企画展です。
    基本的に英国国外には出さないとのことですが、2015~2020年までの改修による閉館期間により国外での展示が可能になったとのことです。それなので、展示80点のうちほとんどの作品が本邦初公開らしいです。
    福岡、愛媛、東京、静岡、広島と5会場・期間1年を超える巡回展になっています。

    フランス印象派がメインですが、前後の19世紀ヨーロッパ画家がコレクションされており、地元スコットランド画家も多かったです。
    花卉画に秀作が多かった印象で、クールベ、マネ、ファンタン=ラトゥール、サミュエル・ペプローらの作品はそれぞれの特徴がうまく出ており良かったです。特にペプローの「バラ」は漆黒の背景に鮮やかなバラが巧みなタッチで浮かび上がっているようで格好よく、かつ美しい。
    アンリ・ル・シダネルは「雪」「月明かりの入り江」の2点があり、ル・シダネルの微妙な光、トーンづかいが楽しめる作品です。彼の作品の色調・諧調表現は印刷では難しく、国内出品もあまりないので直で見るべきですね。

    最近の展覧会は集客(SNS拡散)を意識してか、写真撮影可能が多くなりましたが、明らかに人の鑑賞を邪魔している人もいて、これを続けるのであれば、マナーや運営の向上に期待したいです。
    ラファエル前派の軌跡 三菱一号館美術館
    ラファエル前派の理論的支柱にもなりその活動に多大な影響を及ぼした美術評論家ジョン・ラスキンの生誕200年を記念しての企画展となっています。
    もちろん、ミレイ、ロセッティらラファエル前派の画家の作品を見渡すことのできる展覧会ですが、ラスキン、ターナーの風景画が導入部にて据えられており、その端緒や文脈が示唆される構成になっています。また、ラファエル前派以降の展開もバーン=ジョーンズ、モリスを中心に充実したものとなっており、「軌跡」展と呼ぶにふさわしい内容となっていました。
    東京展以降は、久留米、大阪を巡回します。

    ラファエル前派では、ロセッティの作品が「ウェヌス・ウェルティコルディア」以下、とりわけ秀作ぞろいとなっていました。
    ラファエル前派のフォロワーとしては、個人的に注目しているアーサー・ヒューズの作品がいくつかあって良かったです。彼の作品は抒情的で憂い、もの悲しさを感じさせる女性が印象に残りますが、「音楽会」とそのヴァリエーションである「マドレーヌ」もまさにこれに合致します。「音楽会」はルイス・キャロルが高く評価したそうで、キャロルはこの時代の画壇にも結構出入りしていたのですね(まずラスキンとも交友がありますし)。
    ラファエル前派周辺のセクションで、ウィリアム・ダイスの「初めて彩色を試みるティツィアーノ」という作品がありましたが、非常に精緻、技巧的であると感じました。ダイスは年代でいうと、ラファエル前派世代よりもだいぶ上(PRB結成時でダイスは40代)ですが、その影響を受けたようです(明確な画風の転換があったのでしょうか)。テイト・ブリテンで見た作品においてもミレイにも比肩する筆致を注目していたのですが、自然科学的正確さを持った表現力ではトップレベルです。
    バーン=ジョーンズは1セクション割かれており、油彩、水彩、デッサン、版画、タペストリーと多様なメディアでもって展示されていました。モリスとのコラボレーションも含めその後のアーツアンドクラフツ運動への展開までが示され「軌跡」が締めくくられています。